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第62話 失地回復

ルーテリアさんは獣人族が独立したこと。

魔王討伐の事実を知り、テプサがルグドと休戦し、勇者を討伐するため共闘することを決めたことを告げた。

扉がノックされる。


「どうぞ」


魔人が入ってきた。


「お話のところ失礼いたします。ドワーフが独立を宣言しました」


「失地を回復しないといけませんね」


「他人の土地は失地って言いませんよ、師匠?」


「何を言ってるんですか? 私は魔王の土地を受け継ぎました。その結果、魔王の旧領はすべて私の物です。まあ、この世にある物はすべて私の物なんですけどね」


「いろいろな人に怒られそうな話ですね」


「失地回復のためにできることは?」


私はルーテリアさんを指さす。


「敵を滅ぼす」


「ケメルさん、反乱を起こしそうな勢力は?」


「聞いておいてこの扱い……良い」


「あんなおバカ丸出しな回答では常人でもそうなりますよ?」


イラリアはルーテリアさんに引きながらも指摘する。


「バカ!」


「ルーテリアさん、興奮するなら外でお願いします」


私がそう言うとルーテリアさんにドン引きしているケメルさんが話し始める。


「ダークエルフとエルフですな。ほとんどの種族が反乱を起こしている中で連中のみはまだ、反乱を起こしていない。この二つは反乱の恐れありとみていいと思います。反乱を未然に防ぐ意味でも攻撃を……」


「却下です。ダークエルフは分かりませんが、エルフの反乱はあり得ません」


「しかし、奴らはもともとが独立的、これを機に正式に独立すると思いますが……」


「エルフは制圧済みです。それに反乱を起こした場合は事前にいじっておいた森の魔法陣を起動して、森ごと消します」


「何考えてるんですか、師匠?」


「私は100手以上先を見通す能力がありますから」


「単純な嫌がらせと悪意ですよね?」


「それにしても、この魔王城付近の魔族以外はほぼすべてが敵ですか……この場合、どれから手を出すべきか……」


私はフライパン神に祈りを捧げ、精神を統一する。


「ドワーフを優先して潰しましょう」


「おい! ドワーフは人類とも友好的な種族だぞ?」


部屋の壁で存在感の無かった勇者さんが喚いた。


「だからです。この局面で星教会に介入されると厄介です。まず、人類領に近い場所から対処しましょう。ルーテリアさん、テプサとルグドを押さえてください。時間を稼ぐだけで結構です。ケメルさんはこちらで待機です。しかし、獣人が攻撃した場合は、現状維持のため攻撃してください」


「ルーテリアさんとルグドさんを使ったら、残る戦力が無いじゃないですか?」


「いえ、既に戦力の当ては着けています」


扉が開き、懐かしい人物が入ってきた。


「久しぶりですね。アルドさん」


「お久しぶりです教祖様」


「何で、アルドさんが?」


イラリアと勇者さんは驚いているようだ。


「彼には別件で動いてもらっていたのですが、急遽、移動先を変更して、こちらに来てもらいました。アルド・グリッロ麾下1万の聖戦士の皆さんがここには集結しています」


「1万! 師匠は以前、軍隊が砂漠越えするのは厳しいって言ってましたよね?」


「はい。通常の軍隊は水と食料が不足する砂漠を越えるのは厳しいです。しかし、彼ら聖戦士の高い信仰心の効果もあり、フライパンさえあれば、飢えをしのげます。また、M値の高さから、困難な状況ほど快感になるというわけです」


「何言ってるのか分からないんですけど?」


「もっと、フライパン神に祈りを捧げてください。そうすれば分かりますよ」


「一番到達したくない境地ですね」


「まあ、そんなことは良いとして、早めにドワーフの攻略に動きましょうか」




ドワーフは山岳地帯に住んでいる。

彼らは自らが使う鉱石の近くに拠点を設ける習性がある。

自らの拠点の近くで採れた鉱石を自分たちで加工して武器として輸出するためだ。

彼らは他の勢力に頼らなくても十分な武器生産能力がある。

また、山岳地帯で大軍が下手に突っ込めば、大打撃を被る可能性がある。

食料生産もほとんど外部には依存していない。

弱点は限りなく薄い。


「教祖様、包囲完了しました」


「分かりました。気を抜かず頑張ってください」


「はっ」


伝令の兵士が足早に去る。

私たちはドワーフが住む山を包囲し、経済封鎖を敷いた。


「師匠、これに効果があるんですか?」


「あるかないかで言えば、あります。彼らはほとんどの物を自給自足できますが、彼らの燃料である酒は外部に依存しています。なので効果があるかないかで言えば、あるはずです」


「お酒で降伏しますか?」


「ドワーフにとってお酒は食料や水以上に重要な存在です。ドワーフの体は酒を燃料に動いていると言われるほどですから」


「なら、このまま断酒すれば、勝てますか?」


「それは違法薬物の中毒者が薬を隠されたら、どうなるかというのと同じぐらい難しい質問です」


「もう少しマシな例えは無かったんですか?」


「中毒に陥った人間が薬を断たれた場合、その薬を求めて死に物狂いで探すと思います。それと同じ現象がドワーフにも起こらないとは言えません。酒を求めて死に物狂いで攻め寄せてきた場合、私たちの対抗手段は聖戦士たちの被虐趣味を依存状態にして、それを餌に戦わせるしかなくなります」


「真面目に話してもらっていいですか?」


「私は真面目に話しているつもりですけど?」


「以前、師匠はフライパンで斜面を叩けば、土砂崩れを起こせるって言ってましたよね? ドワーフが山に立て籠もっているなら、それをすればいいじゃないですか?」


「論外ですね。良いですか? ドワーフが立て籠もる山は鉱山なんですよ? もし、強い衝撃で坑道が破壊された場合、復旧には時間とお金がかかってしまいます。それではドワーフを支配するうまみが減り意味がありません」


「建前って言葉を知っていますか?」


「私はイラリアと違って、純粋で無垢なので、そんな言葉は知りません」


「純粋に無垢? 何の冗談ですか? それに建前は悪い事じゃありませんよ?」


「建前何て、大人が悪意の満ちた策謀を隠すために使う言葉ですよ」


「悪意に満ちた大人の代表格が師匠じゃないですか? 早速、嘘ついてるじゃないですか? さっき、建前って言葉を知らないって言ってましたよね?」


「記憶に御座いません」


「その誤魔化し方は無理があると思います」


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