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引っ込み思案な神鳥獣使い ―プラネット イントルーダー・オンライン―  作者: 古波萩子
01 オープンベータ版『プラネット イントルーダー・ジ エンシェント』再始動編
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第7話 初心者タンクとヒーラーと覇王の凸凹パーティー

 Skyダークに突然パーティーを抜けられて、ツカサと和泉はショックを受ける。特に和泉の顔色は真っ青になっていた。

 もう1人のパーティーメンバーのルートが、頭をかきながら「あちゃー」と言いつつ苦笑う。和泉が震えながら謝った。


「ご……ごめんなさい……わたっ、私がもたもたしてたから……っ」

「や。タンクさんのせいじゃないって。気ニシナーイ気ニシナーイ! ああいうせっかちな奴もいるってことで、1つ勉強になったっしょ。じゃ、どうする? パーティー募集もっかいする?」

「はっ、はい! してみます」

「ういっす」


 3人は一旦、ダンジョンの外に出た。



 ツカサはプレッシャーを感じつつ、背筋を伸ばして再度パーティー募集板でメンバーを募る。しかし、いくら待てどもパーティーに入って来てくれる人はいなかった。

 ルートが不意に「ぶっ」と吹き出す。


「あ、ダメだコレ。掲示板で晒されてるぅ。誰も入ってこねーわ。あんの無言抜け効率厨め」

「え!?」

「さ、ささ晒……っ!?」


 和泉が真っ青を通り越して顔色をなくした。


「いやぁー、新規には悪いけど、プラネって過疎ってるっしょ。常時ログイン率なんて30人いれば多いぐらいなんだぜ。みんな顔見知りの村状態な世界なわけ。掲示板も特定の奴が回してるだけだし? 話回るのも村八分になるのもハエーハエー」


 ルートが《総合掲示板》を見ながらケラケラと笑う。こんなことになってもパーティーを抜ける気配のないルートは良い人だ。何とかこの優しさに報いたいと思った。


「幻樹だし、初期レベタンクとヒラで3人はナァ……。ん、フレ呼ぼ」

「あの、じゃあせめて僕が……!」

「へ?」


 手早く連絡するために、ツカサはメールではなく雨月にチャットを送った。



 ツカサ:「レベル変動制・LV1幻樹ダンジョン」に来ています。パーティーメンバーが足りません。今、お忙しくなければ手伝っていただけませんか?

 雨月 :構わない



「来てくれるみたいです……!」

「え。このタンク以外にフレいたの? なら最初っから――」


 雨月の名前がパーティー欄に表示された。

 黒い渦の円形のゲートが展開されて雨月が現れ、ツカサは慌てて頭を下げた。


「雨月さん、来てくれてあ……」



《サーバー回線接続エラーが発生しました。「ルート」がログアウトになりました》



「ええっ?!」


 ツカサは思わず驚愕の声を上げて振り向いた。

 そこにいたはずのルートの姿は既にない。


「る、ルートさん……」

「わたっ、私が……私のせいで……っ」

「そんな、和泉さんのせいじゃないです。エラーだって表示されていますし、たまたま……!」

「――2人とも、スキルを確認していいか」


 混乱して慌てる2人に、雨月が静かに切り出した。

 ツカサは促されておっかなびっくりにステータスを開き、【水泡魔法】【治癒魔法】【癒やしの歌声】【沈黙耐性】のスキル名を告げる。

 すると雨月は、ツカサのスキル構成に目を見張った。


「【沈黙耐性】を既に持ってる? 初期レベルは5ポイントしかないはずだ」

「称号のおまけで5ポイント余分にもらって」

「称号……これか、【五万の奇跡を救世せし者】」


 読み上げられると気恥ずかしい。ツカサは顔を赤くして話す。


「僕がちょうど5万人目の、新規登録者だったそうです」

「おめでとう」


 真面目な顔で祝われた。反応に困って余計に照れてしまう。「あ、ありがとうございます……」と何とか返答した。遅れて和泉からも「おめでとう」と追随されて、ますます照れてしまう。

 雨月が所持品から杖を取り出し、ツカサへと差し出した。ツカサの目の前にトレード画面が表示される。


《「雨月」から「明星杖」のトレード申請を受けました。承認しますか?》


「祝いにこれを。ダンジョンに入る前に装備してくれ」

「あの、でもヒーラーは武器の装備を」

「初期から変えられないのは知っている。だがヒーラーはキャスター――魔法アタッカーの武器を、レベル制限もないアクセサリーとして1つ腰に装備出来るんだ。勿論武器としては使えないがMPが微妙に上がる。LV1で装備出来る、唯一のアクセサリーだ」


(えっ、そんな裏技みたいなことが?)


