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第26話 嬉しくない再会

手の匂いだけでは勇者の特定ができなかったようで、残念なことに呪殺に失敗してしまった。

結局、無事な勇者とその仲間たちのパーティーに参加することとなり、私たちは自己紹介をしている。


「俺はルカ・ダミアニ。勇者だ」


「エドアルド・ブレガと申します。大賢者です」


「私はレラ・ベルティーニ。聖女を務めさせていただいてます」


「アブドン・リージだ。剣聖と呼ばれてる」


「あたいはパオラ・デルコーレ。職業は盗賊」


「盗賊?」


私が不快な顔をしたからか、パオラは訂正する。


「いやいや、職業は盗賊だけど、あたいは盗みはしてないから、ここではトラップの解除とか偵察をしてるよ」


「いや、すみません。盗賊と聞くと血が騒ぎまして」


「血が騒ぐ?」


「自己紹介がまだでしたね。フライパン教教祖、ジーナ・ネビオロです。短い間となるでしょうけど、よろしくお願いします」


私が自己紹介を終えるとイラリアは頭を抱えている。


「フライパン教?」


大賢者さんが疑問を口にする。


「フライパン教!」


聖女は驚きの後に恐怖の感情をあらわにする。


「レラ、どうした?」


「ルカ、知らないのですか? フライパン教という恐ろしい宗教を」


「恐ろしい宗教?」


あの星教会の犬、ふざけたことをぬかしおって。


「宗教界でフライパン教を知らぬ人などいませんよ。マーシ事件って聞いたことないですか?」


「マーシ事件? マーシって、商業神の信者たちの聖地だろ?」


「今から10年ほど前の話です。とある少女が商業神を祀る神殿でフライパン神という神の教えを説きました。他の神の神殿の前で他の神の教えを説くというのは非常識な行為で、信者たちが激怒して、その少女を襲いました。しかし、少女は手に持つフライパンで信者たちを叩くと、叩かれた信者たちは他の商業信徒を襲い始め、マーシは大混乱になりました。商業神殿は事態を重く見て、騎士団を派遣して、1000人で何とか少女を牢に入れることが出来ましたが、その晩に少女は脱獄、商業神の像をフライパンに変えるという暴挙に出たそうです。結局、マーシはフライパン教徒によって陥落され、マーシの和議で商業神の主武装をフライパン、副武装をそろばんにすることになりました」


「話の規模と結果の規模が違いすぎませんか? 何で、街一つ落としたのに、武装の変更だけなんですか? 師匠?」


「そこの自称聖女が言ってることが事実かどうか分からないですよね? それに私がやってと決めつけるのはやめてほしいですね」


「じゃあ、違うんですか?」


「合ってますよ」


「じゃあ、良いじゃないですか。像をフライパンに変える? 何してるんですか、師匠?」


「だって、アイツら私が素晴らしい教えを説いたら、牢屋にぶち込みやがったんですよ。だから脱獄してやって、一番を大きい像は粉々にしてフライパンの形に成型して、他の像は街から集めたフライパンを刺し込んでハリネズミにしてやりました。そしてら、神殿の連中がブチ切れて戦争になったというわけです」


「本当に何をしてるんですか?」


「ルカ、この人はやめておいた方がいいと思うの」


聖女が勇者に忠告する。


「でも、俺の勘が連れて行った方がいいって言ってるんだよ」


「神託のスキルか?」


大賢者が勇者に質問する。


「たぶん」


「私も神託のスキルはありますが、そんなことは……」


大賢者が聖女の発言に割り込む。


「レラとルカは神託は神託でもそのタイプが違う。ルカの神託は魔王の討伐が最優先になっている。レラの神託が何を優先しているのかは分からないが、魔王討伐には彼女の力が必要だってことだよ」


「ちょっと待って頂いても? 私が何で魔王の討伐に参加する前提になってるんですか?」


「え?」


「大賢者さん、失礼ですけど、私の時給をご存じ? 最近大金が入ったことで私の時給は跳ね上がっています。その時給と比較して、魔王討伐で得られる金額がどちらが大きいと思います? 私の時給に決まってますよね。魔王の素材が売れますか? 無理です。腐るしかできない生もの何て要らないです」


「だが、魔王討伐は人類の宿命、その偉業に関われるのだぞ?」


「偉業か何か知りませんけどね。私を雇うってんならね、雇用条件と金額の交渉から始めるべきなんじゃないですか?」


「ルカ! 見てください! このフライパン教徒はこんなにも浅ましいのですよ? 今からでもやめるべきです」


「レラ、そうは言っても、魔王討伐には彼女が必要な気がするんだ」


「自称聖女、あなた、口には気を付けた方がいい。夜道を歩けなくしますよ?」


「師匠、これ以上、信者の株を下げないでください」


「何言ってるんですか? 社会一般の評価何て、既にどうにもなんないレベルで低いですよ?」


「自覚はあったんですね」


「分かった参加に見合う対価を示せばいいんだよな?」


「星教会に金を貰わないと活動できない勇者にそんな大したものが提示できるんですか?」


「師匠、顔がすごいことになってますよ?」


「魔王の領地だ」


「ルカ! 正気ですか? あの広大な領土を何の相談もなく渡す約束をするなんて」


聖女が驚きと同時に慌てている。


「いや、ルカ、それは良い判断かもしれん」


大賢者が顎に手を当て、思案を巡らせている。


「エドアルド様?」


「レラ、魔王にたどり着くには何を越えねばならないか知ってるか?」


「確か、砂漠でしたよね?」


「あの砂漠は常人では越えられない。それに豊かな土地でもないと聞く。教会の幹部もそんな土地は欲しないだろう。それに魔王を討伐したとて、すべての魔族を倒すわけではない。その管理ができるのは相当な強者にしかできん」


「あの、全部聞こえてるんですけど。聞いたうえで、私が何でその条件を受けると思うんですか? 聞いてます?」


彼らは自分たちの世界に入っていて、私の声が聞こえないようだ。


「なるほど。確かにそうですね」


「ジーナ、その条件でどうだ?」


「名前で呼ぶのやめてほしいんですけど、距離の詰め方が早すぎて気持ち悪いです。まあ、仕方ありませんね。特別サービスで受けてあげましょう」


「あの……師匠が! この悪条件で……受け入れた?」


「イラリア、そんなに天誅が欲しいんですか?」


「やめてください」


剣聖さん、盗賊さんは完全に蚊帳の外となっていた。

剣聖という個性強めな職業なのに空気。

というより、勇者には聖剣がある。

剣聖とキャラがかぶっているのだ。

盗賊さんは職業は並なので、口調で個性を出そうとしたが、失敗。

彼らは今後空気にならないように、また、個性をいかに出そうかと思案しているようだった。


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