53話 交換
Twitter、活動報告にて書籍情報を公開しました。
タイトルを異端のユニークメイカーから、二度追放された魔術師は魔術創造〈ユニークメイカー〉で最強にへと改題。
MFブックス様より4月25日発売予定です。
互いの目的を果たし再び集まろうとする三人。
一足先に外へ出ていたアルに今しがた店から出た二人が駆け寄ってくる。
「お待たせしましたわ」
「ごめん、待った?」
「僕もさっき出たところだよ。二人は何かいいものを見つけられた?」
待ち時間もそれほど長くなかった。
適当にごまかしながら二人の収穫を尋ねる。
「この店は品ぞろえも多くて迷ってしまいましたが、何とか決められましたわ」
「うん。この店、気に入った」
アル自身よくは知らない店ではあったが、二人に喜んでもらえたことで少し安心した。
「えっと、それでなんですけど……」
フィデリアは少し恥ずかしそうに綺麗に包装された小さな箱を両手に乗せて差し出した。
「これは?」
「二人でアルにと思って買ってきた。サプライズプレゼント。受け取って」
もごもごとしているフィデリアの代わりにレイチェルが説明する。
アルは驚いたように少し目を見開いた。
まさか二人も同じ事を考えていたとは思いもしなかったアルはふふっと笑いを零した。
「どうしたの?」
「いや、まさか二人も同じ事を考えていたとは思わなかったんだ」
そう言ってアルは同じく綺麗に包装された箱を二つ取り出して二人に差し出す。
「実は僕も二人にプレゼントを用意してたんだ。はいこれ」
一つをレイチェルに渡し、空いた手でフィデリアの持つものを受け取る。
そして未だにお皿の形を作るフィデリアの両手の上にフィデリアへ用意した物を優しく乗せた。
「プレゼント交換になっちゃったね」
アルはフィデリアの手から取った箱を見て笑った。
二人もアルから受け取った箱とお互いの顔を交互に見て嬉しそうに笑う。
「開けてもいいかな?」
「開けてもよろしいですか?」
「開けるね」
三人の声は重なる。
再度笑いが起きる。
そして三つの箱は同時に開かれ、シルバーリングと色違いのブレスレットが顔を見せる。
もはや効果などを確認するまでもなく、身につける。
せっかくの贈り物を装備しないなんて選択肢はありえない。
「似合ってるよ」
赤と青。
色違いの輝きを持つ宝石が彼女達の手首で光る。
「ありがとうございます」
「ありがと。これの効果は?」
二人は褒められたことにお礼を言う。
そして遅ればせながらこのブレスレットの持つ力の内容を尋ねた。
「フィデリアの方が火属性魔術の消費魔力軽減、レイチェルの方が水属性魔術の消費魔力軽減だよ。どちらも二人が最も得意とする属性に対応したものではないけど使ってくれると嬉しいかな」
アルが彼女達の得意な属性に対応したものを選ばなかったのは今後を考えての事だ。
洗練しきれてなく伸びしろが多いからこそ、たくさん練習してもらいたい。
そんな願いを込めた贈り物だが、その思いは確かに彼女達に届いただろう。
「大事にしますわ」
「水属性、頑張るね」
そして三人は示し合わせたかのようにそれらを身に着ける。
アルは指に、フィデリアとレイチェルは手首に通すと、それを眺めてはにかんだ。
これは必ずしも必要というわけではない。
余計な出費といってしまえばそれまでだ。
だが、これから行う予定の迷宮攻略に向けて士気が高まる。
そういった意味ではパーティの絆を深め、やる気を上げる良いプレゼント交換になった。




