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014

教会から逃げ出した僕たちは、リョーマイケル伯爵邸に戻って、東の修道院についての情報を集めることにした。

さっそく父アスペラに、先ほどの出来事を報告しに向かう。

父の書斎の部屋の前には、執事のラムズホーンが立っていた。


「ラムズホーン、父に報告したいことがあるんだけど、取り次いでくれないかな」

「はっ、アスペラ様はただいま急ぎを要する会議の最中ですので、しばらくお待ちいただけないでしょうか」

「えっと、急ぎを要するって、何か事件でも?」

「昨日、フジ山が噴火したのです」

「ええ?フジ山が噴火したって!?それは大変だ」

「そうです。アスペラ様は騎士団を派遣するかどうかの会議中です。ちなみにゼルコバ様のご用件はどういったものでしょうか?」


僕は先ほどの教会での出来事をラムズホーンに伝えた。

フォレスティナ様からの頼み事なので、こちらも急ぎの用件である。


「なんと、フォレスティナ様からそのような神託を受けられたとは。にわかには信じがたいですが、この地より東の修道院で世界樹があると言えば、モンテ・アジュガのことではないかと推察いたします。城塞都市リョーマより馬車で2日の距離にあるアジュガローマの町の近くにある修道院です。ただし、アジュガローマの町からモンテ・アジュガまでは徒歩で森の中を進む必要がありますので、注意が必要です」


馬車で1日に移動できる距離は40~50km程度だという。

だとすると、アジュガローマの町は東に80~100km程度の距離だ。

行くとしたら確実に泊まりがけになるから、父の許可を取る必要がある。


「旦那様、会議中失礼たします。ゼルコバ様よりお話があるとのことで、お通ししてもよろしいでしょうか」


ラムズホーンは書斎に入ると、父に取り次いでくれた。

しばらくすると入室許可がおりる。

部屋に入ると、リョーマイケル伯爵家騎士団の数名とアスペラが、会議をしているところであった。


「どうしたのだゼルコバよ。見ての通り今は急ぎの用件で会議中なのだが」

「お忙しいところ申し訳ありません。実は先ほど教会でフォレスティナ様から神託を受けまして……」


僕は教会での出来事をアスペラに報告した。


「邪悪な存在の可能性か、うーむ、これは関連があると言えるのだろうか。実は昨日、フジ山が噴火したのだが、その原因にレッドドラゴンの異常行動があるらしい」

「レッドドラゴンが異常行動を?それは一体……」

「デーツ、説明してやってくれ」

「はっ」


デーツと呼ばれた短髪のおじさんが立ち上がった。

筋肉質で、よく日焼けしている。身長は180cmを超え、僕ぐらいの子供だったら片手で持ち上げられることだろう。


「ゼルコバ様、私はリョーマイケル伯爵家騎士団団長を務めております、デーツと申します。以後お見知り置きを」

「よろしくお願いします」

「レッドドラゴンの異常行動についてですが、フジ山の麓にある観測所より、レッドドラゴンの夫婦が突然激しい戦闘を繰り広げたとの報告がありました。レッドドラゴンの夫婦が殺し合いになるほどの激しい戦闘をしたことはこれまでなく、しかもオス個体の全身は黒く変色していて、様子が明らかにおかしかったといいます。その後、オス個体がブレスを放ったところ火口に直撃し、フジ山の噴火に至ったという次第でございます」

「というわけでフジ山に騎士団を派遣するかどうか検討していたわけだが、ゼルコバの話によると我が領地でも異変が起こっている可能性があるというわけだな」

「はい、僕もそう思います。ぜひ僕にモンテ・アジュガの調査に向かわせてください」

「よし、許可しよう。デーツよ、10名の騎士を連れてゼルコバを補佐し、モンテ・アジュガまでの護衛と案内をしろ。だれを連れて行くかは好きに決めるが良い」

「はっ、お任せください」

「残りのものは出兵の準備をしつつ城塞都市リョーマの守りを固めることとする。ゼルコバとデーツ騎士団長の帰還を待ってから、出兵するかどうかの最終判断をくだす」

「「「「「はっ!」」」」」


今後の方針が具体的に決まったところで解散となり、アジュガローマへの出発は翌日の朝ということになった。


「坊主、まだ日没までには時間があるから魔法の訓練をするぞ」

「はいっ!よろしくお願いします」


僕とサイプレスは例の空き地に移動して、魔法の訓練をすることにした。


「さて、無事に第六位階【固有魔法】を習得することができたわけだが、なんか色々と厄介なことになりそうだから、他の位階についても今のうちに説明しておくぜ」

「はい!」


すると、サイプレスは手のひらから火を出し始めた。


「これは昨日習得した第一位階魔法【性質変化】だ。次に覚えるのは第二位階魔法【形状変化】だ。これはその名の通り、魔力の形状を変える魔法だ」


そう言うとサイプレスは手のひらから出した火を、ロープのように長くしたり、球体に変化させた。


「さらに、第三位階魔法【念動】によって、魔法を自由に動かすことができるようになる。ファイアーボールと呼ばれる火球球を飛ばす魔法は、もっとも有名だろう」


サイプレスは火球を複数個生み出し、体の周囲を周回させた。


「なれれば一度に何個か操ることができるようになるってわけだ。もちろん難易度は高くなるけどな。さて、まずは【形状変化】で火を球体にしろ、その後、念動で火球を動かせ。今日はこれを徹底的に反復練習するんだ」


「はいっ!」


【形状変化】で火球を作ることはそれほど難しくなかった。慣れれば球以外の形状にすることもでき、汎用性が高そうだ。

【念動】については扱いが難しく、サイプレスのように複数個の火球を同時に操作することがなかなかできない。

しかし、ジッペリアナ老人のように、直線的に飛んでいく火球を単発で飛ばしても、簡単に避けられてしまうことだろう。

であれば、極限まで速く火球を撃ち出すか、複数個の火球に複雑な動きをさせることになるが、これがなかなか難しい。


「サイプレスさんが同時に複数の火球を操っているのは、一体どのようにしているのですか?」

「はっはっはっ!コツがあるんだよ!今はとにかく練習あるのみ」


結局、サイプレスは日が暮れるまでコツを教えてくれなかった。

サイプレスは僕が苦戦しているのを見てにやにやしていた。

出し惜しみするなよ!




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