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【極めて少ない】魔力総量しかない僕は、実質的に魔法士となる夢を諦めるしかなかった。
と、周囲には思われていた。
転生前の世界には魔法なんてものは存在しなかった。
そのため、魔法を使うなんてことは絶対に確実に不可能であった。
しかし、今世の世界には魔法が存在し、たとえ【極めて少ない】魔力総量しかなかったとしても、少しは魔力を持っていることが証明されたのだ。
僕はポジティブにそう考えて、改めて父におねだりすることにした。
「おお、ゼルコバよ。先の鑑定結果は残念であったな。しかしお前はなかなか頭が良い。12歳になったら王都の貴族学院に入学するがよい」
「承知しました、父上。しっかりと勉学に励んで、入学試験に備えたいと思います」
「それでよい、勉強のためになることであればできる限り協力しよう」
僕は貴族学院に進学する気などさらさら無かったが、父から譲歩を引き出すために、あえて素直に言うことを聞くふりをした。
父、アスペラ・リョーマイケルは伯爵家当主にして55歳の中年男性である。
人間はだんだんと歳をとってくると、自分の指示を無視されたり反抗されることに対して怒りを覚えるようになるものである。
前世の記憶から、僕はそのあたりの処世術を駆使して、自らの望みを叶えようと考えていた。
「貴族学院の入学試験に向けて、父上にお願いがあります」
「ほう、聞かせなさい」
父はきらりと目を光らせて、僕に発言を促した。
僕は常々、子供らしからぬ態度や発言で周囲に混乱をもたらしてきた。
そんな僕が何を言い出すのか、父は警戒しているのだろう。
「はい。僕に魔法の才能がないことがはっきりと分かりましたので、商売の道を実地で勉強したいと考えております」
「ほう、商売の道とな?具体的にどうするつもりじゃ」
「はい、私は自ら商会を立ち上げ、物品などの取引を通じて、世の中の仕組みやお金がどのように動いていくのかを調査したいと考えております」
「ふむ、商会を立ち上げるとな?して、金がどのように動いていくのか調査したい、というのはどう言うことかな?」
よし、うまく食いついてくれた。
僕は心の中でガッツポーズをとった。
たぶん父は、僕がただ単に利益を上げるために商会を立ち上げたいと言ったら、反対していただろうと思う。
常に貴族として大局的な視点を持つように、それが父の口癖だった。
「はい、農作物やその他の物品は、毎月のように値上がりや値下がりを繰り返しております。この影響によって、利益を得るものと不利益を被るものが必ず存在するはずです。しかし、理屈でそうだと知っていることと、実際に利益や不利益を被ることによって実地で学べることは、天と地ほどの差があるでしょう。これを実地で学ぶ機会を与えていただけないでしょうか?」
「ふむ、わずか10歳とは思えないほど優れた発想だ。実地で商売について学びたいと言うゼルコバの意思を尊重して、機会を与えることとしよう」
「ありがとうございます!それではさらにもう一つお願いがあります。僕に投資をしていただけないでしょうか」
商会設立の許可を得た僕は、さらに一歩踏み込んで父から息子への投資を要求することにした。
これでうまく軍資金が獲得できれば、僕の企みはかなり前進することだろう。
「投資とな?もちろん意味はわかっているのだろうな?」
「はい。お金を成長させる目的で行う経済活動のことです。貯蓄と違って元本が減ってしまうリスクがありますが、物価上昇対策となります」
「そうか、そこまでわかっているのであれば言うことはない。ゼルコバに投資することとしよう」
「ありがとうございます!」
「ただし、投資金額は金貨30枚とし、2年後までに元本を返済すること、これが条件だ」
「承知しました。もしよければ契約書類を交わさせていただきたいと思います」
「うむ、それではイレックスを呼ぶとしよう」
投資や物価上昇などの言葉が10歳の僕の口から飛び出したことにアスペラは驚きの表情を浮かべていたが、無事に金貨30枚を調達する目処が立ったことに僕は安堵のため息をついた。




