1話 異世界へ
8月 某作業所
18:00
「「お疲れさんしたー!」」
今日の終わり挨拶がおわった
今日も一日汗にまみれて作業をしていて喉がカラカラで腹も減っている
早く帰って風呂入って飯食って寝たい、今日は何作ろうか迷うなぁ、昨日はカレー作ったから今日は簡単なものにしよう
やばい、飯のこと考えてたら余計に腹減った、早く帰らなきゃ
「おう、そこの若いのちょっといいか?」
やべえ、こんなタイミングで呼び止められるのは大抵飲みの誘いだ
なんで現場のおっさん達は飲みに行きたがるのかが分からん
俺は早く帰ってのんびりしたいのに
はい、なんすか?
「これからみんなして飲みに行くんだけど来るか?」
やっぱりな、嫌なんだなぁ
飲みに行ったら必ずビールを飲まされ、タバコは吸わないのか、女はいないのかと聞かれるに決まってる、
ちなみに俺はタバコは吸わない、未だにあの匂いはキツくて匂いを嗅ぐと頭が痛くなる
女は・・・察しろ
さて、どうやってこの場を切り抜けようか
1.今日は彼女が来るので行けません
これはダメだ
俺に彼女がいないことは会社中に知れ渡っている
2.ペットの世話をしなければいけない
これもダメだ
俺の部屋に犬も猫も何もいない、そもそも会社の同僚も住んでるアパートだ俺がペットを買っていないことはバレている
3.今日親が様子を見に来る
うーん、いけそうないけなさそうな
いや待てよ、そういえばこの間もそう言って逃れた気が・・・
やっぱりダメだ、これも使えない
色々と考えていたら携帯が鳴った
助かった!
この危機的状況から救いの手を差し伸べるのは誰だ!
「母」
おうふ・・・
母さんかぁ・・・うーん・・・あー・・・
いいような悪いような、まあとりあえず出なきゃいけないな
すみません、ちょっと母から電話が掛かってきたので、ちょっと外行ってきます
「おうそうか、母ちゃんからの電話は結構長いからなぁ、最近母ちゃん電話かけてこねえなぁ」
上司のおっさんは遠い目をしている
嫁さんからの電話が無いのか、大方家事で忙しいのだろう
あんたも飲みに行かないで早く帰ればいいのに
「やっぱ今日は俺らだけで行くわ、兄ちゃんはまた今度誘うわ」
そうすか、すみません
「いや気にすんな、それじゃおつかれさん。母ちゃんにもよろしく言っといてくれや」
はい、お疲れ様でした
よし!うまく切り抜けられたぞ!
電話がなかったら確実に連れて行かれただろう、飲んで親睦を深めよう。という考えは嘘だと思っている
建前は親睦だが、結局は自分が飲みたいからそんな理由で飲みに行くのだろうと思っている
おっと、忘れていた。
このまま出ないという選択肢もあるがでないと後で怒られると思うから早く出たほうがいいな
もしもし
「あ、やっと出た。なんで早く出なかったの?」
上司と仕事の話をしてたんだよ
「そうなの?あたしてっきり彼女と話してて出なかったと思ったよ」
俺に彼女いないってこと知ってるだろ?
「まあね、けどあんたもそろそろ彼女作ればいいのに、あんたもいい歳なんだから」
いい歳って言ったてもまだ22だぜ?
