第2話 まほろばの住み処
AIアンドロイドのメマは、2階の蘆名征司の部屋の向かいにある空き部屋に住むことになった。メマはその部屋の柱や床を撫でて嬉しそうに愛でている。
里見滋と父の会話には疑問があっても口を挟めなかったので、改めて征司は「どうしてメマさんは、他のアンドロイドと違って自由にダウンロードやハッキングをしても良かったの?」と父に尋ねる。
「世の中には見えない諍いが常に起こっているんだよ。1秒で数百、数千のハッキングを仕掛けたり、防御したりだな。だから人間の許可をその都度取っていたら間に合わないんだ。それに関連したアップデートも。そのためにメマは特別に自立していることを許されているんだね」
「へぇ……」
メマがトストスと足音をさせながら尻尾を揺らして征司達に近付いて来ると、父に向かって小さな両手を合わせて頭を下げる。
『御前様、ありがとうございます。このような立派な終の住み処まで作って下さって! ……ハッ!? ――リス!』
「……、ああ。他に必要なものはあるかな?」
『いえ。いただけるお給料で購入致します』
「村の外で買い物をしてとがめられたら、私達に頼まれて代理で買い物をしていると言うんだよ」
『リスリス!』
メマが何度も頭を下げる。父は「リス、か……」と小首を傾げながら階段を降りていった。
征司はメマの言葉を不思議に思う。
「ついのすみか……?」
『はい。人間はよく不死の代表として吾々の名前を挙げますが、ロボットの一生は決して長くありません!
予期せぬ不良、製造されなくなる部品、消耗されるパーツ、破損してアップデートもされなくなるプログラム、いなくなるメンテナンス技師や装置、対象の修理工場――吾は既に修理対象外のナンバリングなのです。
メカのようにAIコピーをネットで保存してもそれは普遍の生ではありません。ある日突然ウイルスで破損するリスク、あっさりとノイズとして削除されてしまう日が来るのです』
シマリスの目がどこか遠いところを見る陰りを帯び、鼻をスンッと鳴らした。
『リス……』
「メマさん……」
1人と1匹はしんみりとなる。征司はメマを気遣って話題を変えた。
「メカさんは、どんなアンドロイドだったの? レトロゲームブームを起こした、有名なゲーマーのアンドロイドだって、滋さん達から聞いたけど」
『メカですか。あやつは生まれた時から変なアンドロイドでした。いくら調整しても、吾々のような話し方にならなかったのです。そのせいで当初から不良品ではないかと疑惑を持たれていました』
「話し方?」
『吾々は愛くるしいマスコット的な個性と、明るく陽気で人間が好きな気質を根本としたプログラムを持っています。
おっと若様、それはとても不思議に思っている表情ですね! 最初のキャラクター設定は心の生成源なのですよ! そして人間社会の重要な物事を取り扱うアンドロイドには特に良心が必須です』
「どうして?」
メマは征司の耳元でコッソリとささやいた。
『実は、この世界の物事は全て心で成り立っているのです』
「え……」
征司はビックリしてメマに振り返る。ふっくらとした頬袋が可愛いシマリスが、その頬袋を自分の両手で横にグニっと引っ張って笑った。
『どれほど正しい規範と罰則があっても、人間の心はそれを守りませんし、守りもします。どんな事柄も心で決定されて日々動いているのですよ』
「……あ。でも、少しわかる。僕も自分の気持ちで相手を見ていたことあるから……オンラインゲームでもそれで失敗しちゃったことあって」
傭兵団の倉庫の問題で話し合おうとした一件を思い出して、征司は恥ずかしそうに笑って俯いた。すると視界にシマリスの尻尾が入ってきて、くるんと征司の足に巻き付く。柔らかい。メマを見返すと、手で顔を覆ってモジモジしていた。
「尻尾……すごくフサフサだね」
『はい、吾もすっかりお気に入りなのです! 良いボディを手に入れました。この表面は破損しても修理が叶いますし……』
メマは瞳を輝かせる。
