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ひ
冷え。
今日ももう終わる。耐え難い冷え。頭の冷え。耳の裏。首との境。器の三日月逆上がる。ひえびえと漬かる。底冷えに沈む。髭の剃り後は冷たい。頬は冷たい。凍えそうな頭はゆるゆるとし、思想を停止させるのだ。
分かりませんと二度言った夢を思う。
夢枕。頼みになった事もない眠りの間の映像。それらしい夢などもう欲しくはない。のっぺりとした平面に青色に白色のかくついた小さな平面がぎこぎこと右から左に流れ出て来る。それを横たわってぼんやり眺める。白色はぎこぎこ左端から視界の外へ消え去る。夢はこれでいい。それなのに身体は睡眠が休息という大前提をなかなか守ってはくれない。
室温は10.5℃。湿度は26%。
席に付き。素知らぬ顔で知らぬ教室にいるとその席に座る本来の生徒がやって来て言うのだ。退けと。自分の席に行けと。
僕は言った。:分かりません。
机の横の鞄を投げ捨てられた。
そこそこ遠くに鞄を投げ捨てた生徒が言う。:分かったか。
僕は言った。:分かりません。
夢は終わった。




