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 す


 過ぎた日に。

大分腹がおさまった気がする。ややごろごろと鳴るが。

霊媒も風邪をひいて何日かご無沙汰。

一人明日の満月を待つ。


あるとき。倉庫の前。十年と少し前。植木鉢の土に小さくはない如雨露で水をやっていた時。

道路の端に女性がいた。三叉路にて知らない女性。ちぐはぐな印象の女性が。当時もそう思い思い出している今もやはりそう思う。

目が合う。すらりとして背は高い。180㎝近くあったんじゃないか。細身に見えた。なので誤認だったかもしれないが。あるいは記憶は移ろう改竄されて。髪は黒く短めで耳下辺りで揃えられていた。髪には潤いがあり日々の手入れを思わせる。上下真っ黒な服。体の線が出ている。ライダースーツめいている。靴の印象は薄い。黒かそれに類するものだろう。明らかに成熟した女性。それがまるで子供のように、にこにこと笑顔でこちらを見た。全身は連動して動いていた。ややぎこちなく。少しだけ前進し今にも手を振らんばかりだ。後ろは倉庫。誰かが立って手を振っているという事はないだろう。ないだろうがさほど気にせず水やりを続けた。満杯に近いそれなりの如雨露がすっかり軽くなった時、ふと女性が立っていた所を見た。当然誰もいなかった。


その一瞬だけの苛つきと滞留する無関心。頭から爪先まで洗練された印象からの児童の様な所作。未熟でこれからの動き。内外の大きな解離を暗示しているかのよう。それら諸々が僕にあまり関わらないほうがいいと結論させた。

なのでふともう一度見て誰もいなかった時。少しだけ安堵したのではなかったか。


 順当なら満月を待つのも後二回。大腸が蠕動し生々しい音を立てる。終わりだ。終わりだと言われて終わったためしはないが。それでも一応の終わりがまたやってくる。




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