いたち。
えっ。いたちっ。
良く晴れた六月にイタチを見つけた。電柱の影で横たわる長い胴体をした茶色の毛並み。死んでいる。ぬいぐるみかな。死んでいる。
信号待ちをする。店へ。箱紙五つまとめを一つ買う。あっすいませんビニール袋ください。店を出る。推定イタチのところへ。袋を被せひっくり返し納める。長いのではみ出るイタチ。ゆさゆさと揺すりまるめて袋の底へ。口を塞ぐ。袋のだ。よしと。希望を胸に出発。家路につく。所要時間は約一時間半です。左に箱を。右にイタチを。小脇に抱えた箱は軽く。右手にぶら下げたイタチは重い。筋肉と骨がしっかりしているのだろう。昼下がりにイタチをぶらぶらさせて家へ帰るのだ。
ああ、何なんだよお前はよ。
重い。袋も小さなものだからあまりがっちり握ると中のイタチの感触が袋越しでもばっちりになってしまうので袋の縛った口を指に引っ掛けて持ち運んだ。するとそう重い。左脇には箱。待ち替えるのも躊躇われた。なんとなく。ああ、重い。指がじわじわと痺れてきた。日差しもやや強く、夏のようだ。右手の袋を見る。ビニール袋越しにうっすらとぼんやりとイタチが見える。これって不審者なのかな。役所に連絡して、ちゃんと取りに来てもらうよ。ほんとだよ。
まだ半分も来てない。
ああなんであんなとこで死んでるかなあ。電柱の影で横たわるイタチ。ほうっていたら誰かが片付けたかなあ。蛇より重く子猫より軽い。
○
いたちを拾った話。
つまりいたちを拾ったと霊媒に連絡した。霊媒はこういう話がやや、好き。どうですか。持っていきますか。夕暮れで役所はもう店仕舞いしているから、何処かで一晩保管しなければいけないのだ。霊媒は取りに来た。一晩供養し役所に連絡するそうだ。
帰る霊媒を送る。途中、霊媒はいたちを花壇に埋めた。そしてそのまま帰った。自分の花壇ではない多分市の花壇にだ。段取りとかぶん投げたのだ。まじか。役所に連絡したら埋めといてって言ってた。いや、モノを知らんと思ってめちゃくちゃ言うな。役所ならとっくにしまってるでしょ。
のこのことヤサへ歩き出す霊媒。僕も続く。そして僕は霊媒の横を歩きながらぶちぶち文句を言った。
そうこうしているうちに霊媒のヤサに着いた。やにわに霊媒はわかったと言うとヤサに入り少しして出てきた。スコップと袋をもって。
僕らは花壇を目指して歩いた。
夜の帳はすっかり落ちていた。




