適正のない二人
西暦2020年4月x日
とある小学校の入学式
「驚くべきことだが、君には適正がないみたいだ。」
「え?」
ある物体の適正検査を担当する教員からの一言で入学したばかりの少年は言葉を失った。
少年の名は垪和 大和。
少年の手には四角い物体が握られていた。
物体の名称は「キューブ」
この世界のある場所に、雲をも越える高さはある巨大な樹「母なる世界樹」が存在している。その樹「母なる世界樹」に実る物体こそが[母からの贈り物」である。
キューブには様々な力が備わっており、この世界の住人はその力を使い生活している。
例えば、この世界での生活に必要な電気、ガス、水道設備を動かすためにキューブに込められた力を使用する。キューブの解放には使用者に備わっている匣力が必要になる。
キューブはこの世界にとってはなくてはならない資源なのだ。
キューブはこの世界で暮らす者にとって、なくてはならない存在であり誰にでも使えるものである。いや、だったのだ。
少年の手に握られたキューブには風の力が備わっており、自らの意思で匣力を込めるだけでキューブは飛散し小さな旋風が発生するはずだった。
6歳の少年は小学校入学式と同時にこの世界の理からはずれた存在となった。
「キューブを使えないやつ他にもいたんだ」
呆然と立ち尽くす少年を遠くから見つめる少年がいた。
名を三上 凰
この少年もキューブを解放できず適正なしと言い渡されていた。
二人の適正無しの少年。
彼らの人生は、ここから狂い始めた。