あ
○○
ある競技者は移動速度を高める。
ある痙攣者は移動距離を縮める。
より速くという命題に対する答え。
受けようという行動。
一手に対する答え。
そこから分析し解釈する。
後々を見据えた行動。
受け取り時 細やかな取り零しを 慌ててド派手に仕立て上げる。
遠因は向上心。
零しそうになったときに取り乱し効いてしまう。
零れた部分に欲しいものが有るやも知れない。
全てを欲す 時の幻。
零れるなら零れよという考えは技の効きを低下させる。
一切向上を望まず、顛末を知ろうともせず興味を覚えないなら懸かりは解けかけている。
解けた方は、大抵もう来ない。
技に懸からせるのは自分。
ある種の遊戯。
汲み上げるべき流れ。
手に入れて仕舞えば他人事が残るだけ。
○○
寝て起きたら人生が薔薇色に成る可能性は無ではない。
生きているのだから。
ただ、無ではない事が起こりうる事を示唆する訳ではない。
まず無い。
画鋲の塊をばらけさせながら投げ付けられ、家を追われる。
服に引っ掛かってないか慎重に探す。
画鋲の尖りは鋭い。
ひっそり引っ掛かり思わぬ所に隠れている かも 知れないのだから。
○
いい夢を見ただろう。
機嫌を良くしただらう。
許可を。
部屋に入り一瞥し静かにしてもよい と 許可を。
「許可しない」
自分と同じ顔に画鋲塊を投げ付けられて家を追われるのがいい夢か。
仮にこれが無上の吉夢吉兆だとしても許可をしない。益無し。
○○
ある種の事柄に固執し詐欺と思いつつも捨て置けず確認しようとする。
確認しよう 出来た。 安堵し満足し納得する。
多分詐欺だ。
やれやれ良かった。
○
鬼が来たりて ここかしこ。
かくかく しかしか だってさ。
○
スバラシイ職場。
無期限無報酬 無休。
地獄の門番 急募。
※前任者は泣きをいれて退職。
罪人を選り分ける仕事です。
それだけです。
見れば分かる人推奨。
○
確認するのにもう一回お金を出して行こう ね。
団体の中。
サクラと夢中と 懐疑者は まぜこぜに為って集いを始める。
ははは。
分からない。
分かる人を連れて来よう よう。
長閑な 渦。
詐欺師が笑う。
騙されまいぞと のこのこやって来る客を 歓迎して 。
○○
実体の存在しない実感。
神経の激発を感得しようとする受容者。
幻の存在をありありと現出させる。
○
眺めるのは鏡面か写った理想か。
神経の激発を察するなら実際の動きとの差異が混乱を助長する。
温かく為ってきてこれから。
そんな時には には 先生が まあ 茶でも飲んで やれと
水を差す。
熱意 高い意欲 向上の志。
点検せず 探らず 気持ちで足りないのを補う。
間に合わすには必要でも 技能向上の足枷に為っては もともこもない。
○
差し水を 溢れるべき時に ささ。
しおしおと落ち着かせる。
丼に水をなみなみ 箸を持ち 傾けて伝い 垂れる 落 水。
鍋の前に陣取り 強火の番を 粛々と勤める。
○
円い素振りは三角の素振りに為り運動強度は上がり 手に豆が出来る。
竹刀と本身の中間。
斬突の隙間。
前腕の熱は早くも温かく親指は鈍り冷や汗が足裏を濡らす。
よちよちと田植えの 人か鳥か よちよち歩く。
下ではなく上に植えるかの如し有り様の上体。
内踝に膝を寄せてちょこちょこ心拍を炙る下体。
植えるのは 痺れか 一瞬の浮遊と転倒の末に めり込む小石か。
○○
腰降りて俯くなら後頭の筋を怠けさせている。
腰降りてちょこちょこ歩き出して俯くなら後頭の筋を忘れている。
腰降りて 歩き出すに些細な摩擦有り 床と足先。
痙攣し 緩和し 常に復帰し 形を復元し続けねば項垂れて弱く 制される。
降下して 異界。
人 倍する身の丈。
対手 巨大にして 俊敏。
俯けば打たれる。
上昇して 同界。
人 互する身の丈。
対手 同等にして 強靭。
仰向けば詰められる。
○
伝 。
伝 在り 。
苦楽に伝 在り 。
出納伸縮に伝 在り 。
伝 流れを促す。伝 門を形成し 伝 人を受ける 。
懐かしさ 伝 在ればこそ 開陳す。
在りても 伝 無くば 気付かず。
無くても 伝 在れば 感得す。
身の内に 伝 在ればこそ 実感在る。
伝 断じて 阻害すれば 無きが如し。
