怖い夢か
○○
ふと気付くと前期高齢者に成っていた。
自室で立っていた。 やたらとぴかぴかとして新品同様な部屋に。
部屋の入り口から親父に似た別人が声を発した。 力強い中年の声。
もしかして甥なのか。2017年度に。まだこれから中学生に成るところなのに。
僕は部屋を出て、家を出て、倉庫を目指した。 よたよた。萎えた身体。 倉庫を見た。
新しい塗装。窓。硝子。練り歩く異国の人々。倉庫前の不法駐車。
「ここにバイクを止めさせてくれよ、カネはだすからさ。頼むよ」
浅黒い。異国の青年象。すでに止められていた二輪車。自動の。
店舗の人に言いなよ。 苦い顔 了承 青年は去った。二輪車をそのままに置いて。
日本語は 達者だ。
○
ああ、霊媒を見付けた。後期高齢者の。
随分と萎んだ身体をしている。 白い梅干し。
日向で椅子に座り何をするでもなく いる。
話し掛ける。 返答が返る。
声 小さい。 頬を霊媒の顔に付ける様にしないと聞き取れない。
僕は今が何年なのか聞き出そうと話し掛け続ける。 が
のらくらと話されて 要領を得ない。
何年何月何日なのか。
のらくら。
ああ夢が覚める。
何処もかしこも新しい建物。新品の街角に古びてしわしわの住人が寄り添い細々と何か。
新品の箱に懐かしの骨董。
ちぐはぐな年代物。
斑な新旧。
何があったんだ。頼むよ教えてくれよ。
お前は台湾に行った。
そこで何かあった。
そのせいで。
こうな た。
○
真夜中に目が覚めた。
心臓は高鳴っている。
目蓋を開いて目蓋を閉じて。
寝よう。
怖い夢だった。
自分だった。 ど。
流れにぼんやりと同調する夢じゃなかった。 ど。
確かに自分だった。 ど。
日頃の思考が有った。 ど。
どんな夢かより 自分の実感が確かな夢が怖い。ど。
取り敢えず台湾には行かない。