「それはヒーラーだけですか?」

「ヒーラーだけだ。プラネはヒーラーが優遇されている。……悪名が流れる前は、ヒーラーゲーと呼ばれていたぐらいには、製作者の熱の入れようが他職と違う」

「で、でもこの杖は本当にいただいていいものなんですか? LV50の星魔法士武器って……貴重な物なんじゃ」

「どうせそこらで売り払うか捨てるつもりだった。気にしないでもらってくれ」

「はっ、はい。ありがとうございます」


 トレードを承認し、もらった明星杖を腰のベルトに下げる。

 雨月は口元に手をやって少し考え込む様子を見せてから、気合いを入れるように重い溜息を吐いた。


「……この3人のみで行こう。俺が【水泡魔法】【治癒魔法】【鬨の声】を取る。攻撃力アップのバフを担当するから、ツカサさんは回復に専念してくれ」


 そう言い終わるやいなや、雨月の格好がツカサと同じ見習いローブ姿に変化した。

 加えて雨月の隣には、モコモコのねずみ色の体毛に、頭とその周辺の輪郭とくちばしは黒色で顔は白色の毛のずんぐりむっくりした体型の鳥が現れた。

 ツカサと和泉はその愛らしい姿に頬を緩める。


「ペンギン!」

「わぁっ、コウテイペンギン! コウテイペンギンの雛だ、可愛いねっ!」


 特に和泉が目を輝かせてはしゃいだ。ずっと遠慮がちだった態度が吹っ飛ぶぐらい興奮している。

 雨月は隣に並ぶコウテイペンギンを少しの間じっと見つめると、手を伸ばしてぎこちなく頭に触れた。そして詰めていた息を吐く。彼が身体を強張らせていたことに、ツカサは遅まきながら気付いた。


「雨月さんも神鳥獣使いだったんですね」

「……今はもう、ただのサブ職だ。1年振りに出した」


(1年振り……〝5.5ブラディス事件〟っていう大規模なPK事件以来……?)


 現在、パーティー欄の雨月は『神鳥獣使いLV1』となっていた。当時のままのレベルでないのは想像にかたくない。PKについて詳しくないが、被害者のレベルが下がることがあるのだと察せられた。後でPKを受けた際のペナルティについて調べておこうとツカサは頭の片隅で思う。

 不意に、ツカサのオオルリがコウテイペンギンの頭に触れた雨月の手の上へとヒラリと飛び移る。雨月を見上げて「ピ」と小さく声を鳴らしたオオルリに、雨月は初めて柔らかな笑みを浮かべた。


「綺麗な、青い鳥だな」


 眩しげに目を細める雨月に、オオルリは首を傾げた。




 改めて、3人でダンジョンへと足を踏み入れる。

 和泉がタンクを始めたばかりで右も左も分からない旨を雨月に伝えた。それを聞いた雨月から提案される。


「この入り口付近でタンクとヒーラーの基本的な立ち回りを知っておいて欲しい。一度、指示通り動いてもらっていいだろうか?」

「え、ええ! おっ、おね、お願いしますっ……!」

「じゃあ、和泉さんは俺の後ろについて来てくれ」

「うしろに……?」


 雨月が大きなテントウ虫に近付いていくのに、和泉もおっかなびっくりについて行く。そして雨月は【水泡魔法】をテントウ虫にぶつけた。

 するとテントウ虫の頭上に、〝魔虫テントウLV5〟という名前と、その下にHPバー、更に下に黄色のバーが出現した。


「和泉さん、直ぐに攻撃を何度か頼む」

「はっ、はい!」

「2人からは黄色に見えているバーは〝ヘイトゲージ〟と呼ばれるものだ。敵視と言って、通常このバーを赤くした者に敵は攻撃をし続ける。今は俺が赤色のバーだ」


 説明しつつ雨月は素早く和泉の後ろへと回った。和泉は言われた通り、魔虫テントウに何度か剣を振り下ろす。


「ツカサさん、パーティー欄の名前の下に各ヘイトバーが載っている。色だけじゃなく、数字があるだろう。その数字はヘイト順を表している。そこを見て、和泉さんがヘイトを俺から奪い返したら【癒やしの歌声】を」

