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か
片付け。
片付けろ。片付けろ。早く。早く。話を聞いた。早く片付けなさい。ここ数日間はそればかり。倉庫はどんどん変わる。棚は解体される。金属も木材もない。ねじを取らればらばらだ。木材なら切られ更に圧縮される。ビデオがダンボール箱に入れられ運び出される。知っているモノ。知らないモノ。区別なく。木の扉から金属の取っ手、蝶番が取られ丸い穴が覗く。倉庫に空きが出来てはそこに荷が置かれ持ち出されあるいは捨てられてまた空きになる。風が吹き抜けやすくなったのか、空気が常に動いている気がする。みな何処に行くのだろう。急いで持ち出される。僕も荷担する。二階へ。
箱を持つ。一階へ。また二階へ。繰り返し繰り返し。扉や棚も持つ。風が強く吹いているのだろう。換気扇が時々がちゃりと音を立てる。風が撫でる。もう終わりだ。棚に隠れていた窓があらわになり開けようとした。開かなかった。曇り硝子の向こうから楽しげな笑い声が聞こえた。




