十四
「サヨリちゃん……!! 良いの!?」
「ご準備がありますので皆さんと一緒には行けませんが遅れてなら行けます」
「サヨリさん……ありがとうございます……!!」
颯はサヨリに向かって頭を下げそう言った。
「サヨリちゃん……! 大丈夫なんですか……!?」
「えぇ勿論……私は学長の秘書なので強いですよ。私が駆けつけて来るまで派手なことはしないでくださいね」
「秘書に強さはいるのかしら……」
「……みんな無茶しないでね」
「カジカちゃん大丈夫っす! 俺達もはや超強いんで!」
そう言った爽は自信満々の表情をしていた。
(僕は全然自身無い……)
「とにかくみんな明日へ向けて準備する為に私の家に戻るわよ」
「サギフエは助けに行かないのに仕切ってるね」
「仕切りたがって何が悪いのよライノ……」
「ごめんサギフエ」
「まぁ、あんたに悪気は無いわよね」
数分後、魔法学校の上級の生徒を卒業した海達八人は上級の先生と別れの話を済ませ、その後学長室の出入り口の前に移動した。
「あっさり死ぬんじゃないよォォ……」
「皆頑張れ!! くれぐれも油断するな!!」
「気を付けていってらっしゃい」
「危険だと思ったらすぐに逃げるんだぞ」
上級の先生四人は学長室から去ってい颯達八人にそう言葉を投げ掛けた。
*
魔法学校の上級の生徒を卒業した八人はサギフエの家に入り、執事のオイカワを含めた九人で集まって話し始めた。
「そう言えばあなた……バケダラは私の家に来たのは初めてね」
「うん! 私もムベンガ救出を手伝うことにしたから!」
「バケダラちゃん大丈夫!?」
「私くノ一だから大丈夫!」
「えぇ!? く……くノ一ちゃん!?」
「くノ一……凄いわね」
(バケダラはくノ一だったのか……)
「こっそり系なら任せて!」
「くノ一いるのは心強いわね……」
「じゃあそろそろ……アワビ帝国のに行くための話をしよう……!」
颯は周りにそう提案した。
「アワビ帝国……私は良く知らないからオイカワが調べてくれたわ。周りに教えてあげなさい」
「はい、アワビ帝国はエロ大帝と呼ばれる者がトップに君臨しアワビ城に住んでいます。城下町があって城に入る方法は不明です。これ以上の情報は……」
「大体こんな感じで良いわね」
「雑だな!」
「いくら色々詳しいオイカワでもまじめだからアワビ帝国のことをしっかり言いたくないのね」
(どんだけいやらしい国なんだ……エロ大帝も変な言葉だし……)
「じゃあもう今行こう!」
颯は周りにそう言って立ち上がった。
「行くのは明日よ颯!!」
「すまん……ムベンガのことが心配で……まずみんな今日の疲れを癒やさないといけなかったな……卒業したばかりだから……」
「全く颯は……我慢しなさい……」
「アワビ帝国では誘惑無視の気持ちが大事だな……俺はかなりこたえるが……」
「あなただけよ」
「大丈夫! 俺はムベンガちゃんを助けると思えば女の子達の誘惑には我慢出来るはずだから!!」
「はぁ……アワビ帝国に行く時の作戦について話し合いましょう」
サギフエはそう言うとムベンガを助ける為の話し合いが始まった。
*
一時間後、颯達はアワビ帝国に行くときのことを話し終えた。
「もし助けられたら私の家で祝いのパーティーをしてもいいわよ」
「……思ったんだけどなんでここまでしてくれるの? サギフエって転生者に世界のことについてただ説明する人じゃなかったっけ?」
「私はね……色んな人にエサ撒いて誰からも崇められる存在になって……じゃなくて色んな人に親切にしたいだけよ!」
「願望思いっきり漏れたなサギフエ」
「だけどパーティをしたらそれで終わりよ。その後はお別れしてもらうから」
「え〜! 寂しい! けどサギフエちゃんの仕事あるし俺達がいつもこの家に住むわけにはいかないからなぁ〜……!」
「それにしても偉いよなサギフエは」
「だからムベンガを助けたらすぐ言ってね!」
*
そして次の日の朝、魔法学校上級生徒を卒業した八人はサンゴ町の色んな所に瞬間移動出来るワープ施設に来ていた。
「サギフエ……今までありがとう!!」
颯はサギフエにお礼を言ってお辞儀した。
「サギフエちゃーん!! じゃあまたねーー!!」
