443/493
つ
つき。
ふっくらとした月がぼわんと光っている。
あんなにちゃんとした月なのに。明日は満月なのに。延期か。虚しくはない。怒りもない。よくある事だ。鼻息が盛大に漏れる。ああ。何かが変わる気なんてちっとも無いのに。変わると言われるとどうしても気になる。変わるわけがないのに。失望はわかりきっているのに。ああ。昔は満月を何も思わずに天体として眺めていたのに。今では満月は失望の象徴のよう。月は昔も今もちっとも変わらないのに。月を通して今までの失敗とこれからの失敗を見上げた。
影も最後。影の話も終わったら話のタネがまた一つ減る。ああ。ああ。全く関係ない事が身に染みる。
月はいつも綺麗で嫌になる。




