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きっと耳が長い
○○
木々の間に静かに立つ人。
頭部を覆い耳を隠し胸中にウロを抱える。
からの手に仕草だけが有り、
持たざる内に、さも有るが如し。
微動する事久しく、腕中に満水を湛える。
苦辛練鍛、磨耗粉塵、形骸無残。
残欠を数え、日々を過ごす。
遂には満水沸き立つ。
到頭の成就を讃える。
喜ばしき哉。
夢は費えた。
胸中にウロ有り。
変わり無く有り。
一人では埋めること一時にして久しからず。
過ぎた半生を思う。
一人で在った。
仲間と共に学ぶ最中も。
思い出すと何故だか一人で在った。
共に掴んだ栄光も掴んだ瞬間には色褪せた。
くすんだ満水は染み込み、空洞を表す。
また変わらず胸中にてウロを抱える。
軽く、呼吸を止める。
沈む様に。
皮下にて筋組織と泥層を置換。
○
木々の間にて初めて立つ人を見るに、
やはり動物。
居心地悪く暇を持て余し動きたそうだ。
そこから何周か何ヵ月かすると
静物に成り始める。
やっと置物。
居心地悪く動作を持て余し静止したそうだ。
そこからは個人差が激しい。
動静を行き来し発見し再現し考察する。
その果てにどういう見解を持つかは自由だ。




