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第70話 体で覚える斥候技術

イノシシ族を攻撃するにあたって、斥候を放っているが、情報が集まらない。

今までが成功しすぎていたとってしまえば、それまでだが、斥候の質が低下しているのかもしれない。

これは教育が必要だ。


「何で、行軍経路の選定にすら、これほどまでの時間がかかるんですか? まだ、本番が残っているんですよ?」


「申し訳ありません。教祖様」


部隊長らしき男が平謝りしている。


「別に謝罪が聞きたいわけじゃないんですよ? 何でこうなっているのか聞きたいんです」


「師匠、そろそろ返してあげてもいいんじゃないですか?」


「何でですか?」


「5時間も説教したら十分じゃないですか? 味方の士気を下げてどうするんですか?」


「でも、部隊長クラスはエリートですから精神的苦痛を快感に変換できますよ?」


部隊長の息が上がっている。


「ここには変態しかいないんですか?」


部隊長の心拍数が上昇する。


「流石ですね。追い打ちの掛け方が素晴らしいです」


「帰っていいですか?」


「仕方ないですね。ご褒美はここまでです。働いてください」


「ありがとうございました」


部隊長は部屋から出て行った。


「あの人、何しに来たんですか?」


「ご褒美を貰いに?」


「違うと思いますよ。少なくとも、最初の目的は違うと思います」


「イノシシ族、厄介ですね。斥候の生還率が宇宙人に誘拐される確率と同じぐらいになってしまいました」


「それはほとんど帰ってきてないってことでいいんですか?」


「その様にしか理解できないと思いますけど?」


「何で私の問題かのように言うんですか? 今のは完全に師匠の問題ですよ。でも、何でそんなに生還率が低いんですか?」


「イノシシ族の習性をご存じないのですか? 彼らは夜行性と昼行性の両方がいて、警戒心が強いです。怪しい物には何でも突進するので、彼らが生息する場所は穴だらけになります。余談ですが、彼らの家も突進の対象となるので、彼らの家はまだらな壁として、一部の愛好家から評価されています」


「それ、突進しすぎて家が穴だらけになってるってことですよね?」


「そうとも言います」


「師匠と出会ってから、変な生き物とばかりであってるんですけど」


「変ですか? 個性はありますが、だいたいは普通だと思いますよ?」


「それは個性の範疇ではないと思います」


「話は戻しますが、が情報を持ってこれないなんて、何を考えているんでしょうか? 皆さん隠密スキルをもっと使いこなしてほしいものですね」


「師匠を基準に話さないでください」


「偵察隊を作って、私が直々に鍛えてあげましょうかね」


「何をさせるつもりですか?」


「隠密スキルを起動させてトレントの群生地に突入します。隠密に失敗すると……、分かりますよね?」


「かわいそうなので止めてあげてください」


「でも、これ以上の待機時間がかかると私の時給的に厳しいものがあります」


「師匠は一番上に立つ人間なんですから、時給を払う側ですよ?」


「え? 貰えないんですか?」


「逆に誰からもらうつもりだったんですか?」


「教団の金庫からでもいいですし、魔王城の金庫からでもいいですよ」


「横領ですか?」


「問題ありません。いくつかのペーパーカンパニーを経由して、私の懐に入るようにしています」


「私は隠蔽工作の問題を指摘したわけじゃなくて、横領自体をやめるように言ったんですよ」


「架空の請求書の用意も万全です」


「犯罪のすべてを実行しようとしていますか?」




1週間ほど経ち、ようやく道の安全性が確保できて、行軍できるようになった。

イノシシ族の里へたどり着くには森を抜けないといけない。

しかし、森は彼らにとって親しみ深いものであるが、私たち人間にとっては厄介なものでしかない。

そんな場所で奇襲をされては堪ったものじゃない。


「馬車を通す道が用意できたのは幸いでしたね。これで徒歩だったら、あの部隊長を半殺しにしてました」


「好感度捨てました? 道を用意したから、こんなに時間がかかったんじゃないですか?」


「私が楽するためならば、仕方ありません。なんだか外が騒がしいですね。酔っ払いでも出ましたか?」


「森のど真ん中に酔っ払いが出たら驚きですね」


馬車の扉がノックされる。

私は窓を開け、兵士に話しかける。


「どうかしましたか?」


「教祖様! 奇襲です」


「イノシシ族ですか。顔も見たくないので、私の視界に入る前に始末してください」


「生け捕りになさいますか?」


「どちらでも構いません。末路は同じですからね」


私は窓を閉める。


「森で酔っ払いが突進する話でしたね」


「酔っ払いとイノシシ族の奇襲を混ぜないでください」




私たちは何とか森を抜け、イノシシ族の里の前に布陣した。


「3回目の奇襲はさすがに危なかったですね。でも、あの短時間で3回も奇襲されたのは初めてです。貴重な体験をありがとうございました」


私は背後でミノムシのようになっている男に話しかける。


「さっきから気になってたんですけど、それ何ですか?」


「斥候の取りまとめを行っている部隊長さんです」


「紐に血が滲んでいるんですけど」


「教育していたらこうなりました」


「ずいぶんバイオレンスな教育ですね」


「体で覚える勉強って効果的だと思いませんか?」


「通報していいですか?」


「夜道を歩くときは背後をよく警戒してくださいね」


「やめてください」


「まあ、茶番はここまでとして……」


「脅迫を茶番でするのやめてもらえませんか?」


「何言ってるんですか? あれは本気ですよ?」


「じゃあ、どの点が茶番だったんですか?」


「部隊長の件?」


「体罰は茶番じゃ済みませんよ」


「でも、聖戦士ですし」


「言わんとすることは分かります。でも、理解したくありません」


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