「わかりました」

「常にヘイトゲージを赤くしていることがタンクの基本になる。パーティーメンバーの誰にもこの色を渡さない腹づもりでいてくれ。

 タンクがヘイトを取る方法は簡単に言って2つ。ファーストアタック……誰よりも最初に敵を攻撃すること。そしてヘイトを上昇させるスキルを使うこと」


 攻撃をし続ける和泉のヘイトバーが赤くなり、2から1と数字も変わったので、ツカサは【癒やしの歌声】というオオルリの傍に浮かんだ文字に触れる。オオルリが「ピールリー」と歌い、五線譜と音符が3人の周りをクルクルと舞った。

 敵のレベルが高いため、和泉は既にHPが残り1割しか残っていなかった。そんな危ない状態なのに、【癒やしの歌声】では直ぐに回復はされずヒヤリとする。

 単体回復魔法の【治癒魔法】を使った方が良かったのではないかと内心ハラハラするが、和泉が再び敵を殴った瞬間、バフ効果によってHPが8割戻って、ほっと息をついた。


「ツカサさん、もう一度【癒やしの歌声】を。和泉さんの方に来てくれ」


(あれ? バフの効果って戦闘中は直ぐに切れるもの?)


 胸中で首を傾げながらも、これで和泉のHPが全快になると安堵し、ツカサは少し気を緩めて再び【癒やしの歌声】を使った。

 すると魔虫テントウがツカサに顔を向け、一直線にツカサへと走ってくる。


「え!?」

「ツカサ君!?」

「和泉さん! 直ぐに敵を追いかけて傍で【宣誓布告】!!」

「ひゃいっ!!」


 舌を噛んだような返答をして、和泉が慌てふためきながら指示通りに走り出す。その間に、突然のことで動けないどころか後ずさって和泉達から離れてしまったツカサは、魔虫テントウに体当たり攻撃をされた。一気にHPが9割無くなって瀕死になる。

 あまりの自身のやわさに衝撃を受けた。明らかに和泉と受けるダメージ量が違う。


(初期値のままのHP10だったら死んでた……!!)


 称号の報酬でHPは60になっている。それでもこれなのかと愕然とした。

 ツカサが青くなっているうちに、【癒やしの歌声】のバフでHPが回復し、ツカサを背にかばった和泉が【宣誓布告】のスキルを使った。

 目の前の空中に、七色の光を放つ盾のエフェクトが浮かぶ。敵が和泉へと攻撃の矛先を変えた。



《称号【死線を乗り越えし者】を獲得しました》



(まだ乗り越えてないよ!?)


 思わず胸中で称号アナウンスに突っ込みを入れる。コウテイペンギンの雛が「キュッキュユ!」と鳴いた。オオルリの五線譜と五線譜が重なり合い、【癒やしの歌声】の音符の間に、【鬨の声】の音符が追加される。それまでダメージが0か1しか入らなかった和泉の攻撃が9、10、時には20とダメージが出るようになった。


「ツカサさん、譜面をよく見て。音符が軽く光って、その光が次の音符に移っている。あれはただのエフェクトじゃないから、最後の音符の1つ手前で、再び【癒やしの歌声】をかけ直してくれ」


 ツカサは頷き、教えてもらったタイミングで【癒やしの歌声】を使った。さっきとは違い、ヘイトがツカサに来ることはなかった。


「和泉さんは適度に【宣誓布告】を使って、ヘイトを維持してくれ。そうすれば、俺が攻撃に参加してもヘイトは和泉さんで固定される」

「はいっ」


 雨月の【水泡魔法】も加わって、魔虫テントウのHPは0になる。倒された魔虫テントウはひっくり返ると、光のエフェクトと共に消えた。

 和泉とツカサは互いに顔を見合わせて「やったね!」「うん、やったー!」と喜んだ。


「……良かった。でも正直危なかったな、言い方が悪くてすまない」

「いいえ! 僕の方こそ、とっさに動けなくてごめんなさい」

「ヒーラーにヘイトが来た時は、直ぐにタンクに取ってもらえるようにタンクの傍に行くようにしてくれ」

「はい、次は絶対そう動きます」

「さっきの回復バフで気付いたと思う。回復は敵に攻撃と見なされてヘイトが上がるんだ。

 更に回復バフは、自動回復ごとにヘイトが積み重なり上がっていく。回復魔法を過剰に使われ続けると、タンクがいくら頑張ってもヘイトを奪われて取り返せなくなるから、状況をよく見て考えて回復するように。