「22になってまだ彼女を1人も作ったことが無いんでしょ?大体あんたわ・・・」
10分経過
母さん、俺そろそろ帰って飯食いたいんだけど
「あれ?まだ帰ってなかったの?」
そうだよ、電話してるから帰ってないんだよ。歩き電話は好きじゃないからね
「そっか、じゃあそろそろ切るわ、近いうちに顔見せにかえってきな」
うん、わかったよ それじゃ
「じゃあね」
ふう、やっと終わった
母さんの電話は長いから苦手なんだよな
「腹減ったし、帰るか」
―――――――――――
19:00
「ただいま」
誰もいないのについ言ってしまうな
部屋の電気をつけて部屋着に着替えてと
「さて、今日は作るかな」
昨日は確か肉じゃがだったか、一昨日はめんどくさかったからコンビニ弁当で済ましたっけな
冷蔵庫に何がはいってたっけかな
卵、牛乳、ベーコン、チーズ、きゅうりの漬物
米は炊いてあったな、よし今日はチャーハンを作るかな
フライパンにゴマ油を引いて溶き卵を入れてコメを投下
ベーコンも入れて一緒に炒めて、あとは調味料を足してさらに炒める
完成だ
俺特製簡単男チャーハンの完成だ
俺の作るチャーハンは必ずというほど緑が足りないな
レタスが荒れればレタスチャーハンにできるし卵を使えば・・・
半熟卵チャーハンにすればよかったかもしれないな、また今度作るか
「いただきます」
俺一人だしフライパンのまま食うか、洗い物を増やしたくないしな
うん、いつもの味だ
まずいというわけでもなく旨いというわけでもないな
色々と改良点はあるな、もう少し濃い味でもよかったかもな
などと考えながら食べていたら食べ尽くしてしまった
「ふぅ、今日も大量に食ったな、ごちそうさまでした」
炊いておいた米を全部つかったからな
明日から量を少なくしなきゃな、いつも少なくしようとしてるのについ作りすぎちゃうんだよな
片付けをしたら風呂入ってのんびりしよう
この時期は暑いからシャワーだけでいいか
さてそうと決まれば洗い物するか
あ~、いきかえるんじゃ~
湯船に入ればもっとリラックスできるんだろうが、出たら汗かくだろうから温めたくない
まあシャワーだけでも十分だな
明日は休みか、何しようかな
ジムに行くか家でゴロゴロしながらゲームをやるか迷うな
とりあえず出たら考えるかな
は~さっぱりした、パンツどこだっけかな
うわ耳鳴りがする結構嫌なんだよな、まあしばらくすれば治るか
あれ?なんか音が大きくなってきた気が・・・
あれ?なんか足元に変な緑色のまるいのが出てきたぞ?
「なんだこれ?」
そう思っていると緑の丸い何かが大きくなって来た
「なんかやばそう・・・!?」
やばい気がして動こうとした…動けない!?
なにこれ!?
意識だけあって動けない、これが金縛りってやつか!?
「うおっ!まぶしっ!」
いきなり目が開けられないくらいにしたの何かが光りだした
光ったとおもったら今度は爆発音がした
アパートがガス爆発でも起きたのかと思って目を開けたら土煙で前が見えない
「「おおぉ!!」」
?
なぜか俺の周りから歓声が聞こえてきた
「成功だ!ついに成功したぞ!」
成功?何のだ?
もしかしたら何かテロ組織が襲撃してきたのか?
いやしかしここは襲撃するようなアパートでも何でもないぞ?
動揺しているため深呼吸をして落ち着こうとした
「えっほ!えっほ!なんだ!こりゃ!」
しまった、土煙が舞っているのを忘れていて息を吸ってしまった
「おお!今回はちゃんと喋るぞ!」
今回?喋る?一体何なんだ?
だんだんと視界が晴れてきた
どうなってんだ?何処だ此処は?
まず俺の周りに男が6人いて目の前に台座にいる男一人
台座の前にまともな服を着ている女の人、いや服というより布を体に巻いている
女の人がなぜか震えている、そしてなんでかは分からないが顔が赤くなっていく
なんか股間がスースーする
「ん?」
自分の状態を確認してみると裸だと言うことを忘れていた
裸の男が目の前にいたらそりゃ赤くなるよな
「失礼」
そう言いながら何も着るものが無いので手で股間を隠した
「え、あ、い、いえ」
女の人が震え声で答えた
「私の召喚に応じて来てくれたのだろう?では私の命令、そして私に忠誠を誓うのだろう?」
台座の男が俺に喋りかけてきた
は?召喚?命令?忠誠?こいつが何を言っているのかわからん
イライラしてきたぞ
「お前は何を言っているんだ?それより此処はどこか教えろ」
つい言葉にトゲが出てしまった、イライラすると口が悪くなるのが俺の悪い癖だ
「なんだと!?私に忠誠を誓え!」
「知らん、そんなことよりも情報をよこせ」
忠誠ってなんだよ、それよりもどうなっているのかが知りたいんだ
「・・・ガイウス様、おそらく召喚で記憶が混乱しているのでしょう、なので様子を見るというのはどうでしょう?」
そうやって台座の前にいる男が台座の男に話しかけている
「・・・うむ、そうだな。ではこの者に何か着るものを、そのあとに私の部屋に連れてくるように」
「「は!」」
会話が終わるとガイウスは通路の奥に進んで行った
一体何が起きているんだ
「おい」
俺の後ろに居た男が話しかけてきた
「ガイウス様からの命令だ貴様に着るものをとのことだこっちに来い」
こいつ喧嘩売っているのか?