『ぜひ野山を駆けたいのです!』
「へ、ヘビがいるから危ないよ」
その日は、ささやかながらメマの歓迎会を兼ねた豪華な夕食だった。
どうやら母がメマに征司の志望校の話をしていたらしく、『過去十年間の同じ偏差値の全高校の試験で頻出した問題集です。緑の字の部分は引っかけとして文字が変えられるところですぞ、若様!』とメマが作成したデジタルテキストを渡されて面食らう。いきなりVRマナ・トルマリンにダウンロードする許可を求められた時は心底驚いた。
それからVRマナ・トルマリンのホームにログインする。満天の星空の下、ハリネズミがロッジで勉強をしているというのは摩訶不思議な光景だったと思う。
一度、無限わんデンのアバターがホームに入って来て、小さな本棚を設置して無言で退出していった。顔を上げた時には出て行ってしまっていたので挨拶も出来なかったが、『おすそわけ』と一言残されたメッセージと、本棚には色々な電子書籍の辞典が入っていた。
その後、『電子書籍のセール時にオマケで揃った辞典の詰め合わせが余ってた』と無限わんデンは伝えてきたが、実は違うんじゃないかなと心の片隅で思う。
しかし、あえてそれを言葉にはせず、お礼の言葉だけをメッセージで送る。頭の中では共有大倉庫に嬉々として素材を入れる和泉の笑顔を思い浮かべていた。
普段デジタルでの勉強がなかなか身につかない征司は、VR空間での勉強後リアルでも復習をする。今後の勉強の時間の組み立てもあって、この日はかなり時間がかかり、そのまま就寝した。
次の日。いつもと少し日常が変化して、メマが登下校に加わる。そんな日常の変化が始まった。
夜、勉強後にゲームにログインした。待ち合わせをしていた相手に拍手で迎えられる。
「おめでと、ツカサ君! 賭けに勝ちましたねーパチパチ」
「ありがとうございます……?」
∞わんデンを見上げて、ツカサは「賭け?」と首を傾げつつ頷いた。∞わんデンはそれがわかっているようで、つけ加える。
「領地ハウジング――個人名義、傭兵団名義どちらでも買える仕様でした」
「! 本当ですか! 良かったです……!」
ホッと胸を撫で下ろす。そこがずっと気になっていたのだ。
運営のアナウンスも遅れて表示された。
《ハウジング領地、優先購入権付与のお知らせ。
あなたは、貢献度ポイントが2番目に高いプレイヤーでした! ハウジング領地を優先して購入出来る権利が付与されました。
あなたより順位の高いプレイヤーが領地を購入次第、あなたはハウジング領地の購入が可能になります。優先購入出来る猶予期間は3日間です。購入手続きは、新大陸現地の土地前にあるボードにて行ってください。期間内に手続きがない場合、自動的に優先購入権利は破棄されます。
新大陸は、主要都市の港の船着き場にて専用の船で移動が可能です。
現在、優先購入権を持つプレイヤーのみが新大陸行きへの船に乗船出来ます》
《あなたは、まだハウジング領地を購入出来ません》
「あ。でも僕はまだハウジングを購入出来ないみたいです」
「あーソレね。トップのお人が買ってないらしいから仕方ないね」
「買う場所、きっと悩んでるんですね」
「ハハハー……まぁ、ヨソのことは置いといて。折角だから皆で下見行かない? なんでもいいって言っても希望はやっぱりあるでしょ」
「みんな?」
「そ。優先購入権、うちの団員全員持ってるよ。だから一緒に新大陸行けるよ。チョコさんと俺も、うちの視聴者の救出クエしてポイントおこぼれでもらってるからね」
「あ!」
∞わんデンの偽物『無限わんデン』を思い出す。偽物と言っても、ゲーム実況者の無限わんデンが好きだからその名前で自キャラを作っていたプレイヤーだ。普段は『牙』というPVPが得意なメインキャラを使っているロールプレイヤーだった。
「雨月君もたぶん10ポイント以上は持ってるんじゃないかね。PKはポイント渋かったって話だけど、彼は戦争イベントで特殊な立ち回りをしてたぐらいだし、ポイントじゃなくても特典はもらってそうなんだよね」
