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第33話 総本山へ

第一階層に到着するとスタンピード以前の状況にまで魔物が減ってるようだった。

やはり、あのキングオークがスタンピードの原因になったのだろう。

勇者パーティーの帰還を確認して、冒険者ギルドはスタンピードの終息を宣言した。

地上に戻ってから、一番最初にしないといけないのは宿の予約だった。


「こんなことなら信者を使ってここに拠点をつくれば良かった」


「宗教施設は作っちゃダメですよね?」


「うちは金融業もやってるんですよ?」


「宗教家が金融業って、大丈夫なんですか?」


「寄付金と称してお金をせがむよりは良いと思いませんか?」


「寄付金は徴収してないんですか?」


「もちろん。してますよ?」


「師匠、もう少し自分の発言に責任を持ちませんか?」


「大丈夫です。むしろ多少矛盾がある方が聖典の改訂版を出せるので、問題ありません。あ、聖典は信者であるならば最新版を持っていないといけません」


「悪徳商法か何かですか?」




私たちは何とか部屋を確保できた。


「師匠は無駄にこういうことには運がありますよね?」


「今日は特に迷宮から出てきた冒険者で取り合いになりますからね」


「とれなかったら、どうするつもりだったんですか?」


「勇者パーティーに参加していたことを前面に出して、他の冒険者から部屋を奪い取ります」


「勇者を嫌ってるわりには利用するんですね」


「逆ですよ。嫌いな人間だからこそ骨の髄まで利用できるんです。そう言えば、イラリアのスタンピード仮説は間違ってましたね」


「まあ、でも師匠に原因があるって部分は間違ってませんでしたよ」


イラリアは守るもん君大量爆破によってまき散らされた魔力が下の階層にいる強力な魔物を引き寄せ、それから逃れるためにドンドン第一階層へと逃げてくるという仮説を立てたが、実際には瀕死の重傷を負ったオークキングが大量の魔力を吸収して、まさかの進化を遂げ、信仰心から私を追って、地上へと向かった。

オークキングから発せられる覇気により、魔物たちが驚き、安全地帯へ逃げようとしたのが今回のスタンピードの原因だったのだろう。


「毒で弱めたうえで、さらに守るもん君で止めを刺したつもりでしたが、まさかでしたね」


扉がノックされた。


「あ、私見てきますね」


「イラリア、出ちゃダメです」


「え? 何でですか? 宿の女将さんかもしれないじゃないですか?」


「いえ、これは勇者さんですね。気配がそんな感じです」


「なら、なおさら出た方が良いじゃないですか?」


「この後の展開は見えています。絶対に出ないでください。借金の利率を増やしますよ?」


「大人しくしてます」


ドアが蹴破られる音がした。

勇者が入ってきた。


「夜分に失礼すぎるんじゃないでしょうか?」


「大丈夫だ。女将さんには許可をもらってる」


「宿の所有者に許可をもらっていても失礼さは変わりませんよ?」


「だが、こうでもしなければ、ジーナは会ってくれないだろ?」


「良くお分かりですね。では、お帰りください」


「いや、待ってくれ。どうしても、俺らと一緒に行ってくれないのか?」


「あのですね……メリットもないのに魔王討伐何て行くわけないじゃないですか」


「師匠、そう言えば、行くって約束してましたよね?」


「口約束何て、あってないようなものでしょ?」


「師匠の発言の信頼性が著しく低下してますよ? というか、法律上は口約束も有効ですよ?」


「でも、あれは勇者が社会的な立場を利用して圧力をかけてきたわけですし……。私、すごく怖かった」


「師匠、ウザさも極めるつもりですか?」


「それに、私たちパダラに行くんで」


「ん? パダラって魔王領と人間領の最前線の街だろ?」


魔王領、私たちの地域で魔王領と言うと西の魔王の領土を指す。

西の魔王の領国と人間領の間には広大な砂漠と海峡があり、魔王と人間が積極的に争っていないのはそれが理由であると言われている。

また、魔王領へ行くためには海峡を渡る必要があり、コスト面から見て、積極的に攻めたい要素が無い。

北の魔王と北にある帝国は何も遮るものが無いため、常に紛争状態らしい。

パダラは魔王側の大陸と人間側の大陸をつなぐ場所で陸路で唯一魔王領に行ける場所になっている。

他の場所は魔王領までかなりの距離があるので、海に生息する魔物に襲われる恐れがある。

魔王領へ行くのなら、パダラを除いて選択肢はないと言ってもいいだろう。


「はい。最前線でもありますが、最も重要な情報が抜けていますよ。あそこはフライパン教の総本山なんです」


とりあえず、勇者にはパダラまでは同行すると言い、帰ってもらった。

宿の女将からは入り口が開放的になっていない部屋を用意してもらった。




翌朝、馬車乗り場で勇者パーティーと合流した。


「来たのね。ジーナさん」


聖女さんが話しかけてきた。


「はい、来ましたよ」


「まあ、ルカがどうしてもって言うんだから仕方ないわよね。よろしくね。ジーナさん」


「ツンデレアピールですか? 正直ウザいですよ? 聖女さん」


「ねえ? せめて名前で呼んだら?」


「聖女さんの名前ですか?」


「え? まさか覚えてないの?」


「名前……名前……、聖女さん、あなたに名前があるなんていつから錯覚してるんですか?」


「何言ってるの? 名前が無い人間を見たことがあるの?」


「初めて見たから聞いてるんです」


「師匠、その誤魔化し方は無理があると思います」


「仕方ないと思うんです。だって、どうせすぐに永遠のお別れになるって思ってたから」


「暗殺計画、あれって本気だったんですね」


「星教会の2枚看板ですよ? 生かしておくわけないじゃないですか。だから、覚えてもしょうがないって思ったんですよね」


「師匠、一度頭を直してもらった方が良いですよ」


「それは悪口ですか?」


「いえ、親切心です」


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