013
何はともあれ無事に第六位階に到達した僕は、翌日もサイプレスと一緒に修行を続けることにした。
「よし、坊主。今日は教会に行くぞ!」
「はいっ!って教会?一体何のためにですか?」
「坊主は昨日第六位階に間違いなく到達した。そうだよな?」
「はい、間違いありません。あの不思議な感覚が込み上げてくるのを数えていましたので、確かに第六位階になっているはずです」
「ならば話は簡単だ。教会に行って主神フォレスティナ様に祈りを捧げることで、第六位階【固有魔法】を授けてもらうことが出来る」
「第六位階魔法だけ特別なんですね!」
「ああそうだ。ちなみに第七位階に上がるためにはまた別の条件を満たす必要があるため、消費魔力足りていても俺は第七位階には到達できていない」
より上位の位階に上がるためには、魔力を消費するだけではダメなのか。
昨日の竜巻モードを使えばあっという間に第七位階になると思っていたけど、そううまくは行かないみたいだ。
教会に移動した僕たちは、入り口に立っている修道士に銅貨を渡して入場する。
第六位階魔法を授かるとなれば、1000リンほど寄付しても安いくらいだ。
最も、貴族の行事で教会を訪れるなら、金貨1枚は最低でも用意しなければならないだろう。
なぜなら貴族とは面子で生きてる生物だからだ。
僕がかつて教会を訪れたのは5歳の頃、当時の国王陛下が老衰で亡くなった時に、追悼の祈りを捧げるために家族全員で教会を訪れたことがある。
その当時は何のためのイベントなのかよくわかっていなかったが、神父が本を持ちながら説教していたのが印象的だった。
たぶんあれは魔導書だったと思う。
教会の奥に進むと、ステンドグラスを背景にして主神フォレスティナの像があった。
フォレスティナ像は木製で、深みのある濃紺色をしていた。
美しい女性として彫られたフォレスティナの表情は柔らかく、優しそうに微笑んでいる。
その両腕には木の枝を大事そうに抱え込んでおり、何らかの意味があるのだろうと思われる。
僕は両膝をついて祈りを捧げる。
「こんにちはフォレスティナ様、いつもお世話になっております。どうか僕に第六位階を授けてください。よろしくお願いします。かしこみかしこみ……」
『よくぞ第六位階に到達しました、異世界から渡りし者、勇者ゼルコバよ』
僕が祈りを捧げていると、頭の中に女性の声が響いた。
「(え?声が聞こえる!あなたはもしかしてフォレスティナ様ですか)」
『その通りです。さあ勇者よ、第六位階魔法を授けてあげましょう』
その瞬間、フォレスティナ木像の腕に抱かれた木の枝が宙に浮かび、先ほど手折ってきたかのように生き生きと色づいた。
宙に浮かんだ木の枝はそのまま僕の目の前に移動して、僕の頭に触れた瞬間、そのまま吸い込まれていった。
『あなたに授けたのは、勇者にふさわしい魔法、【樹木魔法】です。この世界のありとあらゆる樹木と意思疎通することができ、操作することができ、魔力を与えたり引き出したりすることができ、果実や木材の性能を限界まで引き出すことが出来るようになります』
【樹木魔法】
それが僕の第六位階魔法だ!
樹木に関することなら何でも出来るみたいだから、さっそく樹木を探しに行かなければならない。
「ありがとうございます、フォレスティナ様。いただいた【樹木魔法】を使って、より一層精進したいと思います」
『それでは勇者よ、一つお願いがあります。我が願いを聞き入れてくださいますか?』
「お任せください、僕に出来ることであれば最大限努力して、期待に応えてみせます!」
『力強い言葉をありがとう。それではこの地より東に古い修道院がありますので、そこに向かってください。修道院には世界樹が祀られていますが、樹勢が悪化しておりこのまま放置していると枯れてしまうかもしれません。あなたの【樹木魔法】を使って、世界樹の治療をしてもらえないでしょうか』
「もちろんです。世界樹がどんな樹木かわからないけど、必ずその木を回復させてみせます!」
『それでは、加えてこれをあなたに授けます』
フォレスティナがそういうと、木像の胸の辺りから緑色に光る小さな種が出てきて、僕の胸に入ってきた。
『それは私の神気を使って生み出した、聖なる種です。種はあなたの体の中で芽吹き、邪を祓う聖なる力を与えてくれることでしょう』
邪を祓う聖なる力をいただいてしまった僕は、若干困惑していた。
「(えっ、てことは邪悪な存在が今後、現れるかもしれないってこと……?)」
『邪悪な存在はすでにこの世界に潜んで、侵攻の準備を進めています。さぁ勇者よ、この世界を救う旅に出るのです』
そう言ってフォレスティナ様の声は遠ざかっていった。
「(単に魔法士になりたかっただけなのに、世界を救うことになってしまった……)」
考えても仕方ないし、【樹木魔法】を早く試してみたいので、気分を変えて前に進むことにしよう。
僕は祈りを終えて立ち上がると、教会にいた多くの人々が跪いていた。
僕はギョッとして、そばにいるサイプレスに問いかけた。
「えっ!?なに?なにごとですか?」
「坊主なぁ、フォレスティナ様の像がさっきまで抱えてた木の枝はどこにいったんだよ」
「えっと、僕の頭の中に吸い込まれていきましたよ?」
「おめでとう、勇者様の誕生だぜ」
「「「「「「「勇者様万歳!フォレスティナ様万歳!うわぁぁぁぁ!!」」」」」」」
教会にいたすべての人間から祝福される僕。
サイプレスはやれやれと言った感じで、顎髭をいじる。
「勇者様、今日の日を記念してどうか洗礼を受けていってください。さあ、この月桂樹の枝で作られた冠を頭に被って」
「あ、はい……」
何と神父様が登場して、流れで洗練を受けることになってしまった。
僕は再び跪いて月桂樹の冠を頭にのせる。
「汝に主神フォレスティナ様のご加護がありますように、汝はこの国の国民の希望の光となりますように、汝に世界樹の導きあれ!」
「「「「「世界樹の導きあれ!」」」」」
「さぁ、勇者様、フォレスティナ様から授かった使命を果たされに向かうのですよね!馬車の手配をさせていただきます!」
「あ、あ、あ、あの、自分で歩いて行くので大丈夫です……」
小一時間ほど信徒達にもみくちゃにされた僕は、使命に向かわなければならないからと強く主張してようやく解放されたのであった。
結局この後、金貨一枚分に相当する金額を寄付する羽目になったため、残金は残り金貨5枚分、500万リンだ。
とほほ。




