行ってしまった。
○○
長い車両が神社の境内に植えられた樹木に空から降り立つ。
予定でした。
来たのかも知れないが、それは僕には関係無い所で既に終わっていた。
○
猫にうまうまと掠め取られ、しょぼくれて過ごし、しばらくして境内の幾つかの樹木は伐られた。
小さな本殿には御神体と賽銭箱。
それとそれまでには無かった物が据え付けられていた。
上にチカチカ赤い点滅。
監視機械の光。
○
そこからの眺めは好きだった。
急な坂、階段も。
木々の間を抜けて登りきったら遠くまで良く見えた。
年末年始の間、提灯が吊るされて柔らかい光が点々と続く林。
広がる街並み。
風が強くて冬の空気をより感じられた。
乗り損なった。
乗ることの無かった迎えは乗れていたのならどうなっていただろう。
今より幸せだっただろうか。
技術と引き替えにして、
優しい話になっていたのか。
今はもうそこには行っていない。
別の神社で祈り、仰ぎ見て、切り取られた空間を思い出す。
距離がそこそこで、散歩のついでに立ち寄るのに丁度良かったんだ。
でも、それまでには無かった境内の切り株(登ると迎えてくれた小さな桜)堂中の赤い点滅(小さく静かな四隅の暗がり)見ると何だか寂しくて、足が遠退いた。(かつて在った好ましさ)
それっきりだ。
曖昧だ。
桜は松か、
樫だったか、
または別の樹木かも知れない。
切り株に為るとは想像もしていなかったから、それ以前の形が飛んでしまった。
細い切り株が有るだけだ。
思い出しても。
それでも何とか思い出そうとしても、
上の方がどうにも曖昧にぼやけて、はっきりしない。
結局切り株に落ち着く。
かつて在った空間と好ましさ。




