45話 からかい
アル達は何事もなくナビルスへと到着した。
道中で盗賊に襲われるなどといったトラブルに見舞われることも無く平和な時間を過ごした。
特に用事がある訳でもないが、流れでカイ達に着いていきギルドへと訪れた面々。
「おーう。てめえら、帰ったぞー。しっかりやってたかー?」
カイは勢いよくギルドの扉を開くと、中にいる冒険者、並びにギルド員に戻った旨を伝える。
このようなアットホームな様子がこのギルドの売りでもある。
そのためギルドマスターのカイの帰還は、事実に家にお父さんが帰ってきたかのような安心感を与える。
「カイ様、ディアナもお疲れ様でした。」
カトレアは会議から戻った二人を出迎える。
そしてその二人の後ろにいる三人、正確にはそのうちの一人の男の姿を見て少し驚いた顔をしたが、すぐに微笑んだ。
「アル様も一緒に戻られたのですね」
「はい。お久しぶりですカトレアさん」
カトレアの口から聞こえた名前と聞き覚えのある声にギルド内の冒険者はカイ達を押しのけてアルに詰め寄った。
「おお! アルじゃねーか!」
「どうした? 寂しくなったから帰ってきたのか?」
「バカ! 寂しがってたのはお前だろ」
「元気にしてたか?」
口と同時に体も動いてしまう男共に囲まれ、バシバシと頭や背中を叩かれるアルはどこか嬉しそうだ。
「アルくん、久しぶりね」
「ちゃんとご飯食べてる?」
「ディアナが迷惑かけなかった?」
ギルド員の女性陣や女冒険者達もアルと接点がある者は男共と比較すると控えめなのだが、アルに続々と声をかける。
そんなアルの人間関係の深さ、もとい築いた信頼関係を目の当たりにしたフィデリアとレイチェルはただただ驚くばかりだ。
「アルくんの魅力を考えれば当然ではありますけど、凄いですわね」
「これはびっくり」
そして入口近くで固まっている二人もついに注目を浴びる。
「お、おい! アルが可愛い女の子連れていたぞ」
「何っ!? ほんとだ。美少女じゃねえか」
「しかも二人いるぞ」
「どっちが本命だ?」
アルが王都から戻ってきたかと思いきや、女連れで帰ってきたのだ。
当然、そのような反応をされる。
「えー、アルくんの彼女?」
「二股ですか?」
アルとフィデリア達は質問責めにあう。
こんなにもたくさんの人に同時に質問され、何から答えていいか分からずに慌てふためいているフィデリア達に変わってアルが何とか説明を試みるも、推測がさらなる推測を呼び、話はどんどんねじ曲がっていく。
「おい! おめーら! 久しぶりではしゃぐのは分からんでもないがあんまりアルを困らせるなよ。そこの嬢ちゃん達は今のアルのパーティメンバーだ。勧誘しようとか考えるんじゃねえぞ」
なかなか話が通じず困り果てていたところで鶴の一声。
ギルド内に響き渡るカイの一言で騒ぎはあっという間に静まった。
アル自身もこれがただのからかい、イタズラのようなものだと分かっているので特に何も言わずにふぅと息を漏らす。
「カイさん、ありがとうございます」
「何、うちのヤツらのせいで嬢ちゃん達を困らせるわけにはいかないからな。戻って報告でもされてみろ。リーシャのやつが怒ると怖いぞ」
「……そうですね」
一度リーシャの本気を身をもって体験したアル。
過去にパーティを組んでいたカイ。
どちらもリーシャの恐ろしさを理解しているのだ。
「助かりましたわ」
「アルが人気者すぎて困る」
大勢の冒険者達にもまれた彼女達はげんなりとしている。
そんな中カトレアが心配そうな顔で話しかけてくる。
「あの、すみません。おふたりはアル様のパーティメンバーということでよろしかったですか?」
「えっと、はい。まだ正式な手続きはしてませんが」
「そうですか。それでは正急に手続きを済ませてしまいましょう。でないと……目をつけられてしまいます」
「……?」
その言葉の真意が分からないアル達は焦るカトレアを不思議そうに見つめる。
「なんかあったのか?」
自身がギルドを開けている間に何か問題があったのか尋ねるカイ。
「はい。実は……」
そう説明しかけたところで彼女はため息をついた。
「すみません。どうやら遅かったようです」
何事にも顔色ひとつ変えずに仕事をこなすカトレアだが、珍しく嫌そうな顔をしている。
そしてその視線は開いたギルド入口に向いていた。
ただいま書籍化作業中です。
詳しいことは発表でき次第、活動報告とTwitterにて告知していきます。
お気に入りユーザの登録、Twitterのフォローよろしくお願いしますm(*_ _)m




