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51話 マジックガール達のサプライズ

 フィデリア達はアルから離れて自分達の買い物をしている振りをしながら彼のプレゼント用のものを見ていた。


「アルくん、どういうものを喜んでくれるでしょうか?」

「アルならなんでも喜んでくれそうだけど」

「それはそうですが……せっかくなら見た目も良くて効果も合う物をあげたいですわ」


 見た目重視。効果重視。

 はたまたそのどちらもを兼ね備えた物か。

 いずれにせよ最終的に手に渡るのは自分ではない。

 それが簡単に決められない理由であり、真剣かつ楽しみながら選べる理由でもある。


「それだったら基本的に私達が好きそうな物がいけそうだけどどう?」


 三人の共通点。

 それは魔術を主な攻撃手段としていること。

 故に魔術師としての感性に従えば、自ずとアルの好みと一致するはず。

 レイチェルはそう考えて提案した。


「それはそうですけど、ちょっとひねらないといけないのではないですか?」


 普通ならばそれで良かっただろう。

 自分達魔術師がもらって嬉しい機能的な物であればきっとアルも喜んでいた。

 だが彼は普通ではない。

 普通の魔術師と呼ぶ事を彼女達は認めない。


 その理由はアルの力であり、戦闘スタイルだ。

 魔術師というのは基本的には後方支援、味方のサポートありきで、中遠距離を得意とし、近距離はあまり好まない。

 だがアルは違う。

 翼の魔術で積極的に肉薄し、手の魔術で叩き潰す――という戦法も取れる魔術師だ。

 かといって中遠距離の攻撃が苦手という訳でもなく、攻撃の精度なども高い。


「とりあえず杖とかそういうのは邪魔になりそうだからなしかな」


 だからこそ大抵の魔術をメインに扱う者が手に携えている杖などは真っ先に選択肢から外れる。

 それはアルには必要なく、レイチェルの言ったようにむしろ妨げになる可能性の方が高いからだ。

 その杖が持つ効果次第では持つメリットも存在するかもしれないが、それは他のものでも代用できる。


「ではどんな効果のものがいいと思いますか?」

「シンプルに属性補助……がいいんじゃないかな」


 属性補助とはその名の通り特定の属性の魔術の照準精度を上げたり、威力を高めたりする。

 特に重要視されているのは照準の方だ。

 魔術に限らず攻撃はどれだけ威力が高かろうと当たらなければなんの意味もない。

 杖には多少なりともそれを補助する効果があり、そのような効果を持つリングやネックレスなども存在するのだ。


「アルくんはよく火の魔術を使っていますわね。でしたら火属性補助がいいでしょうか?」

「それでもいいけど……私は光がいいと思う」

「光……ですの?」


 レイチェルは光属性を推した。

 その理由はパーティのため半分、自分のため半分だろう。


「これから私達が潜る迷宮はアンデッドの住処ってアルが言っていたし、光属性は強化しておいて損は無い」


「……本当は?」


「……アルに光属性、神聖属性の魔術を使わせてそれを観察する」


 こういう所は強かだ。

 密かに自分の為になるように立ち回るレイチェルは普段はパッとしないことの方が多いが、実は頭が切れるのだ。

 とはいえ表向きの理由も本心であることは変わりない。

 アルの実力に不安はないが、万が一自分に何かあった時にそれを助けるのはアルなのだ。

 備えはいくらあっても問題ない。


「まあ、そういうことなら……」


 フィデリアも納得ができる理由だったため文句はない。

 三人という平均以下の人数、しかも全員が魔術師という珍しい組み合わせ。

 一人一人が出来ること、得意なことは多い方がいいに決まっている。


「光属性の補助ということは……この辺の、このリングはどうです?」


 フィデリアが手に取ったのはシンプルな指輪型の魔道具。

 凝った装飾もなくシンプルなシルバーリングだが、所々が白い煌めきを放っている。


「いいと思う」


 異論はなく、このリングに決まった。

 その後は素早く会計を済ませ、プレゼント用の包装をしてもらい、アルが店の外にいることを確認して外へ出た。


「喜んでくれるでしょうか?」

「大丈夫。絶対喜ぶよ」


 あとは渡すだけ。

 二人は一瞬立ちどまり顔を見合わせると、アルの方へ駆け出した。


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