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第32話 まさかの再開

その後も階層主を倒していき、ついに山岳エリアに到達した。


「ここが山岳階層、本当に山を登ってるみたいだ」


勇者はあたりを見わたす。

勇者、剣聖、盗賊は何ともなさそうだが、聖女と大賢者は少し苦しそうだ。


「空気の薄さまで再現するとは何とも性格の悪い造りだ」


「エドアルドなら、魔法で何とかで出来そうなのにな」


「こんなことで魔法を常時発動してたら、どんだけ魔力があっても足りん」


「何で皆さんはそんなに余裕そうなんですか?」


聖女が苦しそうに声を出す。


「レラやエドアルドと違って前衛で戦うんだから体力が無かったら、大変だろ?」


「それは納得できるんですけど、そこの狂信者は除くとして、イラリアちゃんも余裕そうにしているのが不思議なんです」


「まあ、私は山は慣れてますから」


「イラリアは高地の出身なのか?」


勇者が面倒な質問をする。

イラリアはまだ、話術というものが足りていない。

すぐにぼろを出す。


「いや、そう言うわけじゃないんですけど……」


「イラリアを鍛えるために標高の高い場所でトレーニングしました」


「なるほど、道理で余裕なわけだ。エドアルド、どうした? 何か気になることでもあるのか?」


「いや、大きな魔力の塊がこっちに向かってくるのを感じてな」


「魔物か何かか?」


「いや、そこまではまだ、分からん」


「何か気付いたら教えてくれ」


「分かった」




私たちは階層主の部屋の前まで到着したが、道中に魔物が一匹もいなかった。


「あまりにも静か過ぎる。エドアルド、探知にも何も引っかからないのか?」


「何も発見できないな」


「とうとう一回も戦わないで階層主の部屋に到着しちゃいましたよ?」


聖女が呆れ半分、驚き半分な感じで言う。


「まあ、戦わなくて済むのならそれに越したことはなさいさ」


勇者は困惑を隠しきれない様子でいる。


「そんなことより、早く門をくぐったら如何ですか? 勇気が湧かないなら背中を足で押してあげますよ?」


「師匠、それは蹴るって言うんです」


「ジーナの言う通りだな。この中を覗けば分かるかもしれないしな」


「勇者さんは学習能力が皆無ですか? 馴れ馴れしく呼ばないでください」


「パーティーメンバーなので、良いと思うんですけど」


「イラリアは何もわかってないですね。いいですか。フライパン教教祖である私が星教会の広報部長的存在と仲良くしていたら、信者が星教会への憎悪が収まってしまいます。それは大変よろしくない」


「煽る方が良くないと思いますよ? って、そんなこと言ってたら、ルカさんたちが門をくぐってるんじゃないですか」


「じゃあ、アイツらに任せとけば良くね?」


「良くないです。師匠、行きますよ」


「えー」


私はイラリアに腕を引っ張られながら門をくぐった。




ここの階層主はとは戦ったことがある。

デカい熊だ。

一撃で倒してので、その生態もよく知らないけど、勇者でもあの程度なら問題ないだろう。

門をくぐり終え、階層主の部屋に着いた。

何故かみんな立ち尽くしている。

視線の先を見ると巨大オークが巨大熊の腹を剣でえぐっていた。

しかも、保有魔力が尋常はないぐらい多い。


「師匠、あのオーク見覚えないですか?」


オークキングに似ているが、最後に見たときと違い、体が大きくなり、体中に火傷の後がある。

守るもん君が爆発した結果だろう。

あの膨大な魔力量、守るもん君が大量に爆発し、放出された魔力をこのオークキングが吸収したのだろう。


「改宗した記憶が無いこともない」


「つまり、あるってことですね」


あ、巨大オークと目が合った。


「きょ」


「きょ?」


ヤバい、オークを改宗したことがばれる。

奴め、跪こうとしている。

私は足に全力で力を籠め、オークとの距離を詰める。

そして、顔の側面に遠心力と私の渾身の力を込めて一撃を入れる。

すると、オークは言葉を発する前に首が胴体から離れた。

頭を失った胴体は前に倒れようとするので腹部をフライパンで殴り、後方の壁へと飛ばす。


「危ないところでしたね」


「あのオーク俺らに何かを言おうとしてなかったか?」


「勇者さん、お疲れのようですね」


「疲れていても、話そうとしているかどうかぐらいは分かるでしょ」


「聖女さん、迷宮というものがいかに狡猾かご存じないようですね。今回のケースだと、魔物に言葉を話すようにすることで、侵入者を油断させ、その隙に攻撃するのですよ?」


「え? 迷宮ってそんなことまでするの?」


「はい。迷宮はデザイン性の無さと悪辣さに関しては他の追随を許しません」


「何か、迷宮を見る目が変わった気がする」


「ようやく聖女さんも迷宮を正しく認識できるようになったそうですね。さっきのオークの魔力量とこの階層に魔物がいなかったあたり、あのオークがスタンピードの原因だと思います。もう、撤退してもいいのでは?」


次の階層にだけは進ませるわけにはいかない。

守るもん君を大量消費したことで、あそこの魔力濃度は大変なことになってるはず。

そして、何よりも、鉱山爆破の痕跡が完全には消えてないはず。

ここで撤退に追い込まねば。


「ジーナ殿、流石にそれは早計というものです。私もあのオークがスタンピードの原因になったであろうことは賛成です。しかし、オークがスタンピードの原因と言い切るには弱い」


「でも、私たちが倒すべき魔物についての確たる情報はないのですよ? ある程度の区切りをつけて地上に戻らないと、時間がいくらあっても足りません。迷宮は底なし沼ですよ? 本気で最下層まで行くことを考えるなら、年単位の準備が必要です。とりあえずは、地上に戻っては如何ですか?」


「確かに、ジーナの言う通りの気がするな。既に一カ月は迷宮にいる。これより下はさらに強い魔物がいることを考えると、今のペースで攻略するのは厳しい。戦闘職じゃない、レラやエドアルドにはこのペースを1か月以上も続けるのは厳しいだろう?」


勇者が大賢者に追い打ちを掛ける。


「それはそうだが……」


「そうね。あの狂信者と同じ意見なのはムカつくけど、私たちは長期間の攻略を計画して入ったわけじゃないから、備蓄的に厳しいわ。今のところ、森で食料の調達ができたから、何とかなってるけど、これ以上は何とも言えないわ」


「……仕方ないか」


「剣聖さん、盗賊さん、気付きましたか? 勇者さん、大賢者さん、聖女さん、この三人が真面目に話している時はあなた方に発言権が無いことに」


「師匠、それ今言う必要ありますか?」


「今、言わなければ、言うタイミングが無かったと思いますよ?」


私たちは1カ月かけて地上へと戻った。


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