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18話 怪しげな依頼

 アルはまたしてもギルドマスターからのお呼び出しを食らった。

 頻繁に呼び出しをくらい、もはや慣れた動きで応接室へと消えていく。


「今日は何の用ですか?」


「これを見て欲しい」


 渡されたのは1枚の依頼書。

 アルはさっと目を通す。


「えっと、タール村からの依頼で、レッサーウルフの討伐ですか……何かおかしいですか?」


「いや、内容自体はよくある物なんだがな、概要だ」


「えっと、群れから離れたと思われるレッサーウルフが、村の周辺を彷徨いている。罠を仕掛けたもののかかった形跡は無し。確かにこれは少し変ですね。それにレッサーウルフと断定してますけど、調査は行ったんですかね?」


「そこは完全に向こうの自己申告だ。受付嬢もまず調査の依頼を出すことを勧めたんだが、聞く耳を持たなかったらしい」


「怪しいですね。何か隠したいことでもあるのでしょうか?」


「さあな。だがこれは普通に張り出すにはちと危険すぎる。そこでお前に調査を頼もうと思ってな。解決できるならしてきてもいいぞ」


「僕で大丈夫ですかね?」


「何言ってんだ。リーシャの本気を受け止めておいてよく言うぜ。お前だから任せられるんだよ。じゃあ頼んだぜ」


 バンとカイに背中を叩かれる。

 そのジンジンする痛みには、期待が込められていた。


 ◇


「はぁ、絶対リーダー個体いるよな」


(それは間違いないですねー。レッサー程度が罠を見破れるはずがありません)


「タール村の人が仕掛けた罠がお粗末だった可能性は?」


(その可能性は否めませんが、レッサーならば多少の形跡が残るでしょう)


 やはりリーダー個体がいるのは確実だろう。

 可能性として挙げられるのはブラックウルフ、もしくはシャドウウルフだ。


 シャドウウルフはブラックウルフの突然変異種で、その能力も当然優れている。

 特に統率力が優れており、群れを指揮することで、味方の能力を余すことなく引き出すらしい。


「なんにせよ、許せないね」


 アルの顔は怒りで歪んでいた。

 普段の穏やかな顔は見る影もなく、憤怒で染まっている。


 その理由は単純明快。

 このタール村からの怪しげな依頼だ。

 もし、この依頼が嘘偽りなく、レッサーウルフの討伐なら依頼ランクはEランクで済むだろう。

 だが、上位個体の存在があるのであれば話は別だ。

 その危険度は大きく跳ね上がる。


 もし何も知らない人が手に取り無駄に危険にさらされたかと思うと、腸が煮えくり返る思いだ。


 アルは迷宮に置き去りにされた事を思い出す。

 自分では張り合うことすら許されない圧倒的強者。

 死を予感させられる圧倒的恐怖。

 自身が経験したそれが、名も知らぬ冒険者に起こったかもしれない未来だ。


「村の総意か、それとも個人の思惑が働いてるのかは分からないけど、長時間放置しておくのは危険だ」


 危険は冒険者のみならず、タール村にも襲いかかる。

 シャドウウルフが率いる群れとなると、村人総出で対処しても、追い払えないかもしれない。


(ギルドマスターがご主人にこの依頼を持ってきたのは賢明でしたね)


「まったくだよ」


 カイはアルと同じ考えだ。

 この依頼はEランクで収まらない事を察知したため、張り出すのやめた。


 そして、Eランクの依頼を受けることが出来て、なおかつ実力的にも信用出来るアルに託したのだ。


(強い方は低ランクの依頼をやりたがりませんもんね。ご主人がいたのはラッキーでしたよ)


「村がもう手遅れかもしれないけどね」


 ないとは言いきれない。

 レッサーウルフと言えど、リーダーが率いるものは馬鹿にできない。


「とにかく急ごうか」


(そうしましょう)


 村のことも考えると悠長な事はしていられない。

 アルはタール村に向かってナビルスを出発した。



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