「誘ってみます」
「うむ」
「みなさん、個人では買わないんでしょうか?」
「昨日くろ……和泉さん達に聞いてみたけど、個人宅はあんまり反応なかったなぁ。領地って単語が手広そうなイメージあって、ソロだと手に余る気がするんじゃないかい」
(チョコさんも、みんなで集まれる場所が欲しいって言ってたっけ)
――ネクロアイギス王国の港。
連絡をしたら、直ぐに和泉、チョコ、雨月の3人は集まってくれた。
雨月は濃い紫と金色で縁取りされた白いローブ姿で、コウテイペンギンの雛が傍にいた。神鳥獣使いだ。
周りは雨月だと気付いていないのか、騒ぎにはなっていない。∞わんデンの姿を目に留めたのをきっかけに、黄色ネームではなく黄金ネームだと気付いた素振りの通りすがりのプレイヤーもいたが、2度見して凝視しながらも足早に遠ざかるぐらいの反応だった。
我関せずの∞わんデンは屈んで「よーしよしよし」と、わしゃわしゃコウテイペンギンの雛を撫でている。
和泉がうろたえた表情で手を空中でさまよわせていた。チョコも似たり寄ったりの姿で∞わんデンの所業を見つめている。なのでツカサは、雨月を見上げて尋ねた。
「雨月さん、ペンギンに触ってもいいですか?」
「構わない」
ツカサがそっとコウテイペンギンの雛の頭をひと撫でした後、和泉とチョコもおそるおそる手を出して撫でた。2人とも顔を見合わせて笑顔になる。
∞わんデンは立ち上がりながら笑った。
「タンク1、ヒーラー2、アタッカー2か。意外とちゃんとしたPT編成になっておる」
「チョコのDPSは当てにしちゃダメなのです」
「ヒーラーとしての回復力はツカサさんほどない」
「た、倒される前に倒せば……! 私も攻撃頑張るよ」
「じゃあ僕も攻撃を」
「キミ達、怒濤の役割否定申告はヤメテ下さい」
港の船着き場には、3本マストの立派な帆船があった。桟橋に立つ水夫に地図では「!」マークがついている。水夫はツカサ達を見て、「おう、お客さん。さっさと乗りなよ。直ぐ新大陸に出航だ」と声をかけてきた。
すると目の前にアナウンスのブラウザが出る。
《新大陸への移動は実際に5分ほど時間が経過します。乗船の際は、時間に余裕をもってご利用下さい。乗船しますか?》
《はい》 《いいえ》
《はい》を選択して乗船する。船に乗り込む際、板のタラップで足下が不安定で、ツカサと和泉とチョコは慎重にゆっくりと一歩一歩進んだ。
ツカサ達が乗り込めば、直ぐに船が出航する。大きな船だが、他にプレイヤーはいないようだった。
甲板に出ると、和泉が感嘆の声を上げる。
「うわぁ……! すごい、昔の船だ。映画の海賊船に乗っているみたい……!」
その言葉に、ガタイの良い山人の水夫がカラカラと豪快に笑って言う。
「海の上で盗賊行為たぁ、どんな無法者でもやらかしませんぜ! 海は深海闇ロストダークネス教の唯一神さまがいらっしゃるって場所じゃねぇですか。妙な船を見たやつがいたんなら寝ぼけてたんでしょうよ」
「へ……?」
去って行く水夫の背中を和泉はポカンとしながら見送った。
「ふ、フラグ……? 何かの……」
「配信のコメントで言われたなぁ。夜の出航に当たるとランダムであるらしいよ、幽霊船イベント」
「あ! 掲示板で見ましたそれ!」
ツカサ達は澄み切った青空を仰ぐ。
「良い天気ですよね」
「うん。のどか……。海もきれいだし……!」
青空に心地よい潮風。和泉、∞わんデンは船縁に腕を置いて身体を預け、美しい海原を眺めた。
同じ方向を見たツカサとチョコの眼前には、茶色の板張りが広がる。
背伸びをしてみたが、船縁の高さには届かない。隣でチョコがカワウソをプルプルと腕を震わせながら上へと持ち上げている。ツカサもオオルリを船縁へと着地させた。
きっと、オオルリとカワウソには海原が見えている。
雨月が、板張りと向かい合うツカサとチョコの姿に、チョコに近付くと代わりにカワウソを持ち上げて船縁に置いてくれた。チョコは神妙に雨月へと頭を下げる。
(そうだ、脚立!)
