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第15話 私たち友達だよね?

迷宮の底を何枚か抜いたら、山岳地帯が見えた。


「迷宮を垂直に移動するって聞いたことないですよ?」


「私も初めて知りました。でも、あの床、自動で修復されていくんですね。ほら、見てください」


先ほど通ってきた穴を見ると、少しずつ穴が狭まっている。

しかし、穴が巨大すぎて、完全にふさがるにはしばらくの時間が必要だろう。


「ほんとですね。改めて、迷宮が不思議な存在だと思い知らされますね」


「でも、ワイバーンを捕まえられたのは幸運でした。移動が楽です」


「流石の師匠も落下ダメージはバカにできないようですしね」


「私は問題ないですけど、イラリアを連れて行く方法が見つからなかったので。前みたいに首根っこを掴むと、落下の衝撃で首が逝きます。他のところを掴んでも、全身打撲で死ぬことになるでしょうし」


「ご配慮感謝します」


「では、ワイバーンを呼びましょうか。おーい」


私は手を振り、ワイバーンに合図する。

ワイバーンは私たちの周りを空中で周回する。


「何か嫌がってませんか?」


「降りてきませんね。守るもん君を出撃させますか」


「あ、降りてきた」


ワイバーンが急降下して、着地した。


「やはり、信頼関係は重要ですね」


「師匠にとっての信頼関係は恐怖によって関係を維持することですか?」


「違いますよ。でも、時には力関係を理解させる必要ってあると思いませんか? ね?」


ワイバーンがすごい勢いで首を縦に振る。


「すごい信頼関係ですね」


「乗ってください。では、新しい階層に」


私たちはワイバーンで降下して、第11階層山岳地帯に入った。





山岳地帯、森林地帯とほとんど同じだが、傾斜があり、長時間の行動となるとその難易度は格段と上がる。


「師匠、ワイバーンで一気に移動しませんか?」


山岳地帯というだけあって、空気が薄い。


「肝心のワイバーンにそれほどの元気がないと思います。ほら、真っ青でしょ?」


「あれ、酸欠状態になってませんか?」


「そう、だから、私たちを乗せて飛ぶなんて無理ですね」


「じゃあ、階層の床を抜いて、突破しましょうよ」


「出来たらやってます。山岳地帯って言うだけあって、土の量が森林地帯と比べ物になりません。だから、土が少ない場所を探して、歩いています」


私の空間認識のスキルがあれば、周囲の大体のことが分かる。

このスキルのおかげで森林地帯の土がどの程度あり、どのぐらい掘れば床に到達するのかが分かった。

しかし、この山岳地帯は私のスキルの能力では探知しきれないほどの土の量だ。

目標もなく、ただ、掘り続けるのはキツイ。

上空を見るとワイバーンがふらふらとしている。

そして、ワイバーンが落ちた。


「あ! 私の希望が!!」


イラリアの希望は地面でぐったりとしている。


「あれは無理ね。引きずって歩くわけにはいかないから、置いていきましょう」


「そんな!」


「運ぶのなら、ご自分だけでどうぞ」


「今までありがとう。ワイバーン君」


「あれはメスですよ?」


「ワイバーンちゃん」


疲労困憊したワイバーンに別れを告げた私たちは山を彷徨うのであった。




結局、階層主と戦う羽目になった。


「創意工夫の見られない石壁に再び相まみえるとは思ってもいませんでした。コンセプトの違う階層でもボス戦の部屋は同じなんですね」


「迷宮に何か恨みがあるんですか?」


「はい。ありますよ。考えてみてください。この迷宮が余計なタイミングでスタンダードを起こしたせいで、当時の私はこの街を支配し損ね、隠蔽工作のため、多大なる労力を払いました。恨みがないと思いますか?」


「理解できるけど、理解したくないというのはこのことを言うんだなって今ものすごく感じます」


「まあ、過ぎたことを言っても仕方ありませんね。デザイン性皆無の迷宮」


「根に持ってるじゃないですか!」


私は階層主と戦うため、門をくぐる。


「今度はデカい熊ですか? 何でもかんでもデカくすればいいってもんじゃないんですよ」


「今度は迷宮に説教ですか?」


「しかし、相手にするのが面倒ですね」


クマが咆哮を上げ、迫ってきた。

祈りと迷宮に対する思いを込めて、フルスイングする。

クマは目にもとまらぬ速さで壁と衝突した。


「え? 師匠、終わりました?」


「少し暗くて見にくいですが、壁にめり込んでいるようですね。おそらく、絶命しているんではないでしょうか。本来なら精神HPの回復の時間なんですが、今回はカットということで」


「階層主相手に一撃ですか? というか、今までは手加減してたってことですね? 手加減するなら、事前に報告してもらっていいですか?」


「可能な限り努力します」


「やる気がないですって言いたいんですか?」


「しかし、クマさんの死骸を晒すのも申し訳ないので」


私はクマに近寄り、地面をフライパンで叩く。

フライパンと地面の接触点を起点に、穴が広がっていく。

穴が広がり、クマが入りそうなので、壁に埋まっているクマを掴み、投げ捨てた。


「師匠、非常識を驚けない自分がいます」


「次は私たちの番ですよ」


「ワイバーン無いんですけど」


「自分のレベルを確認してみてください」


「あれ? 54になってる! どういうことですか?」


「パーティーを組むと、パーティーメンバーが倒した魔物の経験値のおすそ分けがあることは知ってますか?」


「なんとなく……」


「そういうことです」


「ってことは、師匠は魔物を大量に狩ってるので、もっとレベルが上がってるってことですか?」


「私のレベルは100ですよ」


「何で変わってないんですか?」


「実は、100になってからはこのフライパンに経験値をあげてるので、フライパンがすごく進化してます」


「それ、盗まれたら大変じゃないですか!」


「盗むのは無理だと思いますよ。私以外が持つと、魂、魔力、経験値、HP、スキル、貯金残高が吸われるそうですよ」


「貯金残高って吸えるんですか?」


「そこのところの謎は私もまだよくわかってません。では、飛びますよ」


イラリアが私の腕を掴む。


「待ってください! 私はどうするんですか?」


「レベル50あるので、例え、地面と正面衝突しても、瀕死の重傷で済みます」


「それ、本当に大丈夫なんですか?」


「気合と根性です。さあ、飛びます!」


私はイラリアを掴み、飛び降りる。

下の階層ではフライパンを持った女の笑い声が響き渡っていた。


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