この転生系クソラノベには転生特典はありません
トラックに轢かれた俺、桃山直樹は天界のようなところで、男と差し向かいになっていた。
向かいの男は銀髪で片眼鏡をかけている若い姿で、几帳面そうな表情をしている。
「ということは、俺は転生するということですね」
俺は内心のわくわくを隠しながら答えた。
最近では事故による転生が当たり前になっており、クラスメイトの一人もトラックに轢かれて転生して向こうで魔王を救って帰ってきた。
なんでも目的を達成すると事故の直前に戻ってこれるそうなので、結果的にはトラックには轢かれていないことになっている。
そいつは戻ってくるときに向こうで出来たハーレムの少女達を連れて返ってきて、学校でも彼女らを侍らせてウハウハしている。
正直、めちゃくちゃうらやましい。
今目の前にそのチャンスがある。
これでわくわくしないなんて無理だ。
「えぇ、そういうことになりますね」
銀髪の男は表情を変えずに答えた。
「それで、転生特典はどうなるんですか!? なんかすごい奴を頼みます! 俺TUEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEできるやつを頼みます!」
「あなたもその口ですか」
銀髪の男は軽蔑したような視線を俺に向けた。
え、なに?
「どうも、中には甘い担当者もいるようで、そうやって転生者を甘やかすようですね。しかし、私は違う」
「へ?」
「これまでの転生者の記録を見ましたが、驚きましたよ。まったく嘆かわしい」
なんだ。なんか変な風向きになってきたぞ。
転生特典は?
「転生したと思ったらあっという間に最強になって好き放題。その上、性奴隷を買うやら、美少女を片っ端から手込めにするやら、ハーレムなど作って好き放題しているようですね。どんな教育を受けてきたのでしょう」
「え、は、ま、まぁ……でも、男の子の夢ですから」
「あげくにはそんな体験を元にした作品が小説や映像作品として世の中に流布しているようですね。全く、世も末です」
銀髪の男は眉をひそめる。
あかん。
教育的に真剣な人、つまりは異世界転生物には全くもって不向きな人が俺の転生担当になってしまった。
こりゃ転生特典は期待できないぞ。
「ま、まったく、その通りですね! お、俺はも、もちろん、そ、そんな不純なことは考えていません! 世のため、人のため、魔物やら魔王に苦しむ人々のために身を粉にして働きます!」
「すばらしい。よく言いました!」
男がビシッと俺の額を指さした。
「……ですから、転生特典をなにとぞ」
すると男の目が怖いほど見開いた。
いや、本当に怖っ!
「五体満足な男子が何を寝ぼけたことを!」
「いや、トラックに轢かれたんですけど」
「そのような他人の力に頼って平気な顔をしているような神経だから、調子に乗って傍若無人なことをするのです! 私は一切転生特典など与えません!」
「え、え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!? ちょ、ちょっとそれはないんじゃないですか!? ありえないっしょ! そんなのありえないっしょ! 転生だよ? 転生だよ!? 転生だよぉぉぉ!?」
「いいえ、ダメです!」
やばい。
俺TUEEEとか完全に無理な流れじゃないか。
「じゃ、じゃあ、せめて初期ステータス高めで! あ、そうだ、レベルアップ特典とかを多めにしてください! 出来れば三ヶ月ぐらいで世界最強になれるぐらいの成長速度で……」
「ダメです」
「え、え゛え゛!? ちょっと待って! 酷い! 酷すぎる!」
「そもそも今回の転生先はステータスと言った概念はありません。あなたの生きていた世界と同じです」
「すると、ステータス画面とかメニュー画面とかそういうのは」
「ありません」
「レベルアップとか」
「ありません」
「スキルとか」
「ありません」
「え……ちょ、ちょっとまって。あまりに酷くないですか?」
「いいえ、これがまっとうです」
男は厳しい表情で言い放った。
とりつく島がないとはこのことだ。
「じゃ、じゃあ、せめて魔法の才能はすこしおまけしてもらって……」
「魔法もありません」
「え゛え゛!? 魔法なしでどうやって戦えって!?」
「魔法など甘えです。魔法がなくてもあなたの世界はなんとかなってるじゃないですか」
「いや、それを言われても、向こうは魔物とかいるんでしょ!?」
「いますよ」
「無理じゃん!」
「無理ではありません」
