第42話 魔人の用途
聖戦士が集結した。
魔王軍の援軍はまだ来ていない。
好機である。
ここで潜伏している魔王軍を殲滅。援軍に来た魔王軍も殲滅する。
各個撃破。
実に素晴らしい。
偵察隊のおかげで目の前の森に敵が潜んでいることは知っている。
「本当に俺が出なくていいのか?」
勇者パーティーは前回の事件でパダラで大人しく待つことになったのだが、勇者だけは付いてきてしまった。
「勇者さんが表に出ると士気が下がるので止めてください」
「普通は逆ですけどね」
イラリアが要らない捕捉をする。
「危なくなったら言えよ」
「何で私より雑魚にこんなことを言われなきゃいけないのでしょうか?」
「師匠、口を慎んでください」
「では、始めましょう」
私の一言で魔導砲が上に放たれ、パダラ軍に合図が出される。
「奴らをひき肉にしろ!」
「ヒャッハー!」
「フライパン教徒にはヤバ人しかいないんですか?」
「皆さんやる気にみなぎってますから」
「私の話、聞いてましたか?」
「では、私も行くとしましょう」
「師匠も戦うんですか?」
「敵の将軍クラスは生け捕りにしないといけませんからね」
「魔王軍と交渉するためですか?」
「え?」
「え? あ、ちょっと」
私はイラリアの制止を無視して、森に侵入した。
目の前にゴブリンの集団がいるがフライパンで殴打して、道を開ける。
最も大きい魔力反応がする場所目掛け一直線に走る。
全力疾走していて、避けることが出来ないので、邪魔な木や魔物はフライパンで薙ぎ払う。
「あ、ミスった」
魔物と見間違えて信者を殴ってしまった。
私は速度を維持しつつ、後ろを振り向き言う。
「ドンマイ」
再び前に意識を集中する。
魔法が飛んできた。
木の上にゴブリンメイジが潜んでいたようだ。
私は跳躍して魔法を避け、近くの木を蹴って、ゴブリンメイジの頭上に到達し、殴打した。私はゴブリンメイジが地面に衝突するのを眺めながら着地して、再び走る。
見つけた。
魔人だ。
私は跳躍して、フライパンに私の全体重と落下スピードを加えて攻撃する。
魔人は私に気付いたようで、フライパンを剣で受け止めた。
「グッ、重い。だが、負けんぞ」
私はフライパンに力を入れ、後ろに着地し、突進する。
魔人は剣を横薙ぐように振る。
私は体勢を低くして躱し、フライパンで顔面を殴打する。
魔人は左に飛んでいき、木をへし折る音が聞こえた。
どっかに行ってしまった。
探す手間を考えて、地面に埋めれば良かった。
魔力の残り香を頼りに探すとボロボロの魔人が地面で寝ていた。
どうやら、気絶しているようだ。
寝ている魔人の腕を掴み、本陣まで引きずって戻った。
「おかえりなさい。環境破壊は楽しかったですか?」
「何の話ですか? 頭沸いてるんですか?」
「後ろを振り返ってください」
「後ろ? 私の空間把握能力は極限まで高まっています。そのため、すべてが前になります」
「そう言うの良いんで後ろを見てください」
振り返ると私が通った場所のきが途中で折れていたり、更地になったりしている。
「天変地異ですか?」
「人災です。そう言えば、何ですかそれ?」
イラリアが出迎えてくれた。
「おい! それ魔人じゃないか?」
勇者が叫ぶ。
「魔人!」
イラリアが私から離れる。
「勇者さんうるさいですよ」
「師匠、その魔人どうしたんですか?」
「生け捕りできたので、連れてきました」
勇者が剣を構える。
「ダメですよ。殺しちゃ」
「ん? ここは……」
私は魔人に一撃入れて黙らせる。
「おい、大丈夫か?」
何だろう?
勇者の顔が引きつっている。
「ルカさん、それどっちの心配ですか? 師匠の頭の方ですか? それとも、魔人の方ですか?」
「両方だ」
「二人に自殺願望があったなんて驚きです」
「嘘です! でも、何で生け捕りしたんですか? 師匠なら、魔人を見た瞬間に撲殺しそうじゃないですか」
「私に対するイメージがおかしくないですか?」
「おかしくないと思います。それで、何で生け捕りですか? 魔王軍と交渉ですか?」
「違います。この方は精肉王プラシドさんに引き渡します」
「精肉王?」
「彼は家畜の解体に定評がある方です」
「え? その魔人、食べるんですか?」
「この間、イラリアも食べてましたよね?」
「不本意ながら」
「ジーナ、魔人はしゃべるよな?」
「確か……戦う前に何かを発していた気がします」
「会話した相手を食べるのか?」
「私はこの肉は食べません。失敗を犯した残念な冒険者が食べることになると思います。あ、これは余談ですが、プラシドさんのお店に近づかない方が良いですよ。彼の店に行くと食欲が減退します。ひどいケースになるとお肉を食べることが出来なくなるそうです。」
「詳しく聞いていいですか?」
「詳しくですか? ……そうですね。お店の周りで妙な機械音と絶叫が聞こえるそうです。決定打はプラシドさんが何かしらの返り血で白い服が赤く染色されたようになるようです。彼の別名は赤髪のプラシドと言うらしく、返り血で彼の白髪は真っ赤に染まるそうです。あ、彼の捌いた肉は絶品です。彼の卸した肉は人気があります」
「今の情報でこの街の肉は食べたくなくなるんですけど」
「ん? ここは……」
もう一度魔人を殴って気絶させる。
「では、残党狩りに勤しみましょうか」
「何で無かったように振る舞えるんですか? どんなメンタリティーをしたらこうなるのやら」




