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第3話 再び幻樹ダンジョンへ

 21時にログインすると、運営からメールが届いていた。



『差出人:プラネット イントルーダー運営AI

  件名:ログイン特典の配布を致します。

  内容:アーリーアクセス期間中のログインありがとうございます。

     特典をお送り致します。ぜひこれからの冒険にお役立て下さい』



(特典はもう貰えるんだ)


 メールを閉じれば、袋が空中に現れてふわふわと浮いている。手で触れると袋に重力が戻り、落下する前に受け止めた。

 袋の中には消費アイテムの『HP下級回復薬』と『MP下級回復薬』が各3つ、アクセサリーの『シーラカン製・深海懐中時計』が入っていた。

 『シーラカン製・深海懐中時計』は淡く青い銀色の懐中時計で、レベル制限なく身につけられるらしい。



『シーラカン製・深海懐中時計:その昔、シーラカン博士と呼ばれる発明家が深遠を想って作った懐中時計』



(『深遠を想って』? 【祈り】のスキルの説明と同じ言葉が入ってる……? 特に効果の説明は無いけど、オシャレアイテムなのかな)


 懐中時計をアクセサリーに装備して、ツカサはステータスを確認した。




□――――――――――――――――――□

名前:ツカサ

種族:種人擬態人〈男性〉

所属:ネクロアイギス王国

称号:【影の迷い子】【五万の奇跡を救世せし者】


フレンド閲覧可称号:【カフカの貴人】【ルビーの義兄】【深海闇ロストダークネス教会のエセ信徒】

非公開称号:【神鳥獣使いの疑似見習い】【死線を乗り越えし者】【幻樹ダンジョン踏破者】


職業:神鳥獣使い LV4

 HP:70(+20)

 MP:250(+110)

 VIT:7(+2)

 STR:6

 DEX:7

 INT:9

 MND:25(+1)


スキル回路ポイント〈1〉


◆戦闘基板

・【基本戦闘基板】

 ∟【水泡魔法LV3】【沈黙耐性LV2】【祈りLV1】

・【特殊戦闘基板〈白〉】

 ∟【治癒魔法LV2】【癒やしの歌声LV2】【喚起の歌声LV1】

◇採集基板

◇生産基板


所持金 70万250G

装備品 見習いローブ(MND+1)、質素な革のベルト(VIT+2)、明星杖(MP+100)、シーラカン製・深海懐中時計

□――――――――――――――――――□




(『種族』に変わってる。『人種』って言い間違えないように気をつけよう)


 ツカサが中央広場から動き出そうとしたまさにその時、突然声をかけられた。


「こんばんはー!」


 振り向くと、金髪碧眼の美少女がニコニコと笑顔でツカサに手を振っていた。130cmのツカサより背が若干低い。100cmぐらいだろうか。ツカサと同じ種人だ。


「こ、こんばんは……?」


 街中のゲームキャラクターと同じ西洋のワンピースを着ていて、一瞬プレイヤーかどうかの判断に迷った。彼女の頭上には【RP】と記された盾のシンボルマークが浮いているだけで、プレイヤー名が無いのだ。


(RP?)


 ツカサの困惑が伝わったのか、彼女は口元に手を添えクスクスと笑って答える。


「シンボルマークはロールプレイ中だよって他の人に教えるマークだよ」

「ロールプレイ?」

「自分で作った設定キャラになりきって演技をして遊んでるって表明してるの。名前も名乗らないと表示されないんだよ」

「あ! 前に騎士の格好で門番になりきっていた人と話したことあります」

「あの変た……変な人とは違うよ? 名前を隠せる機能だから赤色ネームの人はこのロールプレイに設定は出来ないようになってるの。あの人は種人専門で種人を見つけたらつけ回して写真撮る本当に危ない人だから注意してね」

「は……はい……」

「ふふ。じゃあ改めまして、ソフィアだよ」

「初めまして、僕はツカサです」


 ソフィアはスカートの裾を持って可愛らしく挨拶をする。彼女が名乗った瞬間『【RP】ソフィア』と紫色の名前が表示された。


「それで、ツカサ。一緒に幻樹ダンジョンへ行こうよ!」

「え?」

「ベータの人でレベル9以下の人ってなかなかいないんだよ。正式版が始まったら新規の人が入ってきて近隣の果樹林辺りは混むかもしれない。今しか空いてないと思うの。クリアしたツカサに手伝って欲しいんだ」