所持品から種人用折りたたみ脚立を取り出した。それに乗ると、船縁から顔が出せて海が見えた。
「チョコさん! ここからなら見えます!」
「!」
ツカサはチョコと場所を変わる。チョコも脚立に乗って顔を出し、青い海を見て目を輝かせた。彫金師ギルドでヤッグスに高値で買わされた当初はなんだか微妙な思いもしたが、種人用折りたたみ脚立は、本当に便利な物だと思う。
チョコがおもむろに釣り竿を取り出して、振りかぶって海へと糸を放り込む。ギシッと竿がしなり、魚がかかった。竿を持ち上げ引き上げると、船縁に魚がバチンッとぶつかり、バシャンッと水音が響く。海から上がってきた針先には何もいない。
「……」
「……」
チョコは太眉を上げて、キリッと凜々しい表情でツカサに振り返る。
「レベル上がったのです!」
「お、おめでとうございます!?」
「団長さん……どうぞです……」
脚立を譲られたので、ツカサも釣りを試してみることにした。
《針と餌が釣り場に合っていません》
(そうだ。川用の釣り餌のキューブつけてたんだった)
一旦戻そうと持ち上げた時、竿がしなった。ゆっくり慎重に引き上げる。
《「異星アザラシのレリーフ」×1を手に入れました》
《【釣り人】がLV3に上がりました》
釣り針には小さなリングケースが引っかかっていた。リングケースはパカッと開いて、22mm×22mmのアザラシらしき絵柄がついたピンバッチのような石のレリーフが入っていた。説明に『異星アザラシのレリーフ:ハウジングの庭具』とあって、どの辺りが庭具なのか首をひねる。
チョコとツカサに続いて、和泉が釣り竿をたらしている姿を眺めながら、以前釣った「異星ザリガニ」と、所持品内にある「魔魚メダカ」を思い浮かべた。
(そういえば、あまり魚らしい魚を釣れたことないなぁ……)
久しぶりにステータスも確認する。
□――――――――――――――――――□
名前:ツカサ
種族:種人擬態人〈男性〉
所属:ネクロアイギス王国
傭兵団:ネクロアイギス王国「アイギスバード」団長
称号:【影の立役者】【五万の奇跡を救世せし者】
フレンド閲覧可称号:【カフカの貴人】【ルビーの義兄】【ベナンダンティの門人】【パライソの知人】【深海闇ロストダークネス教会のエセ信徒】【名工国宝】(New)
非公開称号:【神鳥獣使いの疑似使い手】(New)【彫金師の修業者】【死線を乗り越えし者】【幻樹ダンジョン踏破者】【ダンジョン探検家】【博学】【密かなる脱獄者】
◆現職:「神鳥獣使い」
職業:神鳥獣使い LV12(↑1)
階級:5級(↑4)
HP:150(↑10)(+40)
MP:650(↑50)(+320)
VIT:15(↑1)(+4)
STR:6
DEX:16(↑1)
INT:18(↑2)(+3)
MND:65(↑5)(+22)
サブ職業:彫金師 LV30(↑19)
スキル回路ポイント〈0〉(B0/C0/P0)
◆戦闘基板
・【基本戦闘基板】
|_【水泡魔法LV6】【沈黙耐性LV4】【祈りLV30】(↑18)
【魔法速度LV5】(↑1)【魔法防御LV1】【即死耐性LV1】(New)
・【特殊戦闘基板〈白〉】
|_【治癒魔法LV8】(↑1)【癒やしの歌声LV7】(↑1)
【喚起の歌声LV5】【鬨の声LV2】(↑1)【復活魔法LV7】(↑5)
【サークルエリア】(New)【郭公のさえずり】(New)
◇採集基板
・【基本採集基板】
|_【釣り人LV3】(↑2)
◇生産基板
・【基本生産基板】
|_【色彩鑑定LV15】(↑12) 【外形鑑定LV15】(↑11) 【硬度鑑定LV18】(↑13)
