『清涼殿で速記競技会を行うこと』
一条院の御代、清涼殿において速記競技会が行われた日、讃岐守高雅朝臣が、主たる速記者を担当することになった。道長公が、どこから集めていらっしゃったのか、財力にあかせて大量のプレスマンを用意され、さあ皆さんもプレスマンを手に取って基本線を書きましょう、とお勧めになったので、帝もプレスマンを手にされ、何やらお書きになっていた。それを見申し上げた高雅朝臣は、誰にも聞こえないくらいの小さな声で、もちろん、帝が速記をなさっているところが見えないように、あちらの戸は閉めてあるのでしょうね、とつぶやいたが、誰にも聞こえなかったので、誰も返事をしなかった。
教訓:速記をしているところを見られてはいけないのではなく、帝がお書きになった速記文字に誤りがあったりしたところを見られてはいけないのである。