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52話 選択は慎重に

 一方のアル。

 彼もまた真剣にフィデリアとレイチェルへ送るプレゼントを選んでいた。


 女性に送るプレゼントとして相応しく、かつこれから共に行動するパーティ仲間へ送る装備品としての機能を兼ね備えたもの。

 かくして二手に分かれてはいるものの、互いに思うこと、考えることは一緒だ。


「どうしようかな?」


 彼もまた彼女達と同じ魔術師を名乗る。

 しかし彼は自分が普通ではないことを自覚している。

 故に自分の感性に従っては彼女達を満足させる物を選ぶことは出来ない。

 直感がそう告げていた。


 とはいえアルが渡すプレゼントならなんでも喜んでくれそうではあるが、せっかくならそれを身につけ実用してもらいたいというのが本心だ。

 何の役にも立たない、あるいは装備するに値しない物を送ることだけは絶対に避けたい。


(ソフィアはどう思う?)


(ご主人、それはないですよー。よりにもよってほかの女性に渡すプレゼントの相談を私にするとか……ちょっとひどくないですか?)


(えっ? そ、そうだよね。ごめん)


 豊富な知識と抜群の分析力。

 それをあてにして尋ねてみたのだが、それはソフィアの機嫌を損ねてしまいかねないものだった。

 今は姿形を持たない彼女だが、女の子であることを申告している。

 彼女には自我があり、感情がある。

 当然嫉妬もする。


(……というかそれ私に聞く必要ないですよね)


 聞きようによっては怒って拗ねているかのようにも思えるこの発言。

 しかし、それは意地悪をするためだとか、もっと構ってほしいとかそういった類のものではない。

 単純に本心からくる発言だ。


(彼女達についてはわたしよりご主人の方が詳しいじゃないですか。それに初めて渡すプレゼントくらい自分で選び抜かないとだめですよ!)


(……そういうものかな?)


(そうです! 女の子はそういうところに敏感ですよ!)


 目的のアドバイスは得られなかった。

 だがそれ以上に価値のあるアドバイスをもらえたかもしれない。


 あてにできるのはそれほど長くないながらも彼女達と過ごしてきた時間。

 その中に隠されている情報。

 どんな些細なことでも彼女達の個性につながるヒントになる可能性を秘めている。


「フィデリアは風、最近は火も多いな。レイチェルは言うまでもなく光だよね」


 それは分かっている。

 一度戦い、共に行動をした。それだけで分かる。


「かといって対応した属性を補助するものに至るのは少し安直な気もするしな……」


 ならばどうするか。

 得意を伸ばす方向でないならば苦手を補う。


「フィデリアはこれといって苦手そうなことはなかったけど……して言うなら火の魔術に無駄が多いくらいかな」


 彼女は基本的に魔術の扱いに長けている。

 でなければ雷属性などといった扱いの難しい魔術を使うこともできない。

 だが、最近多用するようになった火の魔術はそうもいかない。

 風の魔術とは扱いも違うし、まだまだ制御しきれていない部分も多い。


 火力の振れ幅も大きく安定していないし、コントロールもまだ甘い。

 それでは使用する魔力の量も多く、魔力切れを助長する原因となってしまう。

 それを補うための魔道具があれば……そう思いアルは一つのブレスレットを手に取った。


 燃える炎のような赤い宝石が一つ、存在感を放っているブレスレット。

 その効果は火属性魔術使用時の消費魔力を少なくするというものだ。

 フィデリアはいずれ自身の努力で火の魔術も制御できる。

 そう確信しているからこそ、威力やコントロールを補助する物ではなく、消費魔力量を抑えるこれを選んだのだ。


 そして同時にレイチェルに送るものも決まった。

 フィデリアに送るものと色違いのブレスレット。

 青い宝石が輝いている。


「レイチェルには水属性を伸ばしてもらいたいね」


 効果も同様、フィデリアのものの火を水に置き換えるだけだ。

 彼女にとって水属性が苦手かと言われればはっきりしない。

 それでも得意な光属性、神聖属性に比べれば一歩劣るのは間違いないだろう。

 だがレイチェルが水属性魔術を安定して使えれば戦術の幅は更に広がる。


 そしてその二つは同じデザインの色違い。

 姉妹のように仲良くしている彼女達ならきっと喜んでくれると願って決めたのだ。


「喜んでくれるといいな」


 アルはちらりと店の奥を見る。

 そこにはあれこれ手に取って魔道具を見ている二人がいた。

 アルは彼女達に見つからないようにそそくさと会計を済ませ、静かに店の外に出て待っていることにした。

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