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待つ。移動して待つ。そしてすっぽかされる。
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移動して待つ。そしてすっぽかされる。
椅子に座って眠る。そしてやっと起こされる。
休息して待つ。そして低速で道筋を付ける。それを高速でなぞる為に。身体は蜂起したいのか。命令を放棄したいのか。本か傍か。主か従か。縮か伸か。あるいは全てどうでもいいのか。肉体は振動する。追い縋るのか。離れ捨てるのか。どうしたいのか。近付く様に離れ、離れる様に近付く。あるいは全て錯覚の初動なのか。どこにも行けない間違いに過ぎないのか。一人の寂しさを紛らわす独り善がりの踊り。
影が膨らみ、離れ、膨らむ。ぞろぞろと出でて次で二十九番だ。これだけ出てその母体の僕に何の変化もないのだから、きっと影が出るということは実生活上の意味は全く無いのだろう。少なくとも僕の人生においては。影を手放すしかない僕の様な人間においては。




