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22話 翼

 今回起こった依頼ランクの偽装はザルバの単独犯との事だが、タール村としても重く受け止め、このようなことは二度と起こさないということを、謝罪とともに約束したようだ。


 なんでもアルの脅しが効きすぎたのか、カイのもとに現れたダリル一行は綺麗な土下座を見せつけ、カイを圧倒する程に謝り倒したらしい。


「あと、これ。村長から預かったもんだ」


 カイから受け取った袋には金貨が入っていた。


「これどうしたんですか?」


「村長がシャドウウルフの討伐の依頼料聞いてきてよ。レッサーウルフ討伐依頼の差額と残りは迷惑料だってよ」


 あくまでもアルが受けたのはレッサーウルフ討伐の依頼だ。

 依頼料も先払いなため貰えた報酬も当然割に合わない。


「こんなの受け取れませんよ」


「いいから貰っとけ。村長もお前に感謝してたぞ。見捨てずに助けてくれてありがとうだとよ」


 そういうことならと渋々ながら受け取るアル。

 だがその表情はどこか嬉しそうだった。


 ◇


 場所は変わってここは薬草の群生地。

 アルは一面に広がる緑色を眺めながら、シャドウウルフ戦を振り返り、自分に足りないものを考えていた。


「周りへの被害を最小限にか……」


 色々と準備不足があったのは否めないが、1番の反省点はそれだ。

 大規模魔術を使えない場所での戦闘にアルはめっぽう弱かった。


 今後も同じような状況での戦闘がないとは限らないため、対策を練るのに必死である。


「ハンド系の練習が必要か…」


(どれだけ強力でも当たらなければ倒せませんもんね)


 アルは今現在、悪魔の手(イーヴィル・ハンド)紅蓮の手(ボルケイノ・ハンド)氷結の手(アイシクル・ハンド)という3種のハンド魔術を使っている。

 だがその強力な魔術も敵に当たらなければ意味が無い。

 今まで当てる練習をする必要がなかったため、シャドウウルフ戦で無様を晒す事になってしまった。


「あとはなんだと思う?」


(ご主人は普段、熱風なり吹雪なり風に頼りすぎなんですよねー)


 ソフィアの指摘通りである。

 アルは普段から熱風、吹雪を多用し、大した苦戦もなく魔物を葬ってきた。

 それを使えないとなると、戦闘の幅が一気に狭まる。


(いっそ翼で殴ってはいかがですか? エネルギーは風として放つのではなく衝撃(インパクト)する瞬間に放出する形で)


「どういうことだ?」


(ほら、あるじゃないですか?突いたり叩いたりした瞬間に爆発する槍とかハンマーとか。そういうイメージで翼を使ってみてはどうですか?)


「なるほど。それは悪くないな」


 実際、そういう魔道具は存在する。

 それを真似てインパクトの瞬間に爆炎や冷気が発生するように翼で殴る。

 アルはその案を気に入り、早速試して見ることにした。


灼熱の翼(ヒート・ウイング)


 炎の翼を携えて、近くにあった木をぺちぺちとはたく。

 そして大きく振りかぶって殴った。

 アルは翼が木にヒットする瞬間に普段は熱風として放っていたエネルギーを一点に込めた。


 爆音が響いた後、木は上下に別れ崩れ落ちる。

 翼が当たったところは、まるで削り取られたかのような跡が残り、プスプスと音を立てていた。


(広範囲に放っているものを一点に集中させるとこうなりますか。瞬間火力だけで見ると断トツですね)


「これなら使えるか……」


 折れた木は1本のみで、周りを薙ぎ倒したり、引火させたりといった形跡は見られない。


(魔術が内包された武器みたいに使えますね)


「武器……ね。じゃあ単純に剣みたいな翼も使えるかもしれないな」


 ソフィアの一言から弾き出された案。

 翼を剣として扱う戦法だ。


「えっとここをこうしてっと」


 立ち上がったアルは背中に白い翼を展開させるとそこに魔力を込めて硬質化させていく。


「こんな感じかな」


 見た目は柔らかそうな羽だが切れ味は抜群だ。

 そこに生えている木に向かって突き立てるようにするとスパッと抵抗も無く通過し、綺麗な切断面を見せた。


「凄いな。武器としての性能は十分だ」


 アルはそれからその翼に伸縮自在や軽量化、自己再生などの魔改造を納得がいくまで施した。


天使の翼(エンジェル・ウイング)


 天使の翼を体現したかのような純白の翼。

 その美しい仕上がりにアルも満足している。


「魔物はいるかなー?」


 試し斬りをするための獲物を探すために反響(エコー)を発動する。

 近くにボアの反応がある事を確認すると、飛び上がり猛スピードで接近する。


 地上に降り立つことなくそのままの勢いですれ違いざまに斬りつける。

 少し浅いがボアの身体には切り傷ができ、血がポタポタと流れ出ている。


「ブモオオオ!!!!」


 空中で体勢を立て直し、痛みに叫んでいるボアに向き直ると、翼を伸ばしてボアに突き刺す。


 ザシュッという音と共にボアは動きを止める。

 そこを狙ってムチのように振るわれた翼がボアの首をはねる。


「うん。まだまだ扱いきれないところはあるけど便利だね」


 翼にべっとりとついた赤色を払い落とす。

 そして再び魔物のいる方向に飛び立つ。

 新しい翼を気に入ったアルはその性能を確かめ尽くすべく、魔物を倒し続けた。

 アルが魔物を倒すのを止めた時には、その美しい純白の翼は返り血で染まり赤黒くなっていた。


改定前に白金の翼という表記をしていましたが、白金が思いの外脆いものだったので…

とりあえずいいのが思いつくまで天使を置いておきます。

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