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カメいじめ終わり


 それからしばらくして、気がつくと周りにカメはいなくなっていて、残った2-3匹をおっさんと小林が叩いていた。

 地面には甲羅が砕かれたカメがごろごろ転がっている。

 かなりむごたらしい。


「おい、二人とも、大丈夫だったか?」


 おっさんが聞いてきたので、俺と小林は頷いた。


「だ、大丈夫です。でも、お、驚いた……」


 俺が地面にへたり込む。

 もちろん、カメの上には座らないように周りを見てからへたり込んだ。


「怪我がなくて良かったな」


 小林が言う。


「ただのカメだと思ったけど、け、けっこう怖いな。腕に食いつかれたときは本気で怖かったぞ」


「俺も何度か食いつかそうになったが、鎧のおかげで食いつかれずに済んだな。やっぱり、鎧を買ってよかったんだ。一ヶ月分の給料は無駄じゃなかった。俺は間違っていない」


 小林がなんだかうれしそうに自分の鎧の埃を落とす。


「ったく、魔王だかなんだかしらないけど、とんでもねぇ迷惑だ。農家がくってけねぇじゃねぇか」


 おっさんが落ちているカメを拾い上げて、ひょいひょいと1カ所に積み上げていく。

 ごめん、俺その潰れたカメ触りたくない。


 ん、魔王?


「今魔王って言いました? このカメと魔王に関係が?」


「なんだ、あんたらそれもしらんのか。魔王っちゅうのは魔物を操るんだ。このタートルも元々はおとなしいんだけども、魔王がこうやって国中の畑を襲わせているんだ。ほんと、いい迷惑だってな。この辺りはまだこんなもんだが、ミエナ村のほうなんかタートルだけじゃなくてミンゴエフやジェジェなんかも畑までやってきて、とても仕事にならないってよ。向こうは下手すりゃ冬の蓄えをためられないかもしれねぇな。気の毒なこって」


「あ、あぁ、なるほど……たしかに農作物がとれなきゃやばいっすね」


「今の時期だからまだましだけんど、種や苗の時に荒らされたら本当にひとたまりもないわい。はー、なんとかしてくんねぇかね」


 農家のおっさんがいろいろと役に立つ情報をくれる。

 茶屋のじいさん、まじで役に立たなかったな。


「そういえば、魔王はなんで畑を襲わせてるんですか?」


 と、小林が聞く。

 あ、お前もそのへんは知らなかったのね。


「俺に聞かれたってそんなことしらねぇよ。でも、十中八九脅しだろうよ。北の国は魔王に頭を下げたらしいが、この国はまだ魔王を許しちゃいねぇ。だから、魔王の言うことを聞かないと飢えて死なせるぞってことだろうよ」


 知らねぇよ、といいつつ、その推測はほぼ正解だろう。

 なんて使えるおっさんだ!


「おおお! その魔王って言うのはどんな奴なんだ!? じゃなくて、どんな奴なんです!?」


「いや、そいつはちっとわからんなぁ……。そんなに知りたきゃ、ゲルトに聞いてみろ。昔魔王を倒した退役軍人だ」


 あまりにドンピシャ。


「そ、それだ! その人を紹介してください!」


「ん~、紹介ってほどのことじゃねぇけどよ、まぁ俺の所から来たって言えば教えてくれるだろう。通りの隅の街の外れにある茶屋の隣の家だ」


 え、それってあの茶屋のこと。

 あの隣って……。

 あのじいさん隣の家が魔王を討伐した軍人だと言うことも知らなかったのだろうか。

 わけのわからん昔話ばかりしやがって!


「あ、ありがとうございます!」


 俺と小林は報酬というか日雇いの給料というか、たぶん意味合い的には後者の方があっているであろうお金を受け取って、茶屋の隣の家に向かったのだった。

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