ぱ
ぱんぱん。
部屋を見回す。段ボール箱が積み上げられている。窓を開けるべく隙間を行く。大きな地震が来たなら潰れてしまうだろう部屋。片付けも後半に入った。霊媒は片付けたなら良い事があると言ったが、向こうがそう言ってそうだったためしがない。倉庫が空っぽになったら床を掘り返すとも言っていた。二十一世紀のまじないが好きな人達。掘ってホトケが出たなら拝め奉れと言う。ホトケ。○万でかった建物の下。ホトケはホトケでもまずいホトケだったらどう言い訳するきなのやら。手が後ろに回る。何故掘った。神のお告げ。では納得はしてくれないだろうに。埋まったモノを掘り返すなんて止めとけばいいものを。あってもなくてもろくなもんじゃない。
○
知らない硬貨。
財布の小銭入れから小銭を取り出す。灯りを入れつつ探ると硬貨のヘリが黄色のがある。おや。摘まみ見るとそれは知らない硬貨。日本の硬貨ではない。一面には尖塔。もう一方には眼鏡の青年か壮年。七三の髪形に眼鏡。理知的なお顔だ。刻印された文字はまるっこい。タイかそのあたりの国だろうか。しかし何故。うむうむと考える。自販機か。おつりに混じったのかもしれない。ありそうな結論を出すと知らない硬貨を返しに外へ出た。欲しい誰かが持って行くだろう。違っていても。
空。
空っぽの倉庫が振動する。車。電車。道行く人の話し声。反響し、思ったより近くに感じる。微小な唸り。まざり、念仏が聞こえた。三秒にも満たない時間。錯覚の読経はいやに耳に残った。
空。
涼やかな朝方に空を行く夢を体感する。夢の中、昔の知った顔がこちらに声を掛ける。あまり好きではないが忘れる事もないだろう人達。それを無視し離れる。こちらへ何かを言っている。途切れることなく捲し立てている。相変わらず若く胡散臭いままだ。夢の中をするすると移動する。飛んで。速く。ますます速く。ちっとも高くは飛べないが年々速く飛べる様になる。電線の下何処までも飛べる。高く飛びたいという願望は叶わない夢の中。地表の少し上、電線の下をどんどん進んだ。そうして小高い山の住宅街から裾野の街を見下ろして、空から目をそらした。空の上には行けそうもない。




