第57話 お友達をご招待
魔王を討伐することを決め、私たちは徒歩で魔王城まで目指している。
魔王城に近づいているだけあって、魔力濃度がかなり高い。
馬を連れてこなくて本当に良かったと思う。
もし、連れてきていたら馬が運が悪ければ魔物化、運がよければ狂暴化する。
どちらにしても面倒は避けられない。
「イラリア、聞いてください。私、大発見をしました」
「時間の無駄にならないといいですね」
「ルーテリアさんが何であんなにキャラが濃いのか。その理由はズバリ、出番がほとんどないからです。少ない出番でどうやって人の印象に残すか、それを考えた結果があの驚異的なM値の高さと変態性を作り出したんだと思います」
「大した発見ですね。時間を返してください」
検問的な何かが見える。
「あれは……検問か?」
武装したオークが出てきた。
「大賢者さん、広域の爆発魔法で吹き飛ばしてください」
「いいのか? こういうのは待つのがセオリーだと思うのだが……」
「早く」
大賢者さんは私の言われるまま、爆撃魔法を放ち、検問とオーク兵をまとめて爆炎に包んだ。
残念ながら、全滅とはいかなかったようだ。
私たちは爆心地である検問所まで近づく。
「一匹だけ残りましたね」
ボロボロのオークが剣を杖にしてがれきの中から起き上がる。
「貴様が勇者だな?」
オークが私に対して言う。
「違います。隣の剣を持っているこの方が勇者です」
ボロボロのオークは無かったかのように振る舞う。
「勇者、陛下に敵うと思うなよ。陛下は……」
私はオークをフライパンで殴打して、10メートルほど離れた場所に飛ばす。
「師匠が叩いたせいで何を言おうとしていたか、分からなかったじゃないですか!」
「負け惜しみの戯言なので聞く価値ないと思いますよ? そんなことより、オークが目の前で言葉を話していることの方が寒気がします」
「師匠の人間性に私はゾッとしますけどね」
魔王城近くには意外なことに何カ所か検問が用意されていた。
魔王軍は攻めることは得意としているが、守りはほとんど経験ないと思っていたけど、戦争を通じて学習し始めているのかもしれない。
まあ、大賢者さんが視認した瞬間に爆破するので、それほど意味はないが。
魔族の首都、名前は知らないが城壁で囲まれていて、
中には家もあるのかもしれない。
私たちは近くの茂みから城門を覗いている。
城門を制圧することは余裕だけど、中がどうなっているのかが分からないから、うかつには侵入できない。
「これは即興で襲撃するのは厳しそうですね」
「魔王城に関しては情報が無いのか、ジーナ?」
勇者さんが自然な流れで名前呼びする。
「最近は放置してましたけど、名前呼びやめてください。仲間だと思われるじゃないですか。で、魔王城に関しては情報を持っていません。ルーテリアさんから魔王城に関しての情報を聞いていたのですが、道中で既に食い違いすぎていましたので、役に立たないことは間違いありません。本人も最後に足を踏み入れたのがかなり前と言っていたので、仕方ないですけどね。いろいろ加味したとしても、魔族がここまで本格的な都市を持っているとは思っていませんでした。こんなことをするのはドワーフぐらいだと思っていましたが、思い直す必要がありそうです」
「どうやって攻めるんだ?」
「これは情報がないと厳しいですね。この森の奥にしばらく潜伏しましょう。そして、情報を手に入れます」
「潜伏で情報が手に入るのか?」
「勇者さんの頭は飾りですか? もちろん、偵察と会話が重要です」
「会話? 尋問の間違いですよね、師匠?」
「イラリアが何言ってるのか分かりません」
森の地上部はウルフが徘徊して警備しているので、大変危険だ。
なので、穴を掘り、魔法で地面を固めることによって、
地下基地のようになっている。
偽装も施されているので、ウルフ程度では近づいてもバレることはない。
勇者パーティーに私並みの隠密のスペシャリストがいないので、他の人には地下基地の拡張と居心地を良くしてもらう。
他の皆に土いじりをしてもらっている間に、私は魔族のお友達候補を地下基地にご招待する。
門衛は2匹のオーク。
城門の上には通路があるらしく、歩哨が3、4匹うろうろしている。
城門の上にいる兵士はさすがに制圧することは難しい。
この状況で招待は難しそうだ。
これは即興でお友達になるしかない。
私はフライパンを構えた。
私は隠形スキルを展開する。
同時に魔力の動きを限りなく、大気中の魔力の動きに紛れるようにする。
魔族は魔力の動きに敏感だ。
そこまでの偽装をしないと第六感で感知され、バレてしまう。
闇夜では視覚はほとんど通用しない。
となると、ますます魔力の動きを偽装する必要性がある。
私はゆっくりと門衛に近づく。
私は全員の視線がバラバラになった瞬間に目の前のオークの口を押え、気絶させ、茂みに連れ込む。
まだ、周りには気付かれていないようだ。
頭に可能な限り信仰心を送り込む。
頭を押さえつけられたオークは打ち上げられた魚のようにピクピクしている。
気絶している相手に信仰心を植え付けたことが無いので、効果については分からないけど、おそらく大丈夫だろう。
一応の処置は終わったので、門の近くに転がしておく。
もう一匹のオークが倒れていることに気が付き、駆け寄る。
必死に頬を叩いて、起こそうとしている。
私が信仰心を植え付けたオークが目を覚まし、頭を押さえながら立ち上がる。
もう一匹のオークが心配そうにしている。
どうやら、信仰心の植え付けは成功したようだ。
作戦の成功を確信して私は地下基地に帰還する。




