第50話 魔人の性質
西の魔王の領国には獣人がいれば、エルフ、魔人と様々な種族がいる。
それぞれの種族の中でも、獣人の場合は草食系の獣人と肉食系の獣人は別の集落を形成しているし、同じ草食、肉食、でも小さな集落を造っている。
エルフもそれぞれの族長を中心として別の集落を築いている。
魔族の中核を担う魔人も同じだ。
彼らは血族ごとの集まりで集落をつくる。
魔族はエルフや獣人などと違い繁殖の方法は始祖となる魔人の漏出した魔力が集まって生まれる。
確率と親となる魔人の強さに依存する繁殖方法のため不安定ではあるが、利点もある。
この繁殖方法だと魔人の生き残りが0でなければ、再び繁殖することが可能となる。
魔人を絶滅させようと考える存在からしてみれば、一匹でも魔人を狩り損ねた場合は魔人の絶滅に失敗したことになる。
大陸中に散らばる魔人を完全に滅ぼすなど至難の業。
事実上不可能と言ってもいいだろう。
また、高濃度魔力下であれば、それほどの実力が無い魔人でも、魔人を生むことができる。
この場合のリスクとしては自分が子供に襲われる可能性があるということだ。
魔人の子供は魔力の塊であるため、存在がゴーストに似ている。
魔力と魔人がいれば、生まれる存在なので魔人は大量の子供を生む。
しかし、そのほとんどは子供同士の弱肉強食の結果、ほとんど生き残ることはない。
そのため、人間が魔人として見える存在になった頃にはかなり強化されている。
親と生き残った子供を中心として、魔人は血族を形成し、血族を基本とした集落を造る。
魔族は人間と同じような食事でも問題ないが、大気中の魔力を摂取することが望ましいようだ。
そのため、魔人が密集しすぎると必要な大気中の魔力量が減り、そのストレスから狂暴化するらしい。
狂暴化の結果、最悪の場合は血族の壊滅ということもあるみたいだ。
それを回避するため、ある程度の人口になるとのれん分けをする。
そして、新たな集落と血族が生まれる。
「魔人の強さの一端が見えた気がします」
イラリアが興味深そうにしている。
「生まれてから今日に至るまで、彼らは戦闘に明け暮れています。そのような生活していれば、嫌でも強くならざる負えません」
「でも、師匠は何でこんなことを知っているのですか?」
「さっき魔王軍の幹部を尋問したって言いませんでしたか?」
「尋問だけでこれだけの情報が取れますか?」
「まあ、私たちフライパン教徒も日夜、魔王との戦いをしています。戦闘相手の情報収集は基本中の基本ですから、ある程度は調べてますよ。ついでにですが集落ごとで戦闘や集落内での戦闘は日常茶飯事なので、戦闘訓練に事欠かすことはありません。あと。この情報は西の魔王のみで通用します。他の魔王だと少しずつ違うこともあるそうです」
「それは訓練じゃなくて実戦って言いませんか? でも、そんな戦闘狂な集団がよく魔王軍としてまとまっていますね」
「魔王は強力なカリスマ性と圧倒的な力が必要です。でないと反逆されます」
「ジーナ、敵地のかなり深くまで侵入しているが、大丈夫なのか?」
勇者さんが不安げに言う。
「問題ありません。魔人の有力者に会うのですから、敵地にいるのは当然です」
巨大な魔力反応が上空に突如現れる
「何だ?」
大賢者さんが警戒する。
「大賢者さん、絶対に魔法は撃たないでくださいよ。交渉が決裂します」
「ああ、分かっている」
「来たようだな。人間」
魔族の男がゆっくりと地上に降りる。
「転移魔法ですか?」
「ああ、お前らがどこに来るのか分からなかったからな」
転移先に物や生物がいると転移先にある物も転移した自分もどちらも悲しい結末を辿ることになる。
そのリスクを恐れ、転移魔法を使う場合は誰もいないであろう場所に転移する。
「では、早速ですが、お取引の条件でしたルグドに連なる系譜の首ですね」
パダラ防衛線の時に狩った魔人の首を渡す。
「確認した。テプサ様もお喜びになるであろう」
「では、契約の履行を期待していますよ」
「安心しろ。魔人にとって契約は絶対だ」
魔人は再び転移を使って消えた。
「ジーナ、あの魔人は何だ?」
「彼はタンザさんと言いまして、魔人テプサを頂点とした一族の魔人です。ここは敵地なので残りはエルフの里で説明しましょうか」




