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11話 初心

 この日、アルは薬草採取の依頼を受けていた。

 この依頼は灰色のギルドカードを手にしたばかりの冒険者なら大多数が通る道だ。

 アルも初心に帰って、この依頼を受けることに決めたのだ。


「よし、このくらいでいいかな」


 アルは薬草を規定の数だけ摘み終わると近くに腰を下ろす。

 目の前に広がる広大な自然を眺めているとどこか心が安らぐ。

 そんな事を思いながら自身が作り出したインテリジェンスマジックのソフィアを呼び出す。


叡智の女神(ソフィア)


(はいはーい。今日は何の御用でしょう?)


「新しい魔術をカスタムしたい。そのために俺の魔術についてもっと詳しく教えてくれ」


(そういうことでしたか。分かりました。この私にお任せ下さい)



 ソフィアの長ったらしい話を一言一句聞き漏らさないようにアルは努力した。

 そのほとんどが今まで自分が勉強した魔術の理論とは違うため違和感は拭えないが、それはそういうものとして飲み込んだ。


「なるほど、消費魔力は作った時点で最適化されるから特に気にしなくてもいいのか」


(そういうことです。それにご主人の魔力量ならそんな些細なこと気にする必要もないと思いますよ)


 ソフィア曰くアルの魔力量はかなり多い。

 もともとその恵まれた魔力を持っていたため魔術師に憧れたのだが、そもそもの素質が異端だったことに誰も気づけなかったためアルは不遇な思いをする羽目になった。


 その呪縛から解放されたアルは魔術を存分に楽しんでいた。

 今まで出来なかったことが出来、知らなかったことを知る。

 それはアルにとっても喜ばしいことである。


「じゃあ例えば、ソフィアを常時使い続けたらどれくらい持つ?」


 単純な疑問だった。

 自分がどれくらい魔術を使えるか、それは魔術師が初めに理解しなければならないことだ。

 魔術である実感はないがソフィアも魔術だ。

 魔力も消費してるのだろう。


(えーと、おそらく半永久的に可能かと。ざっくり言うとご主人の魔術は放出系と還元系に分けられます。要は魔力を自分の体から切り離すか否かですね)


 アルはソフィアの説明に耳を傾ける。

 また自分の知らない理論に驚きつつもその全てを自分のものにしようと必死だ。


(今ご主人が実用化された魔術に放出系は…えーとあの不死鳥ですね。厳密には少し違いますが回復に使われた魔力が還元される訳では無いので概ね放出系です。例えばご主人は使えませんがファイアーボール。こういった魔力を形にして放つものは魔力の消費が大きいですね)


 ソフィアのわかりやすい説明に頷きつつも基本魔術が使えないことを指摘されたアルは少し凹む。


(逆に私のように魔力を放出しないものは持続力も高いってわけです。今の私は常時使用されても消費魔力よりもご主人の魔力が回復する方が早いので半永久的に使用が可能です)


 つまり、ソフィアや悪魔の手(イーヴィル・ハンド)のような身体から切り離さないものは体内魔力に還元するため、無駄な消費を抑えられているらしい。


「じゃあ僕はどんな魔術を使えば魔力切れになる?」


(そうですねー。火と水と風と土と光と闇を同時に扱うような複雑な放出系の魔術を5000発くらい使えば切れるんじゃないですか?)


 ソフィアの例えは凄まじいものだった。

 もし仮に、そんな魔術が完成したらどうなるのか想像もつかない。


(そういうわけなのでご主人が自身の身を守れるような常時発動魔術や簡単なものでもいいので結界系や反撃系の魔術をいくつか用意するのをオススメします)


 ソフィアの提案にアルも納得する。

 せっかく魔術を使えるようになってもアルはまだ弱い。

 備えることの大切さを知っているアルはそういった準備に手を抜かない。


 アルは新しい魔術の案をソフィアと出し合いどのような形で実現するか煮詰めるのを時間を忘れて日が暮れるまで行った。



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