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 ねむり。

老人が一人倉庫に横たわり眠る。空っぽになった倉庫に横たわり眠る老人は幸福だろうか。タオルを枕に。新聞を敷布に。静かに寝入る。良い事がある。素晴らしい。それが本当ならば。


 片付けて。片付けて。空っぽになったらばきっと良い事がある。そうして倉庫は空になった。間仕切りもなく、荷もなく、反響がある。誰か来たか。こないよ。誰か来たか。見ないよ。家に帰って寝よう。付き添い倉庫を出る。十五年か。ここにいた。誰か来たか。誰も。誰も来なかった。十五年の間には。


 寝ぼけた老人が家に帰る。

倉庫を出て言った。あんたは何処に行く。そうたずねると家に帰ると老人は言った。坂を上る。あんたは何処に行くんだ。もう一度たずねる。家に帰って、ねる。老人はそう答えた。僕は言った。家ってどこだ。老人は立ち止まりこちらをまじまじと見た。そして坂を下り始めた。坂道を上るのは老人の家とは逆方向だったからだ。


老人は家に帰ろうとした。自分のではない誰かの家に。それを自覚した瞬間を見た。寝ぼけた老人はただの老人になった。家に帰る老人に付き添い歩いた。

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