50話 お買い物
マルコが自分達を諦めていないことなど露知らず、フィデリアとレイチェルは観光を楽しんでいた。
迷宮に潜る前の下準備、という名目のお買い物だ。
今は魔道具店に入り、あれこれ見ている最中だ。
「アルくん、このブレスレット型の魔道具、いいと思いませんか?」
「うん、綺麗だね。フィデリアに似合うと思うよ」
フィデリアが手に取っていたブレスレット型の魔道具はシンプルな装飾だが、散りばめられた緑色の小さな宝石が綺麗に輝いている。
「アルくんは何か興味があるものとかないのですか?」
アルは先程からフィデリアやレイチェルが手に取るものばかりを見ていて、自分用のものは探していない。
その事に気付いたフィデリアはすかさず何かお気に召す物がないか尋ねる。
「うーん。こういう所で魔道具を見るのも初めてだからよく分からないんだよね。前はそういうの見る余裕もなかったし」
アルはいわゆる装備品の類には疎い。
今でこそオシャレで高性能な冒険者服を着てはいるが、以前はそんなことありえなく、ましてや装飾品なんて論外だった。
「二人とも、何の話してるの?」
そこに自由に店を歩き回って物色していたレイチェルが戻り会話に加わった。
「アルくんが自分の物を選ばない訳を聞いていたところですわ」
「……そういえばさっきから私達の取ったものを見てるだけだね。面白い?」
「僕は楽しめてるよ。お洒落な物ばかりだから見ているだけでワクワクするよ」
アルは先程からそればかりだ。
レイチェルはそんなのつまんないじゃんと口をとがらせているが、アルの認識は変わらない。
しかし、本人がいいと言っていても自分たちだけが楽しんでしまっていることを申し訳なく思っている二人はアルから少し距離を取って聞こえないようにひそひそと何かを話しだした。
「どうしますの?」
「これは言っても考えは変わらなそう」
「いっそのこと私たちでアルくんに良さそうなものを選んでプレゼントするというのはいかがですか?」
「いいね。それ採用」
プレゼント。
アルが選ばないなら自分達で選んでしまおうという考えだ。
「みんなで一緒に見て回ってもいいけど、せっかくだから秘密にしよう」
「ということはアルくんとはここで別行動ですわね」
「うん。お会計の時だけ見られないように気をつければ大丈夫」
フィデリアとレイチェルは顔を見合わせて頷いた。
そして作戦会議を終えると、アルに向き直り色々見て回ると言って自然に離れた。
アルも女の子だけでしたい買い物もあるかと思い、無理について行くことはせずゆっくりと物色し始めた。
「あ、これとかレイチェルに似合いそうだな」
だが手に取ったものを見て思い浮かべるのは、それを装備した自分ではなく仲間の姿だ。
「そうだ。せっかくだし二人に何かプレゼントしようか」
結局考える事はお互いに同じ。
互いがそれに至る動機は違うが、これは互いに信頼し、思いやりがあり、絆がある証拠だ。
「二人の能力にあった物がいいから、じっくり見ないとね」
アルは二人のステータスを考慮した上で、魔道具を見始めた。
装飾品として彼女らに似合うかどうかだけではなく、魔道具としても効果も彼女たちの役に立つ物にしたい。
そんな思いで真剣にプレゼントを選び始めるのだった。




