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よ
よわよわ。
絞られ取り上げられて残ったモノが弱者。良いものは去り残るのは誰も欲しがらないかす。搾取され見送る。良いものは他人のもの。僕には過ぎたもの。手柄は誰かのところ。
こんな日は痔が痛む。
○
虫。
今日、虫を踏んだ。黒い虫だった。素足に柔らかな感触を感じ床を見ると瀕死の虫がそこにはいた。親指程の長さのもがく羽虫が弱々しい。これではもう助からないだろう。後悔の念を覚えた冬の午前。静かな部屋で。
僕は割り箸で摘まんだ虫を新聞紙に乗せて外へ出た。虫を庭の土の上へゆっくりと滑らし落とした。虫の脚は時々動いた。見つめながら殺生というものに殺意より短慮浅慮の方が有効なのか考えた。いっそ一思いに、とも考えたが考えただけだった。しばらく出来ることもなく虫の前で立っていた。そうして見捨てた。




