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9話 ランクダウン

 アルはギルドに訪れていた。


「すみません。ギルドマスターのカイさんはいらっしゃいますか? 少しお話したいことがあるのですが」


「少々お待ちください。確認をして参ります」


 対応してくれた受付嬢は駆け足でギルド奥へと消えていく。そして1分ほど待っていると戻ってきた。


「アル様ですね。ギルドマスターからもお話したいことがあるようです。応接室にお連れします」


 アルは応接室の場所は知っているため、案内は断った。

 応接室の扉をコンコンと叩くと中からカイの声が聞こえてきた。


「おーう。入れー」


「失礼します。本日はお忙しい中お時間を頂きありがとうございます」


「気にすんな。ちょうど俺も用があったんだ」


「僕に……ですか?何の用でしょうか?」


 ギルドマスター直々に話したいこと。

 何を話されるか身構えてしまう。


「お前も何か話したいことがあるんだろ? お前からでいいぜ」


「ありがとうございます。では、単刀直入に言います。僕の冒険者ランクを1番下まで落として貰えませんか?」


 カイはアルの口から発せられた言葉を理解するのに数秒を要した。


「今ランク下げろって言ったか?」


「はい」


「理由は?」


 分からない。

 カイはアルが何を考えているか分からなかった。

 ギルドをやっていく以上、自信過剰な冒険者がランクを上げろと怒鳴り込んでくることは多々あったが、下げろと言う者は初めてだった。


「僕は今Cランクですが、実際はCランクの実力はありません。デリック達のパーティにいて芋づる式に昇格した結果です」


 一呼吸おいて、アルは続ける。


「そんな実力に見合ってないランクを掲げても何の自慢にもなりません。それに実力が伴っていないのに高ランクの依頼を受けられるのは危険です」


 実力に見合わない。

 それは迷宮でも同じことが言える。


 今回アルがいた迷宮はアルの1人の実力では到底踏破出来るものではなかった。

 ソフィアがいなければ死んでいたのは間違いない。


「デリックのパーティも追放になってしまったので、1度ランクを落として自分を見つめ直したいと思ったのですが……ダメでしょうか?」


「……お前、面白いな」


 カイもアルの言い分は分かった。

 実に理にかなってると思った。

 それでいてアルのような若者がこのような申告を出来ることに素直に賞賛した。


「分かった。本来なら降格はペナルティで行われるものだが、ギルマス権限で何とかしてやる」


「ありがとうございます」


「じゃあカードの変更だな。新しいの作るから今持ってるやつ出してくれ」


 アルは言われた通りに赤いギルドカードをカイに手渡す。

 カイは応接室から出ていくと5分程で戻ってきた。

 その手には灰色のギルドカードが握られている。


「ほらよ。新しいカードだ。Gランクからだが頑張れよ」


「ありがとうございます」


 カイからカードを受け取るとその色に懐かしいものを感じる。

 冒険者ランクは上から順にSABCDEFGとなっており、色で識別出来るようになっている。


 Sならば金、Aならば銀というように色が変わるのだ。

 一番下のGランクではそのカードの色は灰色。

 冒険者なら誰しもが拝むことになる始まりの色だ。


「いや、まさかランクを下げろと言うやつに出くわすとは思わなかった。他の国でもないんじゃないか?」


「上げろという方はたくさんいるのですか?」


「たくさんいるぜ。何せ、昇格の条件が一定ランクの依頼を一定数こなすことだろ? ちまちまやるのが嫌いな短気な奴ほど直ぐに文句を言ってくる」


 冒険者ランクの昇格は基本的には依頼をこなした数で決まる。例えばGランクからFランクにあがるにはGランクの依頼を10回、またはFランクの依頼を5回こなす必要がある。

 この回数はランクが上がる度に増えていき、高ランクになればなるほど上がりにくくなるのだ。


「僕はコツコツゆっくりやっていきますよ」


 焦る必要はない。

 せっかく魔術を使えるようになったのだ。

 色々と試しながら、力を蓄えていく予定である。


「では、今日はありがとうございました。僕は依頼を受けにいきますね」


 自身の要件が終わり、新しいギルドカードを貰った事でテンションが上がったアルの頭からはすっぽりと抜け落ちていることがある。


「では失礼します。」


 アルは一礼して応接室から出て行こうとする。


「おい待て。まだ俺の話が終わってねえ」


「あっ」


 忘れていたのはカイの話である。


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