「いや、無理だって……」
チートなし・魔法なし・レベルアップなし・スキルなし。
これでどうしろと。
「なら、せめて現代の物を向こうに持ち込めるとか、そういうのお願いしますよ。例えばスマホ……」
「ダメに決まってます」
「なら、日本の物を自由に取り寄せできるとか……」
「ありえません」
「なら、スキルポイントをたまったら呼び出せる形でもいいですから……」
「スキルポイントもありません」
「スキルポイントもないんですか……?」
「そもそも、そういうゲーム的なポイント制度は一切ありません」
チートなし・魔法なし・レベルアップなし・スキルなし・あらゆるポイントなし。
「じゃあ、せめていつでもWikipediaを見れるとかそういう……」
「いけません」
チートなし・魔法なし・レベルアップなし・スキルなし・あらゆるポイントなし・wikipediaなし。
「ちょ、ちょちょちょちょちょ!!! いくらなんでも酷くないですか!?」
「酷くありません。これまでの経緯を考えれば妥当な処置です」
「う、うぅ……ところで、転生先はどんなところでしょう」
「ええ。あなたのイメージする中世的な世界で、魔王が魔物を率いて人間の国を侵略しています」
「あぁ、ありがちな世界ですね。それで一体どうすれば俺は目的達成になるんですか?」
「魔王を倒してください」
「なんですか、もう一回言ってください」
「魔王を倒してください」
「もう一回お願いします」
「魔王を倒してください」
「あの。チートなし・魔法なし・レベルアップなし・スキルなし・あらゆるポイントなし・wikipediaなしですよね」
「はい。その状態で」
「魔王を倒してください」
「無理でしょ」
「決めつけは良くありません」
かなり不満を表現しているつもりなのに、男は涼しい顔をしている。
「誰かの力で他人を虐げて傍若無人に振る舞うなど、青少年にふさわしくありません。己の力でがんばってください」
「え、ひど……」
転生物のメリットをすべて潰された。
もう転生したくない。
「あの、やっぱり転生を止めて日本に返してもらうわけには」
「無理です」
「ですよねー」
「あぁ、そうそう。これまでの転生者の所業を見ていると、力に任せて世界をかき回すという外道な所業の他に、やたらと女性を手籠めにしてハーレムを築くということも多いようです」
「あぁ、そうですね……そうでしょうとも。でも、俺は絶対に無理ですよ。なんたってチート要素ゼロなんですから」
「そこに対しても対策をしなければなりません」
「ちょ! 俺の話聞いてます!? チート要素ゼロだから絶対にそんなことにはなりませんよ!!」
「いいえ、私はそのことについては甘く見ていません。特典要素がないとしても、コツコツお金を貯めて奴隷を買いあさる可能性があります」
「いや、チートがない時点でそんな余裕はないと思いますが。というか、その世界には奴隷とかあるんですか?」
「あります」
冷静を装ったが内心心が躍った。
この担当者がどんな対策を取るか分からないが、きっと性奴隷を買ってニャンニャンできる機会がやってくるだろう。
「へ、へぇ……。でも、俺そういうの興味ないですから、あまり気にしなくていいですよ」
「たとえそうだとしても、そのままというわけにはいきません。対策をします」
「へ、へ~なにをするんですか。言っておきますけど、俺はそういう奴隷とか大嫌いですよ。非人道的この上ない」
「もちろんです。私もそう思います。ということで、奴隷を買えないレギュレーションを設けます」
「え、レギュレーション?」
「はい」
「もし奴隷を買うとどうなるんですか?」
「買えません」
「いや、なんで。お金があれば買えちゃうでしょ」
「買おうとするとあなたが死にます」
「え゛え゛!? ちょっと理不尽すぎませんか!?」
「問題ありません」
「あるよ! めちゃくちゃあるよ!」
「なくてもなんとかあります」
「そ、そりゃそうかもしれないけど……」
チートなし・魔法なし・レベルアップなし・スキルなし・あらゆるポイントなし・wikipediaなし・奴隷なし。
「しかし、それでも行きずりの女性と仲が深まり一夜をともにすることも考えられます」
「いや、それは……そこは規制しないでくださいよ」
「たしかあなたの世界では未成年の性行為は禁止でしたよね」
「た、確かにそれはそうですが、ほ、ほら、異世界だし……」
「いいえ。可能な限り転生元の決まりを遵守するようにしましょう」
やめて!