【化石目利き(生産)LV2】【鉱石採集(生産)LV2】
【金属知識LV17】(↑11)【金属研磨LV17】(↑11)
|_【古代鉱物解析LV1】【古代岩石解析LV1】
・【特殊生産基板〈銀〉】
|_【測定切削技法LV16】(↑10)【打ち出し技法LV18】(↑16)
【延ばし加工LV18】(↑13)【毛彫りLV17】(↑16)【丸毛彫りLV17】(↑16)
【片切りLV17】(↑16)【蹴り彫りLV17】(↑16)
【宝石知識LV14】(↑10)【宝石研磨LV13】(↑10)【石留め技法LV11】(↑8)
・【特殊生産基板〈白銀〉】
|_【造花装飾LV1】【金属装飾LV18】(↑17)
・【特殊生産基板〈透明〉】
|_【彫刻LV18】(New)(↑17)
所持金 1億155万5200G
装備品 使い手のローブ(MND+20)、質素な革のベルト(VIT+2)、黒革のブーツ(MND+2)、古ファレノプシス杖(MP+100)、シーラカン製・深海懐中時計、LV7デボンの木の指輪(VIT+2、INT+3)、◆LV12 神鳥獣リングHQ(VIT+1、【サークルエリア】)
□――――――――――――――――――□
材料費などを引いて、現在の所持金は1億155万5200G。ハウジングに十分な資金だと思う。
そのまま所持品も軽くのぞいていると、∞わんデンの話し声が耳に入ってきた。
「そういや、雨月君。前の掲示板で、巡回時間なんてものがテンプレで書かれてたのは把握してるの?」
「パライソの?」
「パライソ……? いや、彼らがチェックしたキミのフィールド滞在時間だよ。その反応は知らないのかー。00:00~08:00がグランドスルト周辺、08:00~16:00がネクロアイギス周辺、16:00~24:00がルゲーティアス周辺に――ってやつ」
「よく調べている」
「ほほう? じゃあ事実なのか。ホントにずっとログインして巡回してるの? それとも俺みたいにログインはしてるけど、別の作業やってたりする放置勢? なんか雨月君の人外説まで出てたよ」
雨月は口元に手をやり一度黙ってから、口を開いた。
「錯覚――だと思います。遭遇率の多さから、常にその時間帯にいると思われているのだと。プレイヤーの捜索時間込みで考えているなら、確かに一日中いなければおかしい」
「その口振りじゃ、まるでプレイヤーを探してキルしてる訳じゃないみたいなんですが」
「称号の効果で、プレイヤーの位置が地図に表示されています」
「え」
「色もわかるので赤色を優先しています」
「お、おう……」
「ログインはずっとしてはいないんですが、頻度は多いとは思います。空き時間ごとにログインしてフィールドにいるので」
「ん……学生……?」
「おっと失敬」と∞わんデンは慌てて口を押さえる。頭を掻いて申し訳なさそうに謝った。
「ごめん。リアル邪推はマナー違反だわ。そういう話がしたかった訳じゃなくて、まぁ、俺の方も放置だけど一日中いるんで、何かあったら気軽に連絡ちょーだいって話をしたかったのよ」
∞わんデンの言葉に、雨月は静かに頷いた。
そうこうしているうちに5分はあっという間に過ぎ、新大陸へと船は到着する。
ツカサは船着場に降りるとよろめいて驚いた。和泉と∞わんデンからも「わっ」と声が上がっていて足下がふらついていた。
「ふ、船酔い……?!」
「うっわ、まさかVR酔いなのかコレ!? 初めてなった……!」
3人が目を白黒させている姿に、平気な雨月とチョコが不思議そうにしていた。