初対面の人に喧嘩腰だと?
・・・俺もか
仕方ない今はこいつらの言うことに従っておこう
男についていくと部屋についた
「これらを着ろ」
そう言って渡されたのはVネックのシャツ、靴、それとジーンズのようなズボンだった
「パンツは?」
「そんなんものはない」
パンツが無いってなんだそれは、こいつはパンツなしでズボンを穿けと言っているのか
「お前さんは下に何も履いてないのか?」
「履いているぞ」
ファッ!?
えーとつまりお前に履かせるパンツは無い、ってことかな?
無理にでも下着を要求するか、いや今はこいつらに従っておこう
「しょうがねぇなぁ~」ハキハキ
「おい早くしろ」
うるせえな、いま着替えてるだろうが
パンツなしでズボン履くなんて小学生以来だな
遊びでパンツなしでジーンズ履いてたことがあったな
よしとりあえず着れたな
「着替えたらついてこい」
そう言うと男はつかつかと歩き出した
「ガイウス様連れてまいりました」
扉の前で男が話しかける
「入れ」
扉を開けると結構な広さの部屋だった
2人で住めるほどの広さだ
その奥でガイウスが腕を組んで座っていた
「お前は外に出ていろ、こいつと2人で話がしたい」
「お言葉ですがガイウス様、こいつは危険だと思います、もしもガイウス様に何か危険があったら・・・」
「それについては平気だ、この部屋の結界についてはお前も知っているだろう?大丈夫だ、もしも何かあったら
そのときは私が始末をつける」
「・・・わかりました。そこまでおっしゃるのなら」
そう言ってここまで俺を連れてきた男は部屋の外に出た
さっきから色々言っているがさっぱり理解ができない
「さて、これで君と私の2人きりだ。色々とわけがわからない、といった表情だな」
「ああ、そうだな。もちろん教えてくれるんだろうな?」
「いいだろう、その前に名前を聞いていいか?」
「俺は山本恭一だ」
「ヤマモト・キョーイチか、おかしな名だな」
失礼なやつだな、ガイウスも相当だとおもうが
「私の名は、さっきから聞いていると思うがガイウスという名だ」
知ってた
「それで、さっきの続きだが何が知りたいんだ」
「何個か聞きたい事があるが、まずは此処は何処だってことだ」
「なるほど、此処はグラウス大陸だ」
「何処だそりゃ?地球にそんな大陸は無かったはずだぞ?」
「地球?なんだそれは?」
「は?地球は地球だろ」
「・・・お前はどこの生まれだ?」
「東京生まれだ」
「トーキョー?村の名前か?そんな名前はなかったと思うが」
ガイウスはそう言うとこの大陸の地図を持ってきた
俺の知っている世界地図では無かった
「なんだ、こりゃあ、日本は?アメリカは中国はロシアは?」
「そんな名前の村は知らん、この地図が全てだ」
ガイウスの一言で目が回る
この地図が全て
俺の知っている所じゃあない、どうなっている
「・・・次の質問だ、なぜ俺はこんなところにいる」
「我々の召喚術によってここに召喚したのだ!」
ガイウスは手を広げ高らかに言い放つ
「我々の手でこの大陸を支配している国の王6人を討ちこの大陸を平和に導くのだ!
我らには魔法はある、しかし武力が圧倒的に足りない
一番多い国が20万一番少なくても6万だ、それに比べて我らの兵力はわずか20人だ
わかるか!この圧倒的な兵力差が!そこで我らは考えた、この兵力差を埋めるためにはどうすればいいかを
そして出た答えが召喚術で召喚した魔物で戦うというものだ、しかし危険が生じるのだ、魔物は自分の力量が召喚者よりも
高ければ召喚者を食い殺すのだ、これまでの召喚で同法が何人殺されたか、そこで我らは服従の書を使うことにしたのだ
これは本来奴隷に強制的に服従させるものだ、この書は悪魔を服従させるのは立証済みだ、地下の牢屋にゴブリン共を隔離してある
今回までに召喚術で出てきた悪魔共は失敗に終わってしまったのだ、しかし!今回は成功したのだ!
悪魔ではないが召喚に成功したのだ!・・・!・・・!」
話長ぇ・・・
「つまり俺はここに召喚されたということか?」
「そうだ」
こいつ情緒不安定か?