 それに戦闘前は周りに注意すること。敵が近くにいる状況で戦闘前にバフを使うと、敵にファーストアタック攻撃と認識されてヒーラーが襲われる」


 回復はすればするほどいいというものではないのかと、ツカサは目から鱗だ。

 和泉も勇気を出して雨月に質問する。


「あ、あの! ……タ、タンクって他に注意することってありますか?」

「注意――そうだな、開幕にはヘイトの上がる【宣誓布告】を必ずして、敵の攻撃は避けられるものはきちんと避けること。そのうち防御バフのスキルをポイントでしっかり取り、それを使ってダメージ量を抑えること。ヒーラーの負担を減らすのが有能なタンクだ。

 後は考えなしに敵を攻撃するアタッカーがいる。面倒を見てやってもいいし、床に転がせてもいい。生殺与奪はタンクが握っている。好きに扱え」

「え……え!?」

「戦闘とは関係ないが、【宣誓布告】はエフェクトをカスタマイズ出来る。デフォルトはネクロアイギス王国の紋章盾だが、盾じゃなくて旗や巻物に変えたり、文字や絵が浮かぶようにしたり、自由に変えられる。ずっと使い続けるスキルだから好きにするといい」

「そっ、そんなオシャレ機能が!」


 心がくすぐられたらしい和泉がとても反応した。

 ツカサはオシャレという辺りにピンとこなかったが尋ねる。


「みなさん、変えているのが普通なんですか?」

「いや、デフォルトが多い。それでもたまに個性的なものに変えている奴がいる。それで語り草になっている事故もあった」

「事故、ですか?」

「とあるタンクがレイドボスでカスタマイズの【宣誓布告】をした。空中に『ニャーッ!』という文字と集中線を入れた写実的な猫の絵が浮かび、予想外の光景にヒーラーが笑い転げた。それでパーティーが全滅したという笑い話だ」

「それは……不幸な、事故ですね……」


 「笑い話」と言いながらも至極真面目な顔を崩さずに話す雨月に、ツカサは曖昧に相づちを打つ。視界の端で和泉が肩を震わせて笑いを堪えている姿が目に入る。和泉のツボに入ったようだ。



 雨月の「このダンジョンは敵を倒しても経験値もアイテムも手に入らない。出来るだけ避けて行こう」という鶴の一声に従って、和泉とツカサはモンスターを避けながら、こそこそと歩いて進んだ。


「わ、私さっきの戦闘で【死線を乗り越えし者】って称号ゲットしちゃった」

「僕ももらいました」

「へへ、おそろいだー! この称号、大ダメージを受けた時に1度だけHPが0にならず1割で踏ん張るって効果付きみたいだね」

「でも即死攻撃には効果無いみたいです。そっちは【即死耐性】を取るようになっているのかな」

「ホントだ。即死は怖いし……早めに取りたいなぁ」



《【基本戦闘基板】に【隠密LV1】(10P)のスキルが出現しました》



「え」

「あっ」


 こそこそ移動していたせいか、新しいスキルが出た。ツカサと和泉が目を丸くしていると、雨月が先ほどの2人の会話に付け加える。


「【死線を乗り越えし者】の称号は隠しておいた方がいい。《非公開称号》に設定しておくのを奨める」

「どうしてですか?」

「ヒーラーが手を抜く。1度ぐらい回復が間に合わなくても死なない称号だからな」

「え……」

「そ、そそ、そんなことが……っ」

「タンクもヒーラーがその称号を持っていたら手を抜くことがある。もっとも、大ダメージ攻撃で大抵即死するヒーラーがその称号を持っているのは珍しいが」

「称号ってそんなにチェックされるものなんですか?」

「される。レベルと装備よりも、まずパーティーメンバーの称号を確認するのが基本になっている。メインの進行状況も、PK具合も、特殊称号があれば腕前だって察せられる。戦闘を左右する称号があれば、その称号を前提とした動きを要求される。だから強制公開の称号以外は《非公開称号》に、それが出来なければ《フレンド閲覧可称号》に設定出来るものは設定しておく。