受容するべき部位は 待つのみで 働かず。
苦楽無く痛み無く 懐 無し これ 伝 無き故 。
進展は望み難し。
○○
普通に 成りたいと 願いながら
超人めいたモノに心引かれた時点で失敗は論ずるまでもない自明だったか。
○
見越し垣。
手拭いを 両手にて 眉頭の高さに張る。
腕を固定し 肩を押し下げながら そろそろと 眦を出す。
○
ああ
豆を人指し指に こさえて いる。
くたくたに 為って。
差し出しては落として。
ぶつけて唐突に止まる。
夜中に目覚めて腕の疼きに難渋する。
○
鍔の 存在が 気に懸かるのは ひょいと差し出されて 腕の伸びた先に鍔が よく 見えるから。
初めは 切っ先が。 徐々に 鍔が 気に懸かる。
軌道は四角に。
伸び伸びと 先へ。 すとんと落下 後に 腕を苛む。
置きに行かないというのは腕を苛む。
伸び伸びと使うのには 力感が無い。
腕に力感が有れば縮み 軌道は狭まる。
鍔が 見える。
刀身を忘れ 鍔の 反射が存在を主張し 向こうと 此方を 別つ。
鍔へ 視線が ぶつかり 一瞬のち 向こうへ抜ける。
鍔を見越した 瞬間 太刀は垂直に落下を始めている。
力感無き所に がつんと来る。
これは 効く。
馴染まず 辛く 負担が大きい。
初学の者には取り付き難く 気持ちの悪さが在る。
僕に教えた その先生以外が その様に使うのを 見た事が無い。
同流同門なのに そう使わない 皆。
大会で他流の人を見ても似た使いは 無かった。 知らない。
兎に角
負担を感ずる。
長く尾を引き へとへとになる。
○
鍔を掲げる。
額前に 高く。
しかし 切っ先を低く。 水平に近く。
落とし 急 停止 堪える。
技術を試す時に いつも 思う。
初めに考えた奴は馬鹿だ。
しんどすぎる。
そういうモノだけが 次に繋がっている。 勝手にそう思っている。
真っ向から 斬り下ろすのに こうも 其々だ とは。
上げて落とすだけと 言われても 実に多様。
○○
初学の時分には実感が欲しい。
しっかりとした 確かな 頼もしい。
動作の前には。
筋肉が 確かに 収縮する為の または 伸長する為の または どちらもが複合した 絡み合った動作の為に。
差し出すのは難しい。
短刀程ではなく 軽い。
長棍程ではなく 長い。
どちらでもない 重さ。
伸びやかに使うには重く 小刻みに使うには大きい。
そしてそれらは ぎりぎり工夫すれば何とか為りそうでは在る。
本来届かない。 届かないが
届かない処に工夫が在る。
何とかしろと任される。
途方に暮れる。
○
奇抜な 形に 惑わされ。
変則な形は より怪我 より疲労 より簡単 。
流行らないのも分かる。
割に合わない。
手間が掛かり 取っ掛かりが小さく 失敗する事さえ難しく 。
肉感を忘れて痺れて在る。
心拍の鼓動を痙攣の鼓動で紛らわす。
洗練の先に肉体が悲鳴を上げて虚脱する。
交換可能な肉体ではない。
消耗は 補填されている。
更に減り また減り ずんどこ減る。
補填など無意味な速さで。
○○
降下するサナカ 愚かにも 素晴らしい急上昇を 信じる 素振りを 隠して そわそわ。
腹に七つ も穴を空けられて 腸を切られ引き出されて も未だに何やら奇跡を探している。
○
本懐を 得た 。 輝かしき対立 のうねりを 一身に得た。
だけど それが 何にも為らなかった。
○
サクラ ヒイラギ 枝を選ぶ 。
じゃあ サクラ 。
サクラは軽いから ヒイラギにせよ と 訂正される 。
○
三日程前には 賽銭箱の上に 酒の 小 紙パックが置いてあった 。
当然 今日には 回収されて そこには 存在しない。
今年に入って三度目か 銘柄も同じ 置く場所も同じ。
願いも 祈りも 同じなのだろうか。
○
形が枷として機能し 一定の範囲に納め 規定する。
一門多量 多派無尽 門下無数にして伝人少なし。
得ても黙するのが肝要と心得て 世を処する故。
伝えて益無く 伝えて楽無く 伝えずとも伝って行く故。
汲むのには運が 飲み干すには戯れが 吐き出すには決別が
黙して損無く 黙して苦無く 断じても涌き出て来る故。
損有り 苦有り 。
益有り 楽有り 。