なんでそんなところで真面目なの!?
「い、いやいやいや……そ、そこは、ほら、そこは……」
「それが高じていずれハーレムなどを築く可能性もあります。ここは規制しましょう」
え、なんだ、何をする気なんだ。
まさか、性行為を規制する気なのか?
頼む……頼む、止めてくれ!
「30才以下の女性との接触を禁止しましょう」
「ブーーーーー!!」
思い切り吹き出したが、男の表情は変わらない。
「ゴホッ……ゴホッゴホッ! ちょ、ちょっとまった、いくらなんでも横暴……」
「いえ、不十分ですね。半径3メートル以内に近づけないレギュレーションにしましょう」
「いや、ちょっとまって、おかしい! おかしいから! ちょっと担当者さん、やりすぎです! お願いです! 正気に戻って! 俺、死にますから! やめて、本当にやめて!」
「いや、5メートル、10メートル……距離で規定するのも難しいですね。とりあえず接近できない規定にしておきましょう」
「ちょっとまって! ひどい! ひどいから! そ、そうだ年齢をもっと緩めてください! お、俺男子高校生ですよ!? 自分より年上とか完全に眼中にありません。せめて、18才以上はOKとか」
こうなればワンチャン可能性が出てくる。
俺は年上でも全くいける。
むしろ二十代の大人の女性とかめちゃくちゃ好みだ。
「ふむ。そうですね。年齢については再考の余地がありますね」
「そうでしょう! だから、ぐぐっと年齢を下げて……」
「さきほど30才と言いましたが、あなたの世界では年齢の概念が変わってきているようではないですか。30才ではまだ若いと聞きますね」
「いや、そんなことはどうでもいいから18才にまで基準を下げてくださいよ! ね! ね! ね!?」
「35才にしましょうか。いや、それでもまだ……」
男が考え込む。
「ちょ、ま、まった! 違う、違うから! 俺の世界では18を超えたらもうおばさんだから! だから基準を18才に!」
「しかし、何事も余裕を持たせておいて悪いことはありませんからね」
「いらない! 余裕はいらない!」
「わかりました。30は止めましょう。35も止めます」
「そ、そうですよ。18……」
「50にしましょう」
男が言い切った。
「へ? ちょっとまって、なに?」
「50才以下の女性は接近禁止です」
チートなし・魔法なし・レベルアップなし・スキルなし・あらゆるポイントなし・wikipediaなし・奴隷なし・50才以下の女性は接近禁止。
「ちょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
「これでいいですね」
「いや、よくないです! 全然良くないです! まって! おかしいから! なんか根本的におかしいから! 待って待って! 待ってってば!」
「では転生しましょう」
「ちょおおおお、待ったああああああああああああああああ!!!!」
そう叫びながら、俺の意識は異世界に飛んでいった。
見ての通り、極限までくだらない作品です。(作者自身が認めます)
こんなクソ作品、暇人以外は読んではいけません!
仕事で忙しい方、こんなもん読んでないで寝てください!
勉強で忙しい方、こんなもん読んでないで勉強してください!
作者的には「おほー、なんてクソだ。よし、このまま適当な展開で適当に文字数を書いて適当なエンディングを迎えて適当な終わり方をしてくれ。クオリティは下の下でかまわんぞ。そんで完結したら投稿しよう」と思って書いていたのですが、なんと冬のテンション低下に伴い筆が進まなくなってしまい、こんなクソ作品に敗北する結果となってしまいました。
なので、書けてる分を投稿しつつ続きを細々と書いていこうと思います。
心ある方はポイント入れなくてもいいので「名も知らぬアマチュア作家さん、クソラノベに負けるな! ってかクソだと思ってる物を投稿するなら、せめてちゃんと終わらせろ!」と心の中で応援してください。




