13話 僕です
翌日。
アルは今日もギルドを訪れる。
今度こそゴブリン討伐の依頼を達成しようと意気込んでいたところ何やらカトレアに呼ばれ、連れていかれる。
馴染みの応接室である。
おそらく中にいるのはカイだろう。
カトレアがコンコンと扉を叩くと、案の定カイの声が返ってくる。
「入れー」
ここまではいつもと同じだ。
「今日は何の用ですか?」
「わざわざ悪いな。今日はちょっと聞き込みをしてるんだよ」
「聞き込みですか?」
「なんでも昨日、森の方で炎と冷気を撒き散らしてる新種の魔物がいたと報告があってな。ギルドから調査の依頼を出そうかと思ったがその前に昨日の受注履歴を見て、森に行った奴に声掛けて話を聞いてるんだ。お前は昨日ゴブリン討伐で森にいただろ? 何か知らないか?」
アルはダラダラと汗を流す。
(ソフィアさん? これ、僕だよね?)
(間違いなくご主人ですねー)
ソフィアに確認をとるが、おそらくアルである可能性が高い。
というより100%アルの仕業である。
アルの記憶にも、炎と冷気を撒き散らした記憶がバッチリ残っていた。
「あのー、非常に申し上げにくいのですが……その魔物、僕です」
「は?」
「僕です」
カイは目頭を抑える。
「何? お前魔物だったの?」
「違います! その炎と冷気を出してたのが僕なんです! 僕はれっきとした人間です!」
(ぶはっ、ご主人が魔物……有り得ます)
(ないよ!?)
カイとソフィアにツッコミを入れたアルはゼーゼーいっている。
「冗談はさておき、証拠は?」
「実際にやって見せれば、納得して頂けますか?」
「ほう。じゃあやってみろ」
「ここでは無理ですよ? どこか魔術を使ってもいい場所ありませんか?」
「分かった。じゃあ闘技場に行くか」
◇
闘技場に移動したアルはカイに見せるために魔術を使う。
「灼熱の翼、吹雪の翼」
アルは6枚の翼を広げる。
そして地を蹴り、宙へ舞い上がる。
そして闘技場の真ん中に向かって氷の翼を振り下ろす。
冷たい風が吹き荒れ、その吹雪が直撃した所から凍りついていく。
その侵食は止まらずに、床一面を凍らせる。
カイは目を見開いてそれを見ていた。
そしてアルはその氷を溶かすように爆炎をばらまく。
その炎の塊が落ちた箇所がジュッと燃え上がり、氷を溶かし水に戻していく。
「どうですか? 信じていただけましたか?」
カイは上から聞こえた声に顔を上げる。
「あ、ああ。疑って悪かったな」
予想以上に規模の大きい魔術だったため度肝を抜かれる。
「じゃあ報告にあったのもお前を魔物と見間違えたって事か」
「そういうことになりますね」
「依頼を出す前に判明して、良かったぜ。これで調査に出て何もありませんじゃ無駄に人員と金を使うところだった」
「お騒がせして申し訳ありません」
アルとしても早めに聞いてもらえて良かったと安堵している。
「それにしても氷……か。お前のそれ、ユニークマジックか?」




