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第75話 オークション

魔王城は相も変わらず不気味な印象のままだった。

私は玉座に座り、魔王の間を見渡す。


「ここも改築しないとですね」


「師匠は何で玉座にそんな平然と座れるんですか?」


「星空が見たいので天井は全撤去で、風通しも良くしたいので壁もいらないですね。もう、めんどくさいので土台も壊しましょうか」


「それ、改築ではなく破壊ですよ」


「そんなことより、勇者一行はここを去ったという報告を受けていたのですが、何で勇者さんいるんですかね?」


私は勇者さんに視線を向ける。

勇者以外は帰ったようだ。


「居てはマズい事でもあるのか?」


「当然ありますよ。あなたの宿泊費は誰が払うんですか?」


「問題はそこですか? 見られたらマズいことだらけじゃないですか」


イラリアが指摘する。


「ジーナがやり過ぎないように監視するためにここにいる」


「それだったら、怠慢もいいとこですね。すでに手遅れです」


「イラリア、少し静かにしてください。いいですか、勇者さん? あなたの宿泊費を星教会に請求したら、拒否されました。これがどういうことか分かりますね?」


「いや、分からないが……」


「勇者さんの熱狂的なファンに私や信者が収集した勇者さんグッズをオークションにかけて宿泊費に回すしかないってことです」


「勇者グッズって、星教会が売っているやつですか?」


「イラリアはバカなんですか? そんなものはオークションにかけても売れません。例えば、戦闘後の汗が染みついたシャツや、勇者さんの血が染みついた土、あとは勇者さんの毛髪ですね」


「おい! やめてくれ! 金は何とか工面する!」


勇者さんが叫ぶ。


「ルカさん、物が無くなっていたのに気づかなかったんですか?」


「いや、そのうち見つかるだろうと思って」


「今のかなりドン引きなんですけど、汗だくのシャツを見つかるまで放置とか無いわ~」


「イラリア? 話を脱線させないでください」


「師匠にだけは言われたくないです」


「金は何とか工面する? 星教会に支援されないと活動できない金欠勇者が何ほざいてるんですか? 冗談はその弱さだけにしてください! それに、すでに契約して、発送してしまいました」


「何してるんですか、師匠?」


「それは回収方法についての指摘ですか? それなら、問題ありません。汚いのでシャツはトングを使って回収しました。また、一連の回収業務が終了したら、30分間の消毒を行っているので、私の被害は勇者さんの所有物を触らないといけない精神的苦痛のみです」


「ツッコミどころが満載で追いつかないんですけど。まず、私は師匠の事を心配して言ったわけじゃありません。精神的苦痛? 知らんがな。そう言えば、気になったんですけど、ルカさんの毛髪なんて何に使うんですか?」


「シャツや土は小金持ちのマダムが競り落としていましたけど、毛髪の方は白衣を着た研究者が競り落としていました」


「マダムは良いとして……」


「いや、全然よくないのだが!」


勇者さんが再び喚く。


「ルカさん、話の腰を折らないでください」


「イラリアにジーナの性格がうつってないか?」


「研究者が毛髪って、なんか嫌な予感がしますね」


「私も気になって調査していたのですが、どうやら、最新の生命工学で、勇者さんの能力を持つホムンクルスを作るつもりらしいですよ」


「それ、マズくないですか?」


「そうでしょうか? 勇者スキルの無い勇者さんなんてS値が0の聖戦士みたいなものですよ?」


「その例え合ってますか? でも、言われてみればそうですね」


「イラリア! 少しは反論してくれ!」


「勇者さん、うるさいですね。あなたのその中途半端な強さが自分が努力したから、とか言っちゃうつもりですか? だとしたら、私はあなたの心を折らないといけません」


「それはおかしいと思いますよ、師匠? 別に心は折らなくていいじゃないですか」


勇者さんが再び話に割り込んできた。


「イラリア、違う。否定してほしい部分はそこじゃない。ジーナがどう思っているかは知らないが……」


「私は勇者さんのことをどう思っているかって? クソ雑魚と思っています」


「……俺は勇者スキルを貰ってから血の滲むような努力をした。そこに嘘はない」


「例えば?」


「例えば? ……オークの巣を一人で殲滅させるとかか?」


「その程度で血の滲むとか言ってるんですか?」


「いや、十分だと思いますよ、師匠?」


「血の滲む訓練というのは、スタンピードで生き残ることや魔王軍の総攻撃を跳ね返すことを言うんです。それに私は結果しか見ないので、過程とかどうでもいいタイプです」


「師匠の基準がぶっ壊れすぎです。両方とも訓練じゃなくて実戦ですよね?」


「あ、勇者さんのせいで、もう時間じゃないですか。粘着クリー……じゃなくて、ルーテリアさんのいらっしゃる場所へ移動しないといけませんね。あと、勇者さんはここで大人しくしていてください。余計なことをしたら、勇者さんの下着をオークションに出品しますからね」


「師匠、そんなものまで窃盗したんですか?」


「違いますよ。聖女さんの部屋に落ちていたので、それを拾っただけです」


「師匠は周りの人間の好感度も下げていくタイプなんですね」


「え? 今、誰かの好感度が下がったんですか?」

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