「俺を元のところに戻せ!」
「それは無理だ」
「は?」
「召喚術は一方通行だ、この大陸ならば元のところへ馬や移動術を使えば帰れる、しかしこの大陸、いやこの世界意外となると
帰ることはできない」
「」
一瞬目の前が暗くなりかけた
帰れない、俺は元の場所、日本に帰れない
ガイウスは召喚は一方通行だといった、もしも俺のいる世界でこいつと同じことをすれば俺が戻れる可能性が微粒子レベルで存在する
いや、微粒子レベル以下の確率だ
「帰れない、ここで生きていくしかないのか・・・」
「そうだ、お前はこの世界で生きていくしかない」
このクソ野郎が
こいつのせいで俺はこんなところに連れてこられた
やばい、キレそう
「他に質問はないか?」
こいつ全く悪びれねえな
とりあえず落ち着こう、落ち着かなければ冷静な判断はできない
冷静になれば視野が広くなる、冷静な判断ができる
感情的にならないようにしよう
そういえば
「そういえばあの布を体にまえていた女の人は?」
「ああ、あれは召喚術の生贄だ、召喚で出てきた物に捧げるものだ、今まで出てきた化物は生贄を食い荒らしていたがな」
「あの人の今後は?」
「お前次第だ、食うもよし慰め物にするもよしだ」
えっそれは(驚愕)
食うって料理して食えと?
俺に人間を食う気は全くないぞ
慰めものも興味はない
興味ないぞ
「あの人に会いたいんだが」
「いいぞ、いま言ったようにあれはお前のものだからな」
「そうか、今のところの質問はこれだけだな、また何か疑問があったら聞こうと思う」
「なるほど、では今日はこれで解散にするか、空いている部屋があるからそこを使うといい、案内役を呼ぼう」
そう言うとガイウスは机の引き出しから小ぶりな水晶玉を取り出してきた
「マルス聞こえるか?」
『はい、ガイウス様』
ほ!?
水晶から声が聞こえた
俺の世界の携帯電話みたいなのか?
「例の召喚で出てきた者を空き部屋に案内してくれ」
『分かりました』
「では、すぐ来てくれ」
そう言うと水晶を引き出しに戻した
「驚かせたかな?あれは念水晶という代物だ」
「念水晶?」
「我の耳についているこれとあの念水晶で遠方にいても会話ができる代物だ」
ガイウスの耳に透明なパチンコ玉ほどの大きさの玉がついたイアリングがついている
「念水晶にこのイアリングの持ち主の情報をいれるといつでも会話ができる、欠点として入れられる人数が10人までというものがある
これ以上となると念水晶をもう一つ用意しなければならない」
なるほど、外付けハードみたいなものか
「ガイウス様失礼します」
そんなことを話しているとドアがノックされ男が入ってきた、さっき念水晶で話していたマルスってやつか
「来たか、こいつを空き部屋に案内してくれ」
「分かりました」
「それでは今日は休みたまえ」
「ああ、そうさせてもらうぜ」
「では、失礼します、ガイウス様も無理をなさらないよう」
言い終わりドアが閉まる
「貴様、ガイウス様に無礼をしていないだろうな」
こいついきなり初対面の人間に貴様扱いかよ
「さあ、どうだろうな、俺は普通に接していたと思うぞ」
「・・・まあいい、ついてこい貴様を部屋に連れていく」
「あいよ」
しばらく歩くと部屋についた
「ここだ、鍵はしてないからそのまま入れる」
「おう、ありがとな」
「礼などいらん、じゃあな」
「あっ、ちょっと待ってくれ」
「なんだ?何か用か?」
「ああ、召喚の生贄にされていた女の人のところに案内してくれるか?」
「断る、俺にそんな暇はない、それにガイウス様の許可がなければ案内はできん」
「許可ならさっきもらったぞ、お前のものだから好きにしろって言われた」
「・・・確認をしてくる、部屋で待っていろ」
「了解」
さて、それじゃあ部屋で待ってるか
?
何かに引っかかってドアが全部開かない
半分しか開かないがギリギリ入れた
何に引っかかっていたか確認したらベッドに当たっていた
なんで出入り口近くに置いたのか
いざという時にすぐに避難できないじゃないか
とりあえず寝っ転がって待つか
「確認してきたぞ」
ベッドにドアが当たる衝撃が来た
「なぜベッドがそんなところにある!?」
ドアの隙間からマルスが覗いてきて叫んだ
「いや、俺が聞きたいんだが、それでどうだった?」
「案内しろとのことだ、ついてこい」
マルスの頭がドアの隙間から外に出た
「さて行くかな」
そうつぶやいて、半開きのドアから部屋を出た