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20話 苦戦

 先に動いたのはレッサーウルフだ。

 浮いているアルを引き摺り落とさんばかりに跳びかかる。


 シャドウウルフが指揮しているおかげか、その動きは連携が取れており、アルも防戦一方だ。


 これもアルの慢心が生んだ隙だった。

 今まで相手にしてきたゴブリンやボアのような魔物は空から攻撃していれば安全だった。


 そのためアルには空中にいれば一方的に攻撃できるという思考が根付いていた。


 しかし防戦一方。

 アルは飛び交う狼たちを躱すので精一杯だ。


「くそっ、水獄の堅牢(ブルー・ジェイル)


 苦し紛れに発動させた水獄の堅牢が1匹のレッサーウルフを捉えたーーかのように思えたが素早い動きで抜け出されてしまう。


 アルは焦っていた。

 自分の犯したミスに気付いてしまったからだ。


 アルは敷地内での戦闘をまるで想定していなかった。

 いつもなら翼を横薙ぎに払って風を巻き起こせば何とかなったが、ここは村だ。


 家があり、住んでいる村人がいる。そんな中で熱風や吹雪を巻き起こせるわけが無い。


得意の安全圏からの攻撃を封じられ、ウルフ共の攻撃範囲(テリトリー)に入ることを強いられているからこその苦戦なのだ。


(くそっ、村に被害を出さずに攻撃するのはしんどいな)

(ご主人、落ち着いてください。私も手伝うので()()、使いましょう)


 ソフィアがアルに案を授ける。アルはその意図を瞬時に読み取り行動に移す。


悪魔の手(イーヴィル・ハンド)氷結の手(アイシクル・ハンド)


 アルはを悪魔の手(イーヴィル・ハンド)生み出し、その制御をソフィアに預ける

 そして、自身は氷結の手(アイシクル・ハンド)を操り、地面に突き立てていく。


 ソフィアに預けた手は、ウルフの持ち前の素早さで避けられてしまう。

 幾度となくその手は空を切り狼達を傷つけるには至らない。


 だがその際にアルは工作を行う。

 不発に終わった水獄の堅牢(ブルー・ジェイル)で撒かれた水を氷結の手(アイシクル・ハンド)で凍らせていく。


 その足場の悪くなった所に着地し、足を滑らせた2匹のウルフの連携が崩れる。

 そしてその隙をアルとソフィアは見逃さない。


 体勢を崩した2匹を捉え、確実に息の根を止める。こうして戦況は一気にひっくり返る。


 レッサーウルフの数が減り余裕が出来たアルは悪魔の手の制御をソフィアに任せ、残りのレッサーウルフを叩く。


水獄の堅牢(ブルー・ジェイル)


 ソフィアが悪魔の手で追い詰めたレッサーウルフを一網打尽にする。

 完全に閉じ込められたレッサーウルフは抜け出そうと藻掻くが、それも叶わずやがて息絶える。


「あとは君1匹だ」


 レッサーウルフを指揮していたシャドウウルフを見据える。その目には仲間を殺られた怒りが垣間見える。


「ワオーーーーン!!!!」


 シャドウウルフが雄叫びを上げる。

 空気がビリビリと震え、衝撃波がアルを襲う。


「かはっ」


 後ろに飛ぶことで衝撃を逃がしたが、ダメージは免れない。

 吹き飛ばされ地面に叩きつけられたアルは肺の空気を失い呼吸に苦しむ。


 何とか息を整えシャドウウルフに目をやると既に攻撃態勢に入っていた。


「ガアアアア!!!」


 叫びながら噛み付こうとするシャドウウルフを翼を広げ、飛び上がることで回避する。


(ソフィア、あれの動き止められるか?)

(悪魔の手の速度では捕えられません、なので()()()()()()()()()()()()()


 ソフィアの案に納得したアルはシャドウウルフから目を切り後ろを向いて走り出す。


 それをシャドウウルフが見逃すはずもなく後を追う。

 そしてそのがら空きの背中に向けて爪を突き立てーーることは出来なかった。


 シャドウウルフは2本の悪魔の手に抑えられていた。

 死角からの攻撃に備えたカウンター魔法である。


 攻撃の瞬間が最も隙だらけになる。

 その隙を作り出すためにアルはわざと背中を見せ、そこを攻撃させたのだ。


 狙い通りに罠に反応したシャドウウルフは悪魔の手に捕えられて動けずにいる。


水獄の堅牢(ブルー・ジェイル)


 動けないシャドウウルフが水の檻に閉じ込められる。

 その大きな体を全て包み込み、じわじわと命を奪っていく。


 どれだけ強く、凶悪な魔物といえども生物だ。

 呼吸を封じられた狼にもはや生きる術は残されてなかった。


「……終わったか」


 戦いが終わり気が抜けたアルは座り込む。

 大きく息を吐いたアルは自身の戦闘を振り返って反省する。


 今回の一戦はアルの未熟さが浮き彫りになる戦いだった。

 戦いにも様々なケースがある事を改めて思い知らされた。


(でもそれを反省するのはまだ早い)


 アルにはまだやるべき事が残っていた。

 最後の一仕事を終えるべく立ち上がったアルは村長宅へと歩き出す。


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