「皆頑張ってきてね。必ず帰って来るのよ」
海・爽・颯・凪・潮・ライノ・バケダラの七人は色んな所にワープできるという建物に入って行った。
*
一方、アワビ帝国の城内にいるサソリはケガニと話を始めた。
「魔法都市サザエを調べた忍者からの情報に八人が上級の生徒を卒業したって聞いたよ。凄いね」
「ケガニ……まさかそれだけを言いに私と話をしに来たのか?」
「ふっふっ……勿論それだけじゃないよ。さっき帰ってきた忍者からの話ではその生徒の中にハヤテと呼ばれていた男がいたんだ!」
「ハヤテ……!? まさか……」
「それムベンガちゃんの求めていた颯だとしたら面白くない?」
「同一人物だったらな」
「しかもそいつが来るらしいんですよ! ここアワビ帝国に!」
「上級の生徒を卒業してアワビ帝国に来るハヤテか……可能性はあるな」
*
一方、颯達七人はアワビ帝国にあるワープ施設の中にいた。
「ワープ施設はやはり便利だな。無料で色んな所に飛んで行けるのだから」
「アワビ帝国ってほんとに十八歳以外入れないんだな……変態が集まる帝国か……どんな雰囲気なんだろう……わくわくするぜ」
「部屋の外に出てみよう!」
颯達七人はワープ施設から外に出た。城下町には七割の者は赤毛の者だった。
「なんか髪赤い人が多い気がするな」
「それはね潮。アワビ帝国最初の女王アワビの髪色が赤だったから、みんなその子孫って噂だよ」
「なるほどな……って噂か」
「うわー……露出度高い女性達がうろうろしているな……」
そう言ってとぼけた顔をしている爽は歩いている女性達を眺め始めていた。
「おっぱいぼよよ〜ん……」
「……頭おかしいな大丈夫か?」
「潮……それが爽の正常だよ……」
「お! あの人ノーブラじゃね!」
「爽……ノーブラの人が分かるのか……」
「あっ!! 遠くに城が見えるぞ! あそこだなムベンガちゃんが囚われているのは……!」
爽は遠くにある城を指差してそう言った。
「よし! 昨日話した通り四手に別れて行動しよう! 二時間後みんなここにまた集まろう! みんなサギフエからもらった携帯電話でこまめに連絡し合おう!」
颯はガラケーを手にして周りにそう言った。
「まじでサギフエちゃん優しいよな〜。俺達全員に携帯くれるなんて」
「本当にみんなサギフエに感謝しないといかんぞ」
「まじでありがとうサギフエちゃ〜ん!」
爽は天に向かってそう叫んだ。
颯達七人は海と潮、爽と颯、凪とライノ、バケダラ一人の四グループに分かれた。
「本当にバケダラちゃん一人で大丈夫!?」
「大丈夫! 私はくノ一だから一人の方が動きやすいし!」
(バケダラの動きはかなりのもの……確かにあの動きはくノ一か……)
「分かっているけど心配だな……」
「その気持ちを押し殺すんだぞ」
「みんないいか! とりあえず町の人に聞いていこう! 城に入れる情報見つかったらすぐ連絡頼む!」
颯は大きな声で周りにそう言った。
「バレるぞ颯!」
潮は小声で颯にそうツッコんだ。
「声でかいし……爽と颯のペア大丈夫かな……」
「じゃあみんな行くぞーー……!」
颯は小声で元気良く周りにそう言った。
「颯は小声でもでかいな」
四組は四方向に別れた。
*
海と潮の二人はアワビ帝国全体の西側を歩き始め、潮は海に話しかけていた。
「海はなんで我と組むことになったんだ?」
「……知らん」
「多分名前が二人共さんずいだからだろうな」
潮はそう言ったが、海は無反応だった。
「お前もっと喋れ」
「……今喋る必要は無い」
「会話くらいあっても良いと思うが……まぁ良いか」
潮は一つの店を指差した。
「賑わっている店があるからあそこで聞き込もう」
海と潮は潮が指差した店に入った。店の中では色んな人が楽しそうにイスに座って喋ったり踊ったりしていた。
「いらっしゃいませ……すみませんが年齢はおいくつですか……?」
受付の女の人は潮に顔を近付けて潮を見つめながら潮にそう質問した。
「失礼な! 我のことを子供だと思っていただろ! 我はこの男と同じ十八歳だぞ!」
「あ〜……すみません……どちらにしても酒が無理な未成年は無理なので……」
「そうか! じゃあ帰るぞ!」
潮はそう言って潮は店の外に出ていった。