 パタパタと羽をはばたかせて飛ぶ小さな文鳥が、ソフィアが差し出した指先にとまる。

 ツカサは可愛らしい文鳥に目が吸い寄せられた。それから自分の肩に乗るオオルリを見て、オオルリの頭を軽く撫でる。オオルリは気持ちよさそうに目を細めた。


「その子も可愛いね」

「あ。その、神鳥獣使い……?」

「そうだよ。なったばっかり」

「ダンジョンは僕のフレンドが一緒でもいいでしょうか?」

「レベル9以下なら歓迎だよ! 協力ありがとう!」


 ソフィアの了承を得て、和泉へ連絡をする。さすがに2度も雨月に頼る訳にはいかないと思ったので連絡は控えた。


 少し待つと、和泉がやって来た。


「ま、待たせたよね。ごめんね。こ、こんばんは、ツカサ君」

「こんばんは、和泉さん。急に呼んだのは僕なので気にしないで下さい。装備、格好いいですね」

「え? へへ……っ」


 ツカサに褒められて和泉は照れ笑う。

 ツカサは和泉の銀色の甲冑に感心しながら話を切り出した。


「和泉さん、幻樹ダンジョンのクエストってもうこなしましたか?」

「う、ううん。まだ、だよ」


 そう尋ねるツカサも、まだクエストを達成させていなかったことを思い出す。

 ソフィアがにこにこと笑顔で言った。


「じゃあ、幻樹ダンジョン2周回だね! あそこスキル経験値がおいしいから嬉しいなー」

「は、はじ……初めまして……」

「こんばんはーっ」


 ソフィアは所持品から巻かれている羊皮紙を取り出した。そしてその羊皮紙を開く。羊皮紙はボワッと青い炎を上げて消え去った。

 ふっと、ソフィアが先ほどまでの愛らしさがなりを潜めた低い声音で呟く。


「……へえ、こういうエフェクトか」

「今のは何ですか?」


 ソフィアはくるりと可憐な表情と声音に戻して、ツカサ達に笑顔で話す。


「クリア済みサブクエストを1度だけ未クリアに戻す有料アイテムだよ」


(8000円の!?)


「前にクリアしちゃってたからね。じゃあ、パーティー組も!」

「え!? あ、聖……えッ!?」


 パーティー欄のソフィアの名前を見た和泉が、突然挙動不審になった。酷く驚いた様子で目を泳がせ、ツカサは不思議に思う。

 そんな中、ソフィアが空に向かって手を挙げて明るく仕切る。


「幻樹ダンジョンへしゅっぱーつ!!」



 限定特殊クエストをそれぞれマルシェで発生させ、3人は近隣の果樹林へと向かった。



《これより「レベル変動制・LV6幻樹ダンジョン」へ突入出来ます。このダンジョン内では経験値が入らず、レベルが上がりません。受注者が外でレベルを上げた場合、現在のダンジョンは消失します》

《推奨人数1~4人。パーティー募集板の使用可。パーティー編成入れ替えでのダンジョン出入り可》



 和泉は騎士レベル5、ツカサは神鳥獣使いレベル4、ソフィアは神鳥獣使いレベル6――3人のレベル差にソフィアが小首を傾げる。


「ソフィア、レベル上げ過ぎちゃってるの。2人ともそんなに育ってなかったんだね」

「の、のんびり遊んでいるというか、さ、採集も好きで……」

「僕も夜だけログインなのでゆっくり進めてます」

「夜ログイン勢! ソフィアもだよー! 敵強くなっちゃうけど頑張ろっ」


 先にツカサは、攻撃力アップのバフを持っていないことをソフィアに伝えた。直ぐにソフィアから「大丈夫。ソフィアが持ってるよ」と頼もしい返答があった。

 主にソフィアがヒーラーをして、ツカサは攻撃主体で補助の回復を担当する役割を決め、3人はダンジョンへと入ったのだった。



ソフィアの中身は社会人の男性です(´・ω・`)

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― 新着の感想 ―
[一言] えっっ、、聖人と弟子ってびーえるだったの。(どっちうけ?((((((((((殴
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