000
僕の名前はゼルコバ・リョーマイケル。リョーマイケル伯爵家の三男として、この世界に転生した。
実は僕には日本という国で生活していた記憶があり、転生前の僕は木に登って危険な枝の剪定や樹木の伐採を仕事としていた。
なぜ僕がこの世界に転生したのかはわからないが、幼少期から僕は1度目の人生の記憶を持ったまま成長してきた。
そのため、読み書きや計算などの覚えが他の子供に比べて圧倒的に早かったため、僕のことを神童だと呼ぶ者もいるようだ。
しかし大人になるにつれて、僕が特別賢いわけではないということが周囲にバレることになるだろうと思われる。
そのため、この世界を生きていくためには何らかの価値を自らに見出さなければならない。
僕の価値についてだが、はっきり言って僕は何らかの役割を期待されて育てられたわけではない。
リョーマイケル伯爵家の長男と次男は僕よりも10歳以上年上で、リョーマイケル伯爵家の跡取り候補として切磋琢磨するように育てられた。
一方、僕の場合には伯爵家の跡取りとしての役割は期待されていない。
というのもどうやら、僕は女の子として生まれてくることを期待されていたらしいのである。
僕が産まれた翌年に、1歳歳下の妹、キエノが誕生していることからも、女の子が切実に欲しかったのだろうことは推測できる。
噂によると、王太子の息子が僕と同い年であるらしいので、キエノは将来の結婚相手として期待されているのではないかと思う。
ということで、伯爵家の跡取りとして期待されているわけでもなく、政略結婚の駒として期待されているわけでもない僕は、リョーマイケル伯爵家でどのような役割を獲得する必要があるのか、悩んでいた。
そこで思いついたのが、高位の魔法士として活躍するというものであった。
この世界には魔法が存在する。
そのため僕は、転生当初から魔法を使いたいと常に考えていた。
魔法を使うには魔法学校に通うか、もしくは魔法士の弟子となって修行する必要がある。
そのため僕は父に頼み込んで、鑑定士を呼んでもらうこととした。
鑑定士は国から認められた魔法士のみ名乗ることができ、道具、素材、鉱物、薬物など、多くの物品の効果や効力を鑑定して証明書を発行する人物のことである。
鑑定士は人間の鑑定をすることも可能で、魔力総量を鑑定することによって、魔力の才能があるかどうかを鑑定することができる。
もしこれで僕が高い魔力を持っていることが判明すれば、魔法士としての勉強か修行をさせてもらえるように父と母に頼み込もうと考えている。
齢10歳にして独立を考える伯爵家三男、素晴らしく良い息子だと自分でも思う。
そしていよいよ待ちに待った鑑定の日がやってきた。
その日の僕は体調万全で、力がみなぎっていた。
なんでもできる、そんな気分で鑑定結果を待つことにした。
僕の隣には、妹のキエノもいた。
わざわざ鑑定士を呼ぶついでに、妹もあわせて鑑定してもらうことになったのだ。
「お兄様、そんなに慌てずとも鑑定結果は変わりませんよ」
「わかっているよ、キエノ。だけど、僕にとっては一生を左右する一大事なんだ」
落ち着きのない僕を、妹のキエノがたしなめる。
「それに、お兄様は魔法なんか使えなくても……」
「ん?何か言ったかい?」
キエノの言葉はうまく聞き取れなかったが、鑑定結果が出たとのことなので、期待を膨らませて結果を聞きにいくことにする。
「それではお二人の鑑定結果を発表します」
鑑定士は、よぼよぼのお爺さん魔法士であった。
枯草色のローブはくたびれていて、本人もかすかに震えているようであった。
鑑定士は、最前線で戦う魔法士と違って体力がなくても仕事ができるため、現役を退いた魔法士がなることが多いという。
もしかしたらこのお爺さんも、かつてはぶいぶい言わせていたのかもしれない。
そう思うと、不思議と尊敬できる人物のように思えてきた。
「ゼルコバ・リョーマイケル殿、貴殿の魔力総量は【極めて少ない】と出ましたのじゃ。最低レベルの魔力総量しかないですのじゃ。魔法士以外の職業に就くことをおすすめしますぞ。ふぉっふぉっふぉ」
その言葉を聞いた瞬間、僕は膝から崩れ落ちた。
「ちなみにキエノ嬢の魔力総量は【極めて多い】とでましたのじゃ。魔法士となるか、高い魔力総量を活かせる道に進まれることをおすすめしますぞ」
妹にまで負けてしまい、最低レベル魔力総量しかない落ちこぼれ三男の僕は、地に伏して絶望したのだった。




