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54話 いざ、迷宮へ

 いよいよ迷宮に潜る日がやってきた。

 準備も念入りに行った。

 パーティにおける役割分担や、様々な状況での対処の仕方なども確認を重ねた。

 あとは攻略するだけだ。


「楽しみだな」


 その入口を見つめてアルは声を漏らした。

 迷宮は何度も行った。

 だがそれは自分の力でではない。


 仲間と協力して踏破するからこその達成感もある。

 今回はそれを味わうために、気合いを入れる。


「二人も忘れ物はない?」

「大丈夫ですわ」

「問題ないよ」


 こちらは正真正銘初迷宮のフィデリアとレイチェル。

 だが二人に緊張はなく落ち着いている。

 初めてといえどこの迷宮はさほど難易度は高くない。

 遭遇する魔物はアンデッドばかりなため、パーティとしての相性も大幅に有利だ。


 そして何よりアルの存在が彼女達を支えている。

 多少の問題事は彼の前ならどうということはない。

 困った時でもアルなら何とかしてくれる。

 そのような強い信頼が彼女達が落ち着き払っている理由でもある。


 不安はなく、新しい冒険へのワクワクで心が躍る彼らは意気揚々と迷宮の入口を通り抜けた。


 ◇


「い、意外と暗いのですね……」


 光を放つランプを片手にフィデリアはボソリと呟いた。

 辺りを照らして多少の視界は確保出来ているとはいえ、薄暗く心無しか空気も淀んでいる。


「ちょっとジメッとしてて気持ち悪いかも」


 レイチェルも不快そうに口を曲げる。

 確かにそこはジメジメとしており、いかにもといった雰囲気だ。


「そういえばなんでランプ使ってるの? 私かアルが光で照らせば良くない?」


 レイチェルが不思議そうに尋ねた。

 そう思うのも無理はないだろう。

 自分の力で解決できるなら道具の力に頼る必要なんかないのでは、と思ってしまうのも仕方ない。


 レイチェルからしてみれば小さいとはいえ活躍の場を一つ奪われたような形だ。

 むぅとむくれているレイチェルにその単純明快な理由をアルは真剣に伝えた。


「魔力は温存できるなら温存した方がいい。道具で補えるところは道具に頼る。僕達は魔術師パーティなんだ。肝心な時に魔力が切れて戦えませんだと話にならないからね」


 魔力切れによる戦闘不能。

 魔術師における最大のピンチ。


 リーシャの研究所でおこなっていた特訓では魔力が切れても部屋に帰って休むだけで済んだが、ここではそうもいかない。

 どれだけの敵と遭遇するか定かではないため、自身の魔力の使用配分を考えて行動する必要があるのだ。


 純粋な魔術師ならば戦闘時に否が応でも魔力を消費する。

 それに備えて無駄な魔力消費はさせないように慎重に立ち回る。


「ですがまだ魔物と出会いませんわね」


 フィデリアは意外そうに呟く。

 未だ魔物とは遭遇していない。

 これに関しては完全に運の問題だ。

 運が良ければ一度も魔物に出会わないこともあるだろうが、そんなのは稀で滅多に起こらない。

 アルの索敵は既に敵と鉢会う事を告げていた。


「次の曲がり角を左、そこに三体いるよ。これは……グールかな」


 まだ視認できない曲がり角の敵を言い当てるアル。

 二人もその言葉に疑いはなく、気を引き締めてそっと動き出す。


 壁伝いに沿うように移動し、アルの言う方向を覗くと確かに魔物がいた。

 人型ではあるが肉が剥き出しになったような不気味な身体を揺らしながらカクカクと動いている。


 フィデリアがレイチェルに目で合図をすると二人は飛び出し、魔術を行使する。


「ウインドカーテン!」


 フィデリアは三体のグールを囲い込むように、風の壁を展開する。


「……シャインボール」


 そして狙い撃つようにレイチェルは光球を放つ。


 元々動きも鈍く、距離をとって戦えば何の問題もないグール。

 不意打ちが突き刺さり、完全に退路も絶たれた三体に弱点の光が降り注ぐ。


 眩い光が収まると、そこには球の形に身体を抉られたグールが倒れ伏していた。


「さすがですわ」

「いえい」


 ハイタッチを交わすフィデリアとレイチェル。

 アルはそれを賞賛した。


「二人とも凄いね」


 フィデリアの好アシスト。

 そしてレイチェルの光属性魔術。

 さすが神聖属性魔術を扱えるだけあって、その元になっている光属性の練度も高い。


「これなら僕は完全にサポートに回ってもいいかもしれないね」


 元々索敵や戦闘における指示などは視野の広いアルがおこなうつもりであったが、戦闘にも介入するつもりだった。

 だが自身の戦闘参加で二人の連携の邪魔をするのは得策でないと感じたアルは暫くは様子を見ることにした。


「この調子でどんどん倒していこうか。僕は索敵と支援に専念するから二人は存分に力を奮ってくれ」


 特訓の成果を披露したいフィデリアと、自慢の神聖属性魔術で活躍したいレイチェル。

 二人は力強く頷く。


 同じサポートでもかつておこなっていた事とは天と地ほど違う。

 アルも信頼できる仲間に頼りにされ、役に立てることに喜びを覚えていた。


「よし、次はこのまま真っ直ぐ行って右に曲がったところに二体。積極的に倒していこう」


「はい、ですわ!」

「おー」


 迷宮攻略はまだ始まったばかり。

 異色なパーティは楽しそうに、軽やかに歩を進める。

☆☆☆☆☆

いいや!!限界だッ!!押すね!!今だッ!

カチッ


★★★★★



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