「あ……! 城に入る方法を聞くの忘れていた!!」
潮は慌てた表情でそう言って店に戻ろうとすると店から海が出てきた。
「店の人は城に入る方法は知らなかった」
「そうか……分かった……すまんな。急に抜け出して悪かった」
「気にしていない」
「そうか……いやもっと気にした方がいいぞ海……他の未成年でも入れる店を探すか……」
海と潮が出ていった店の中で、椅子に座っている一人二十代後半くらいの髪が橙色の男の客に店員が近付いて話しかけた。
「ズワイガニさん……どうかなさいましたか……?」
「あぁ……サソリに呼ばれた」
ズワイガニと呼ばれた男はそう言って立ち上がった。
「俺達四人が揃って呼ばれるらしい……戦争でも起きるんか……?」
ズワイガニはそう呟き、テーブルの上にお金をいくつか置いて立ち上がった。
「釣りは要らねぇ」
「こんなに……! さすがエロ大帝に雇われている傭兵……!」
*
一時間後の凪とライノはアワビ帝国の南側を歩いていた。
「聞いたけどやっぱり簡単には入れないらしいね……」
「そうだね〜」
「ライノって……サギフエの家に住む前に何してたの?」
「いや〜それが全然思い出せないんだよね〜。気がついたら知らない場所で……さまよってたらサギフエに会って……」
「思い出せないってことは記憶喪失ってこと?」
「そうなんだ……!! だからサギフエには本当に感謝しているよ」
(嘘ついているようには見えなかったから本当なのかな……多分……)
「あ、とりあえずあそこの店に入ってみよう」
ライノは一つの店を指差してそう言い、凪とライノの二人はその店に入った。店内は賑わっていた。
「ここは未成年でも大丈夫ですか?」
ライノは店の人にそう質問した。
「すみません……未成年は入っちゃ駄目です……」
(またか……どこに行ったら未成年でも大丈夫な店があるんだろうか……)
凪とライノは店を出た。
「はぁ……未成年が駄目な店が多い……本当に入国出来る年齢が十八歳以上なのだろうか……二十歳以上じゃないのか……?」
「探すしかないよ」
ライノは凪にそう言うと、凪は走っている誰かにぶつかった。
「すみません……」
凪はぶつかった男は二十代後半くらいの髪色が橙で筋肉ムキムキマッチョの男だった。
「んんん!? お前らこの国は始めてだな!!」
「はい……あの……城に入れる方法って知ってますか?」
「あんたら城に行きたいのか!?」
「はい……」
「じゃあ俺についてきな! 俺は城を自由に出入り出来るから連れだと言えば大丈夫だろ!」
「本当ですか……! ありがとうございます。あの……お名前は……」
凪が質問した時、男は何かを思い出した様な顔をした。
「そうだ! サソリに呼ばれてたんだ! 急がねば!」
男はそう言って城がある方向に向かって走り出した。
「俺はタラバガニだ!! また会おう!!」
男はタラバガニと名乗ってその場を去った。
(え……今の人はサソリの仲間だった……? 見た感じ筋肉凄くて相当強そうだった……敵だったらヤバイかもしれない……)
*
数十分後、アワビ帝国城のとある部屋にタラバガニが息切れしながら扉を開けて入って来た。
「ぬおおおお!! ハァ……ハァ……セーフか!?」
「タラバ大丈夫だ。ハナサキとケはタラタラしてて全然来ていない」
その場にいたズワイガニがハナサキガニにそう言った。
「はぁーひぃーはぁーひぃー……!! それで……話ってのは……なんだサソリさん……!!」
「まずは息を整えろ」
タラバガニに向かってそう言うサソリは部屋にあるテーブルの前の椅子に座っていた。
「ケガニは城にいるからすぐ来れるはずだが遅いな。ハナサキガニは……相変わらずだな。とにかくお前ら二人この写真を見ろ」
サソリは一枚の写真をズワイガニとタラバガニに見せた。その写真はアワビ帝国のワープ施設内にいる海・爽・颯・潮・凪・バケダラ・ライノが写ってるものだった。
「この男を連れて来い」
サソリは写真の颯を指差してそう言った。
「こいつが例の颯か?」
「こいつの名前は兄の娘が何度も言っていた男の名と同じ発音のハヤテだ。年齢も同じくらいだろうし、同一人物の可能性は高い。とにかく絶対に捕まえろ」
「ふっ……余裕だな。俺達なら」