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 毛髪。

髪を輪ゴムで括られざくざくと切られる。切られた髪は箱の中へ。それを繰り返す。結われそして切られる。結った髪を切られるのは殊更痛む。結い髪をぎちぎちにされ一握り。一握りは一房になりそれがぞくぞく出来る。そうして底の浅い箱が一杯になった頃に仕上げに進む。仕上げは刈り上げられる。坊主頭に整える。天辺はやや長い。もみ上げと首を剃られる。頭をわしわしと洗われる。正月の寒さが寂しくなった頭に染みる。


 正月気分。

六日になると流石に神社も空いている。小さな門松が手水舎の二隅と鳥居の左右にまだ置いてある。おみくじを結ぶ為の木枠や扇状の骨組みもまだある。本殿の垂れ幕や提灯もまだある。名残惜しげに感じる。


 ○


 今月中。

今月中には二十五番の影が出るのだろう。失敗を報せるために。掛けられる期待ばかり大きくて毎度の事ながら困惑しかない。影が出たところで何かが変わるとも思えないが、変わるという話ばかりが懲りもせず耳に入る。逃げ出した何かは誰か。刈り込まれた頭皮が冷え冷えとする。頭が停止するようだ。


 ○


 覆面。

口許を覆う白色の覆面。これで唇を床に着けずにすむ。柔軟体操だ。開脚前屈だ。ぎこぎこ。筋繊維と筋膜を伸ばしに伸ばす。ぎこぎこ。そうして顎を床にそっと触れさせる。息が留まる。倉庫の床が冷たい。


 ○


 ぱしり。

抹茶初昔20g。宝くじバラ十枚。買う。お使いを終えて。

自分の為に本を一冊買う。


 夜の。

今月もまた満月の夜が来た。失望の時が近付く。名ばかりの特別が白日にさらされてむなしさだけがむねにわだかまる。

繰り返される失敗と一度としてなされない検証。せめて失敗の検証をしたのならばまだ納得がいくものを常に失敗を黙殺し無かったかの様にされるものだから殊更辛い事になる。ああ影など何の足しにもなるものか。人間に如何程の作用があるものか。今から言い訳を聞く事を思い憂鬱だ。彼等は影を産む者が特別でなければ気が済まないのだろうか。影を産み出すが何の足しにもならない人間ではいけないのだろうか。失望するまでにあと何度繰り返されるのだろう。円く冴えた満月が夜空を上がる。見上げる月の憎らしいこと。輝く告げ口。お前には何もない。二十五回目の分かりきった知らせはもうすぐだ。

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