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56話 最深部

「どのくらい進んだのでしょうか? 心なしか魔物達も強くなっているような気がしますわね」


「もう最深部近くだよ。終わりも近いね」


 フィデリアは少し呼吸を乱しながら呟いた。

 疲労もそろそろ溜まる頃だ。

 レイチェルは相変わらずのポーカーフェイスだが、それでも集中力を乱して魔術行使に失敗したりと疲労は隠せていない。


 そして最深部へ近付くにつれて相対する魔物も強くなっている。

 今まで先制で魔術を打ち込むだけで倒せていた魔物達もそうはいかなくなり、追撃や反撃に意識を割かなければいけくなった。


 対応はできているものの、魔力消費並びに体力の消費も増えている。


「ね、だからこれを使っててよかったでしょ?」


 アルは自分の手にあるランプを揺らしてみせた。

 魔力を節約するために使っていたが、初めはそのことに納得がいっていなかったレイチェル。

 だが今はどうだろうか。

 実際に体力、魔力を失いつつある今、迷宮の初めから自身の魔力で暗い道を照らしていたらと思うとぞっとするものがある。


 これは迷宮攻略に慣れていなければ容易に起こる初歩的なミスだ。

 だが今まで幾度となく迷宮に潜り、一方的だったとはいえ仲間のために尽くしてきたアルにとっては分かり切ったことだった。


「さて、二人はお疲れのようだけどどうする? そろそろ帰る?」


 内包する魔力は平均的なフィデリアと平均より多い魔力を持つが使用する魔力の消費が大きいレイチェル。

 まだ満身創痍というわけではないが、動きは確実に悪くなっている。

 あと使用できる魔術も両手で数えられるほどならば、撤退も視野に入れた方がいい。


 だが今アルがはっきりと口にした。

 攻略目前であると。

 ここまできて諦めの悪い二人が何と答えるかなんて聞くまでもなく否だ。


「まだいけますわ。ここまできて帰るなんてもったいない」

「私も。せっかくいい感じなんだから」


 二人は好調だ。

 思うように立ち回れて、魔術の調子もかなりいい。

 優秀な参謀の指示に従っていればすべてがうまくいくと感じるように、アルの幅広いサポートは二人の本来の実力、もしくはそれ以上のものを引き出していた。


「分かった。じゃあ最後まで頑張ろうか」


 アルは自身も戦闘に参加する旨を伝えて、なおもこれまでと同様にサポートもこなす。

 アルの索敵は迷宮内の魔物の存在を手に取るように把握できる。

 マッピングで得た情報と照らし合わせて、避けられそうな敵は避けながら、進んでいく。


 それでも避けられない敵とは戦うしかないが、この迷宮に潜るために編み出した魔術があればどうということはない。


水の天獄(ブルー・ヘブン)!」


 手のひらから溢れ出す水が変幻自在に形を変えながらゾンビにまとわりつく。

 水も神聖属性も苦手とするアンデッドには効果は絶大で、まるで溶けるかのようにゾンビは消えていく。


「これは……スケルトンかな。それも、かなり強そうだ」


 最短で迷宮最深部の大部屋の前に辿り着くと、中を索敵で伺って呟いた。


「これを倒せば制覇だ。僕が前を張るから二人は普段通りに動いてくれて大丈夫。疲れてるかもしれないけどこれが最後の戦いだから頑張ろう!」


 迷宮制覇を目前にして士気が高まる。

 アルは大きな扉を押し開ける。

 そしてカタカタと不気味に笑う大きな骨の魔物と対面した。


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