 ――俺はいちいち面倒だから《詳細設定》で《得た称号の自動非公開振り分け機能》をオンにしている」


 雨月に言われて、ツカサと和泉もその機能をオンにした。互いに称号が見えなくなったのを確認する。


「あれ? ツカサ君の神鳥獣使いの称号も見えなくなったよ?」

「和泉さんも騎士の称号が非公開になってます」

「職業系の称号は隠した方が無難だからそれでいい。手持ちのサブ職の称号が見えていると、パーティーに不足している職に変えさせる強引な奴や絡んでくる奴がたまにいる」

「そうなんですか」


 雨月の忠告は初心者2人にとって、とてもためになる。

 モンスターを避けて隠れながら進んでも、やはり見つかってしまうことはあった。たまに戦闘になる。

 そしてそんな戦闘中に、時々雨月が攻撃バフも攻撃自体もしてくれないことがあった。今後の2人での戦闘を考慮してくれて、あえて手を出さない方針なのかもしれない。

 しかし、そうなると和泉だけでは敵のHPを減らすのがとても大変で時間がかかる。焼け石に水でも、ツカサも攻撃するようになった。

 最初こそ戸惑ったものの、攻撃することに徐々に慣れていく。おかげで回復の合間に攻撃をするリズムというか、立ち回りをおぼろげに習得した。



《【水泡魔法】がLV2に上がりました》

《【癒やしの歌声】がLV2に上がりました》

《【沈黙耐性】がLV2に上がりました》



 経験値が得られないので神鳥獣使いのレベル自体は上がらないが、嬉しいことにスキルレベルの方は上がった。


(沈黙攻撃してくる敵なんていなかったのに【沈黙耐性】が上がった……? なんでだろう)


 雨月に尋ねようと思ったが、ちょうどダンジョンの行き止まり――終着点にたどり着いた。そこには中央に不思議な水の台座があり、クリスタルのように透明に透き通る花びらの大輪の薔薇が1本台座から生えていた。

 ツカサが薔薇へと手を出し、そっとその茎に触れる。



《「真なるローゼンコフィンの薔薇」を手に入れました》


《「レベル変動制・LV1幻樹ダンジョン」をクリアしました》

《称号【幻樹ダンジョン踏破者】を獲得しました。LV1ダンジョン踏破の報酬として、通貨20万Gを手に入れました》



 アナウンスの後に、果樹林の入り口へと3人は戻され、ダンジョンは消えた。



《「雨月」がパーティーから離脱しました》



 黒い渦の円形のゲートが現れる。ツカサは急いで雨月に頭を下げた。


「雨月さんっ、手伝って下さってありがとうございました!」

「あ、ありがとうございました……!!」


 和泉もぺこりと頭を下げる。雨月は軽く片手を上げて頷くと、ゲートと共に姿を消した。

 ツカサと和泉は少しの間ぼんやりして顔を見合わせ、ふっと弛緩した。


「疲れましたね」

「う、うん。でも楽しかった」

「本当に。僕、こんなに次々知らない人と話したの、今日が初めてです」

「わっ、私もだよ」


 2人で話しながら、一旦街へと戻った。明日も一緒に遊ぶ約束をして、ツカサはログアウトした。






□――――――――――――――――――□

名前:ツカサ

人種:種人擬態人〈男性〉

所属:ネクロアイギス王国

称号:【深層の迷い子】【五万の奇跡を救世せし者】(New)


フレンド閲覧可称号:【カフカの貴人】(New)

非公開称号:【神鳥獣使いの疑似見習い】(New)【死線を乗り越えし者】(New)【幻樹ダンジョン踏破者】(New)


職業:神鳥獣使い LV1

 HP:60(↑50)

 MP:100(+110)

 VIT:6(↑5)

 STR:6(↑5)

 DEX:5

 INT:6

 MND:10(+1)


スキル回路ポイント〈0〉


◆戦闘基板

・【基本戦闘基板】(New)

 ∟【水泡魔法LV2】(New)(↑1)【沈黙耐性LV2】(New)(↑1)

・【特殊戦闘基板〈白〉】(New)

 ∟【治癒魔法LV1】(New)【癒やしの歌声LV2】(New)(↑1)

◇採集基板

◇生産基板


所持金 70万G

装備品 見習いローブ(MND+1)、明星杖(MP+100)

□――――――――――――――――――□

【宣誓布告】というスキル名は、宣戦布告をもじった少し意味合いの違うものとしてプラネでスキル名として使われています。

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